41.妹の優秀っぷりを元リーダーに見せつける
《シーフSide》
コロウリィの竜車は、目的である円卓山に、どの商人よりも早くたどり着いた。
円卓山の調査団の人たちに補給物資を無事届ける。
皆から大いに喜ばれた。
ここ数日食べるものも飲むものもなく、餓死寸前だったらしい。
コロウリィは調査団の皆から神さまのように感謝されていた。
特に調査団リーダーから、何度も頭を下げられた。
ルイスさん曰く、これでコロウリィの評価が上がり、彼女は商人としてより上に行くことができるだろうとのことだった。
さて。
そんな風に補給物資を届けた翌朝の出来事だ。
マイがじっ、と窓の外を眺めていたのだ。
どうしたのか尋ねると、何か嫌な予感がするという。
マイの予感が当たらない時がないので、俺はフェンを連れ、三人で調査団キャンプ地を離れる。
……確かに、マイの嫌な予感は的中していた。
あの無能カスやろうが、砂蟲に食われそうになっていたのだ。
まあ普通に助けなくて良いだろと思ったのだが……。
マイが助けるといって聞かなかった。ほんと……妹は慈悲深いやつなのである。
マイの良いところは1兆個ほどある。その中でも特に、この優しいところは兄ちゃん的に一番評価しているのだ。
さて。
「よぉ、無能カス野郎。随分と無様な姿さらしてるじゃねえか」
俺はフェンの背中から下りる。
無様に尻餅ついてるムノッカスが「お、おま……どうやって……?」と聞いてきた。
「砂蟲をどうやってたおしたかって?」
「そうだ! こんなでかい化け物、盗賊と付与術師のコンビでどうにかできるわけがない!」
「俺が倒したところ実際に見て、その発言だとしたら、あんた、そうとうレベル低いぜ?」
「ぐ、ぬぅう!」
「ま、鋼糸でぶつ切りにしただけだよ」
マイが俺に、鋼糸をスキル付与。
あとはマイのサポートで鋼糸を動かし敵をバラバラにしただけだ。
「ふざけるな! そんなテクニカルなことが、君にできるわけないだろ!」
「まあ俺だけじゃできないよ。マイのアシストが無きゃね」
「マイだとぉ!?」
マイがフェンリルの背中のうえで、びくっ、と身体を縮める。
……俺はムノッカスの胸ぐらをつかんで立たせると、頬を殴る。
ばきぃ!
「いった! なにするんだね!?」
「助けてもらったら、ありがとう、だろ?」
俺に言わなくて良い。
マイには、言うべきだ。だってマイがいなかったら死んでるわけだしこいつ(俺も助けなかったし)
「ぼ、僕は認めんぞ! マイがすごいだなんて……」
「てめ……」
そこへ……。
「君が……助けてくれたんだね?」
痩せ細った商人のおっさんが、俺に近づいてきた。
その声からは、もの凄い疲れてるんだなってのが伝わってきた。
「ああ。俺はシーフ・バーンデッド。Aランカー。そこのでかいのはフェンリルで従魔。で、その上にいるのが俺の可愛い妹のマイ、Aランカー」
そう報告すると……。
「なにぃいい!? ふぇ、フェンリルぅううう!? ば、ばばば、馬鹿な!? 伝説の神獣じゃあないかい!!!!」
……どうしてこうも、声のデカいやつらっているんだろうな。
特にこのムノッカスは、俺の耳が良いことは知ってるはずだろうに。
「あ、ありえない! う、うそだ!」
『本当だ。我は神狼。この兄妹の従魔だ』
「う、うそだ……うそだうそだぁ……」
……どうして本人(本フェンリル?)が認めてるのに、信じないんだろうか。
バカなの? ああ、バカなんだろうな……。
「ありがとう、シーフさん。おかげで助かりました」
お、このおっちゃんは無能カスと違って、ちゃんと俺らに感謝してるぞ。
マイへの感謝が含まれてるのが、好感度高いね。
「気にしないでよ。マイが助けたいっていうからさ」
「ああそうでしたか……ありがとうございます。自己紹介が遅れました。私は商人のクローニンと申します」
苦労人……クローニンか。
なんか見た目と名前がバッチリあってるな……。
こんな外れ冒険者を引いてしまった時点で、さぞ苦労したことだろう。
「調査団のキャンプ地まで、できれば護衛をお願いできませんでしょうか?」
「いいぜ。ってかもう目と鼻の先だけどね」
「ありがとうございます。荷物を回収しおえたら、出発いたします。それまではお休みください……」
ん?
「荷物の回収? どういうこと?」
「先ほど砂蟲に襲われたのです。その際に、多くの荷物が、どこかへと飛んでいってしまって……」
いやいや。
「違うよ。荷物なんてとっくに回収し終わってるのに、何言ってるのってさ」
「「え?」」
無能カスも、クローニンさんも驚いてる。
何を驚いてるんだろうな……?
「にいさーん!」
「お、マイ。終わったぁ?」
「うん!」
そこに居た連中が、ぎょっ、と目を剥く。
「飛び散った荷物が、どうしてここに!?」
目の前には食料などの荷物が、山のように積まれている。
砂蟲が地中から出てきた衝撃で、全て飛び散ったらしいが。
「そんなの、俺とマイがとっくに回収したよ。砂蟲瞬殺したあとにさ」
俺は耳が良い。
だから、地面に何が墜ちたのか、正確に位置を割り出すことができる。
「あとはマイが俺の指定した場所に鋼糸を這わせて、それを釣りみたいに、引き寄せたんだよ。な?」
こくん、とマイがうなずく。
「すごい……スキル鋼糸とは、たしか下手したら肉を切断するほどの威力を持っていたのでは? それで荷物を回収するなんて、そんな繊細なスキルの使い方ができるなんて」
「ま、うちの妹は天才だからね。それくらい朝飯前なのさ」
無能のカスに聞こえるように言う。
荷物の山を見て、無能カスは「そんな……ばかな……」とか落ち込んでる。
ま、実物が目の前にあるんだ、嘘だーみたいな感じで現実逃避はできないだろうね。
「ありがとう、バーンデッド兄妹! 本当に助かりました!」
「いいってことよ。さ、調査団のキャンプ地までさっさと行こうぜ」
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