42.元リーダーより高い金をもらう
俺はクローニンさんを連れて、円卓山へと到着した。
円卓山とは、文字通りテーブルの形をした巨大岩山のことである。
この麓に調査団キャンプが敷かれていた。
俺たちは昨日の早い段階で到着し、物資を届けたのだ。
「ありがとう、バーンデッド兄妹。君たちのおかげで、ここまで来ることができたよ」
クローニンのおっさんが俺たち兄妹に頭を下げる。
その声からは深い感謝の念が伝わってきた。
「いいよ。善意でやってないし」
「に、兄さんっ! 駄目だよお金取ろうとしてるでしょっ?」
マイに叱られてしまった……。
あうぅう……。
いや、だがしかしだ。
「マイ。別に慈善事業でやってないんだ。俺たちは冒険者なんだぜ?」
「シーフくんの言うとおりだ。正当な労働には、正当なる報酬を」
おっ話わかってるう。
おっさんは部下に命令する。
部下がうなずき、どこかへとむかう。
そして革袋を【二つ】、もってやってきた。
「君らへの報酬を渡しておこう。こちらは、シーフくん達の分だ」
ずっしり……とおもい革袋を、俺に渡してきた。
音の感じから、めちゃくちゃいい額の金貨が入ってるのがわかった。
「こんなもらっていいの?」
中身を見ないで尋ねる俺に、クローニンのおっさんが一瞬怪訝な表情をするも……。
「ああ。君たちがいなかったら私は死んでいたし、荷を届けられなかった。これくらいは支払って当然だ」
「そう? じゃあ、遠慮無く」
金は多いに超したことがない。
マイに楽な生活、美味しいご飯をあげることができるからな!
しかしクローニンのおっさん、いい人だ。
こんなにくれるなんてな。
「ちょ、クローニンさん! 僕らへの報酬は!? まさか忘れてないだろうね!」
「「…………」」
俺も、クローニンのおっさんも、まじかこいつ……みたいな目線を向けていた。
「いっちょ前に金せびろうってのかよ……」
「うるさい! 僕だってここまで護衛してきたんだ!」
「何もしてないくせに……」
「うるさいうるさーーーーい!」
やっぱりこの無能カスやろうは、嫌いだ。
自分が間違いだった(マイが無能だと追放したこと)謝れないなんてな……この状況で……。
しかも金までせびってるし……。はあ……。
クローニンのおっさんからも、嫌そうな音が聞こえてきた。
多分マジでこの無能カスは、足しか引っ張ってないんだろう。
それでもたしかに、こいつに護衛してもらったのは事実。
料金を支払わないといけない……ってところか。
可哀想に。
「ほら、約束の報酬だ」
「ふん! ……って、なんだこれは!?」
袋の中を見ずとも、音だけでわかる。
やつの報酬は、俺らのそれよりも、遥かに少ない。
「報酬が少ないじゃないか!」
山盛りの革袋をもつ俺を、指さしながら言う。
「どうしてこの二人よりも報酬が少ないのかね!?」
こ、こいつ……わがまままで言えるのか。
どんだけ厚かましいんだよ……。
「君は二度、魔物の撃退に失敗してる。その分の金を引かせてもらった」
「しかし……!」
「最初の契約書にかいてあったよ。失敗の都度、報酬は減ると」
「うぐぐう……」
マジで書いてあったんだろうな。
あー、あほくさ。
「し、しかし……だ、だからといってこの二人の方が高い金もらってるのが、納得いかない!」
「命を助けてもらったんだ。高い金を払うのは当然だ」
「僕らだって……!」
「君らは、何もしてないだろう? 足を引っ張る以外」
「うぐうぅうう……」
顔を真っ赤にして、うつむくムノッカス。
クローニンのおっさんが続ける。
「ここまで届けてくれてありがとう。けど、今回の失敗については、ギルドにきちんと報告させてもらう。君らのせいで大きな損失をもたらされたんだからね」
損失……?
なんかやらかしていたのか、このムノッカス?
「失った金の分請求しても良いくらいなんだからね。払えるのかい?」
「あ、いや……それはぁ……」
「じゃあもうその金で満足したまえ。それに……私は君の顔を二度と見たくない。大口叩いただけで、まるで使えない無能の顔など」
「~~~~~~~~~~!」
ムノッカスは顔を羞恥心で真っ赤に染めていた。
馬鹿にされたのを、見下していた俺らに見られたのが、よっぽど恥ずかしかったのだろう。
ムノッカスは取り巻きを連れて、立ち去っていった。
クローニンのおっさんはため息をついたあと、
「最初から、君たちを雇えば良かったよ」
「ご要望があれば、いつでも」
「はは、そうするよ。しかし君らを最初に雇った商人は、とてもラッキーだ。ああ、羨ましいよ……まったく……」
このおっさん、最後まで俺【ら】を評価してくれた。
妹のことも、おまけじゃなくて、ちゃんと評価してくれたのが、うれしかったね。
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