34.ボス鳥をたおし、荷物を回収する
《シーフSide》
旅程は順調そのものだった。
襲ってくる岩鳥は全部俺が察知し、マイのおかげで倒せた。
んで、草原をしばらく走った後、荒野へとたどり着いた。
ここが人外魔境ってところらしい。
コロウリィは「予定の10倍も速くついたっす!」と驚いていた。
ちーちゃんとマイのおかげだろう。
早く着きすぎたことで、時間に余裕ができたらしく、休憩をとることになった。
さっさと目的地に到着し、依頼をクリアしたかったけど、マイが疲れてたしな。休みを取ることにしたわけだが……。
「うめえなこれ!」
「おいしい!」
俺たちは串にささった、岩鳥の肉を食べている。
ただ串に肉をぶっ指して、焼いただけっていうシンプルな料理。
しかし、美味い!
甘じょっぱいたれみたいなものがかかっている。
「そりゃよかったっす」
「鳥にかかってるこの甘じょっぱいソースなんなんだ?」
「てり焼きソースっす」
「てりやき……聞いたことないな」
「カーター家の秘伝のたれっす! 自分、錬金術師なんで、調合は得意なんす」
しかしうまいな。
うますぎる……。そして、美味しいものを食べて、マイが笑顔。最高ですね。
「岩鳥の肉って美味いんだな」
「……卵も非常に濃厚な味でおいしいと聞いたことがありますね」
ルイスさんもまた鳥を食いながら言う。
ほほう、卵なぁ。
「わぁ……」
! 兄ちゃん耳は地獄耳(※兄の耳は妹の声を聞き逃さない)。
マイの声からは、食べたいなぁ、という気持ちがこもっていたぞ。
「フェン。いるか?」
すると、俺の腰のカバンから、にゅっと顔をのぞかせる。
『ここにいるぞ』
「うぇえ!? なんすかその犬!?」
ころん、とカバンから出てきたのは、フェンリルのフェン……。
だが、そのサイズは、10分の1以下になっていた。ぬいぐるみみたいなサイズ感である。
「……可愛い♡」
ん?
ルイスさんが、何やらかわいいとか言っていたな。
あのクールなルイスさんが、犬に本気でかわいいって思っているのか?
人は見た目によらないな。
「こいつ俺のペットなんだ。フェン。でかくなれ」
ぼん!
煙とともに、フェンが巨大なフェンリルの姿へと戻る。
「ぬぇえええ!? で、伝説のフェンリルじゃないっすかぁああああああああああ!?」
あー、うるさ。
こいつもババディと同類かよ。
「なんでフェンリル!?」
「俺の従魔」
「フェンリル従魔にしてるんすか!? す、す、すげええっす!」
どうしてこうも、ツッコミ気質なやつらは、声がでかいのだろうか。
「で、でも体のサイズ変ってたっすけど、どうやってたんすか?」
「マーキュリーさんからもらった、魔道具のおかげだよ。サイズを自在に変えられるんだって」
フェンは首輪をしてる。
正面にブローチがあり、これがサイズ可変の魔道具なんだってさ。
あのおばさん、声が大きいだけの人じゃなくて、魔道具作りの才能もあるんだって。
「ふぇ、フェンリルを従魔にしてるなら、それに乗っけてもらえれば、もっともっと早くたどり着いたような……」
『誇り高いフェンリルである我が載せるのは、主と妹君だけじゃ』
フェンだとルイスさんとコロウリィを乗せてくれないからな。
小さくなってもらっていた。
「フェンリルを出して、いったい何するんすか?」
「岩鳥の巣が、あの岩山にあるからさ。ちょっくら卵を取ってこようかなって」
妹においしいものを、食べさせてやるためにな。
人外魔境の地にはいくつも岩山がある。
俺たちのいる場所からほど近く、岩山のてっぺんからは、岩鳥たちが密集してる場所がある。(音を聞いて位置を調べた)
「よ、よく場所わかったっすね」
「あいつらの声が、ぎゃあぎゃあうるせえからな。わかりやすかったよ」
「いやこっからじゃ全く岩鳥の声聞こえないんすけど……」
「そりゃあんたの耳がへぼいからだろ」
「ううう……さーせん……」
? 別に謝る必要ないような気が。
まあ、(妹のこと以外)どうでもいいか。
「じゃ、マイ。兄ちゃんちょっくら、岩鳥の巣にいって卵とってくっから」
「え、ええ? シーフ兄さん、だめだよぉう、急いで目的地にいかないと」
マイはまじめだなぁ。
いい子だよなほんと!
