44.ムノッカス視点 4
《ムノッカスSide》
シーフが新しい依頼を受けた一方……。
ムノッカスはテントを離れて、呆然としていた。
「戦力外……? この……僕が……?」
彼ははっきりと、ギルド監査官の女から言われたのである。
自分では今回の依頼、こなせないと。力が足りていないと。
……バーンデッド兄妹とくらべて、自分は能力で劣ると。
「そんな……ばかな……ばかな……ありえないんだよぉお……」
シーフは戦闘力皆無の盗賊。
そして……その妹は、戦闘力も、サポート能力も無いうえ、コミュ障。
どう考えても、マイより自分が劣ってるとは思えない。
……でも。
ムノッカスはここ最近の身体のキレの悪さを、たしかに感じていた。
それを証明するかのように、岩鳥、砂蟲……と立て続けに魔物との戦闘に敗北していた。
「マイは……いや! いいや違う! ちがうんだぁ……あいつらは無能で……僕は……すごいんだぞぉお……」
と、そのときである。
「ん? あれは……? ヒッチたち?」
取り巻きの女達が、近くのテントの中にいるのがわかった。
こっちが落ち込んでいるのに、ヘラヘラと笑っているのが見えたので、不愉快だった。
ちょっと一言言ってうっぷんを晴らしてやろうと、ムノッカスはヒッチたちのもとへ向かう。
「ここは……酒場? 簡易的な……?」
調査隊の面々が、気持ちと身体を休めるために設置された、簡易酒場であった。
彼女たちはその奥で、調査員らしき男に、お酌していた。
「それは大変でしたねぇ~ん♡」
「たっぷりお酒のんでくださいましい~♡ ところで年収っておいくらぁ?」
「え、すっごーい♡ そんなに稼いでるなんてぇ~♡」
……どう見ても、男にヒッチ達が媚びを売っていた。
「お、おおお、おいおまえらぁ! 何をしてるんだなにをお!?」
言いようもない焦りを感じ、ムノッカスが声を荒らげる。
一方、ヒッチ達は少しこちらを見て、男のもとをはなれた。
「見てわかるでしょ元リーダー。次の寄生先を探してるのよ」
「元……? きせいさき……だと……?」
一瞬、ヒッチの言ってることを、理解できなかった。
だが、彼女の次の言葉で理解する。
「あたしら、あんたのパーティから、抜けるから」
「は……? 抜ける……は!? ぬ、抜けるぅううううううう!?」
ヒッチ達が自分の元を離れようとしてることに、ムノッカスはやっと気づいた。
「なん、なんでだよ!?」
「当たり前じゃーん。だってぇ……あんた、弱いんだもん」
「は……?」
ヒッチの口ぶりは、ムノッカスを馬鹿にするようなものだった。
弱い……?
「ここへ来るまで、あんたヘマしまくってたでしょ? 無様もいいところよねぇ」
「いや……まあ……それは……」
「前は違ったわ。あんたは凄かった。でも……シーフたちがぬけて、あんたのメッキが剥がれたのよ」
ふんっ、とヒッチが鼻で笑ってくる。
「しょせん、あの二人がいたおかげで、トップを張れてただけなんだってね。あの二人がいなきゃ、あんたなんて雑魚なのよ」
……どうやらヒッチたちは、ムノッカスと違って、バーンデッド兄妹の有用性を認めているようだ。
「あ、ああいつらが凄いって認めるのかよぉ!?」
「ええ。カスワンたちが言ってたでしょ? 特にマイは……すごかったんだって。でももう出て行って戻らないんでしょ? ならあんたが無能なカスのままってことじゃん、今後も」
……ヒッチの言うとおりであった。
だが……。
「認めない! 僕は……認めないったら認めない! ぼ、僕は今ちょっとだけ調子が悪いだけなんだああ! すぐに、元に戻るんだああああ!」
ヒッチ達は、ムノッカスのその態度を見て、心底……あきれたように言う。
「バカねあんた」
「あきれた。現実みなよ……」
バカと見下してる二人に、バカと言われて、ムノッカスの怒りは頂点を迎えた。
「うるさい!!!!!!!!! そんなに出て行きたいなら勝手にすれば良い!」
「「うん、でてくね」」
あっさりとうなずいて、ヒッチたちはムノッカスの元を離れる。
さぁ……と血の気が引いて、ムノッカスは冷静になった。
「ま、待っておくれ! 今のはちょっと、感情的になったんだ! ごめんよぉ!」
ムノッカスは自分の価値を上げる女二人に、出て行ってもらいたくなかった。
さっきのも怒ったからというのもあるけど、『出て行け』といえば、出て行くのを嫌がってすがってくると思ったからである。
だが、現実はこれだ。
「あたし、使えない男ってきらいなの」
「あんたが魅力的だったのは、あんたが強かったからよ。今の弱いあんたには、男としての魅力がゼロ」
頭を丸太でぶん殴られたような衝撃が走る。
魅力……ゼロ……。
「おしゃくしまーす♡」
「わたしたちをやしなってーん♡」
女どもが、また調査員にお酌をし出した。
一人呆然と、ムノッカスがつぶやく。
「弱いから……魅力……ゼロ……ぐ、うぐ……くそおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
女達に馬鹿にされて、恥ずかしくて、悔しくて、ムノッカスは叫ぶ。
「見てろ……見てろよぉ……! 僕が……すごいこと……証明してやるぞぉ!」
ムノッカスが見上げる先には、円卓山がある。
そして、シーフ達が作戦を立ててるテント。
「今に見てろよぉお……」
ムノッカスは一人行動する。
余計なことをしなければいいのに……。
誰も彼を止めるものはいないのだった。
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