「10倍速くたどり着いてるんだし、ちょっとくらい寄り道してもいいでしょ? なあ、コロウリィ」
「そっすね。大丈夫っすよ。ちーちゃん休ませないといけないですし」
依頼主の了解も得たので、俺はフェンの背中の上に乗っかる。
「フェン。あの手前のでかい岩山の上まで、俺を連れてけ」
『心得た!』
フェンの足元に炎が発生。
ぼ! と爆発を起こすと、フェンが猛スピードで飛び出す。
炎の推進力を利用したダッシュだ。
フェンはすごいスピードで空を駆けていく。こいつがほかの連中を乗せられたら、多分もっと早く人外魔境についてたろうな。
ほどなくして、俺たちは岩山の山頂までやってきた。
そこには、大小さまざまな岩を積み上げて作った、妙な鳥の巣があった。
『あれだな。む……? なにやら巣に、たくさんの荷物が置いてあるぞ?』
そう言われるとそうかもしれん。
食べ物などの品がやたら置いてあった。
「金になりそうなら、帰りに回収していくかな」
コロウリィにやれば、喜ぶ→マイ喜ぶ→兄ちゃんにっこり、という幸せスパイラルが発生する。
「っと、その前に卵回収だな。フェン、巣に着陸だ」
『難しいのじゃ。あれを見よ』
バカでかい鳥が、巣の中央に鎮座してやがった。
「ははん、親鳥だな」
「GUGEGEEEEEEEEEEEEEEE!」
親鳥が翼を広げて、はばたく。
すると羽根上の岩が、こちらに跳んできた。
岩鳥のスキル、羽根矢だな。
親鳥の放つ矢は、子供のそれとは比べ物にならないくらいの速度が出ていた。
「フェンは待機。俺が一人で行ってくる」
『承知』
俺はフェンの背中を蹴って、無数に振ってくる矢の中に突っ込んでいく。
絶え間なく振ってくる矢の弾幕のなか……。
俺はぎりぎりで回避しながら、親鳥に接近する。
矢を避け、それを蹴って、前に進む。
『なんという神回避じゃ! 矢が風を切る音から、軌道を先読みしておるのじゃな! さすがじゃ!』
雷速を使ってスピード強化した状態で、俺は矢の雨の中を高速で進んでいく。
やがて、親鳥の目の前まで到達する。
「GEGE!!!!」
「この距離なら、矢は放てないな」
「GEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!」
親鳥がぶっといくちばしで、俺を突いてくる。
やれやれ、攻撃してこなきゃ、見逃してやろうと思ったんだがな。
「マァイ!!!!!!」
俺がそう叫ぶと、マイがスキル付与してくれる。
スキル、二段突き。
俺は手に持ったダガーで高速の突きを放つ。
ぼぼっ!
一度の突きで、二度の衝撃を生じさせる。
親鳥は一度目の衝撃でくちばしを失い、二度目で頭を吹っ飛ばされる。
親鳥は死亡。完全解体スキルが発動し、大量の肉と羽根をゲットした。
『神回避からの見事な一撃じゃ。しかしいつ見ても、妹君のスキル付与はすごい。まるでそこに目があるかのように、兄が欲するスキルを付与するなんてな』
「でっしょおぉ!?」
もっとだ、もっと妹を褒めてくれ!
「で、これが卵か。でっけえな。俺の身長くらいあるじゃん」
『これを運ぶのは骨が折れそう……む? 我が主よ、腰に何かついておるぞ』
「? あ! これは、魔法袋!」
高難易度ダンジョンのボスを倒して手に入れた、どんなものも収納できる、魔法袋だ!
マイに渡していた袋が、どうして……は! そうか!
「マイは、こうなることを予測して、俺の腰につけててくれたんだなぁ」
んもぉ、マイぃいいい。
おまえってやつは、ほんっとうに優秀なんだからぁ!
「じゃ、遠慮なくこれら全部回収しとくか」
親鳥から肉と羽根、そして巣にあった卵と、なぜか散らばってる食料品。
それら全部魔法袋に回収していく。
そんで、俺はフェンに乗ってマイたちのもとへと戻る。
「もう倒してきたんすか!? や、やべえ……」
取ってきた品物を全部、出してみる。
くわ! とコロウリィが目をむく。
「って! これほかの商人の荷物じゃねーっすか!」
「え、そうなの? 巣の中にあったけど」
ルイスさんがそれを聞いて、こう推理する。
「おそらく、我々より先に出発した商人たちの荷物でしょう」
「護衛してた冒険者はなにしてるんだろうね。荷物とられるとかさ、無能でしょ」
「激しく同意です」
コロウリィが荷物を前につぶやく。
「ええと、これ……どうすればいいっすかね」
「コロウリィ様が届ければよいかと思われます」
「じぶんがっすか!?」
「ええ。魔物に襲われた失った荷物は、拾ったものに所有権がありますので」
なら別に、コロウリィがもらってもいいわけか。
「でも気が引けるっていうか……」
「いいじゃん。ヘマした商人のかわりに、あんたが荷物を届ければさ。依頼人からすれば、荷物が向こうの人たちに届けばいいんだし。むしろ感謝されるでしょ」
「そ、そうっすか……ね」
しかし誰だ、岩鳥ごときに後れを取るような無能は?
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