03.有能の妹と最強の兄、コンビ結成
高難易度ダンジョンの奥にて。
俺は妹の助力をかりて、ボスを倒すことに成功した。
上位ミノタウロスの死体の上に、俺は乗っている。
「す、すごすぎるよシーフ兄さんっ。いつの間にこんな強くなったの?」
妹のマイが近づいてくる。
「ちょっとな」
こうして強くなったんだって、妹に言いたくなかった。
強くなるためにいろいろ、頑張った。死ぬ思いを何度もした。
でもそれを妹に言うのは、嫌だった。
だってうちの妹は優しくていい子だからさ、自分のためにそんな危ないことした、って聞いたら悲しんでしまう。
だから、言えない。言わなくていい。
「さっきのは俺がつい先日新しく手に入れた盗賊スキル、二つのうち1つ。奪命。これを発動中、弱点をつくことで、あらゆる敵を一撃で、命を奪える」
「すごすぎるよ! 盗賊にこんな力があったなんて!」
師匠曰く、盗賊にというより、俺にだけ、らしいがな。
どうやら俺は人よりも鋭い感覚を元々持っていらしい。
それを鍛え上げた結果、奪命というすごい力を得られたそうだ。
「もう一つも、もっとすごいぞ」
ぼんっ、という音とともにミノタウロスが消滅する。
ミノタウロスの周りには、大量のアイテム、そして……取り巻き女どもが倒れていた。
「よかったぁ……二人とも、無事で……」
倒れ伏す取り巻きどもを見て、妹が、心から安堵の息をついた。
俺は耳がいいので、マジで妹が、二人の身を案じていたのがわかった。うちの妹、優しすぎだぜ。
「凄い数のドロップアイテムだね。さすがボス……って、これは?」
地面に落ちていたそれを、マイが持ち上げる。
手のひらに収まるくらいの、宝玉だった。
宝玉の表面には、【剛腕】と文字が刻まれている。
「技能宝珠って言うんだって」
「すきる……おーぶ?」
「ああ。師匠曰く、精霊の力が凝縮した……あー、とにかく、そこに技能が込められてるんだってさ」
マイの持つ技能宝玉が、かっ! と輝く。
そして宝玉はマイの体のなかに取り込まれた。
「!? あ、頭の中に声が……。スキル『剛腕』を獲得したって」
師匠の予想したとおりだな。
「これ、どういうこと?」
「聞こえたとおりだよ。マイは新しいスキルを手に入れたんだ」
「!? す、スキルの獲得って、訓練が必要なんじゃなかった?」
そのとおり。職業を極める以外に、新しいスキルは宿らない。
それに、獲得できるスキルは、その職業に由来するものに限られる。
付与術師は、魔法職だ。
一方、スキル剛腕は戦闘職のスキルである。本来ならありえないスキルの獲得方法だ。
「技能宝玉を使えば、職業に関係なく、その宝玉に込められたスキルを獲得できるんだよ」
「す、すごいよ兄さん! でも……こんなすごい宝玉、どうやって手に入れたの?」
「俺の二つ目の新しいスキル、【完全解体】を使ったんだよ」
師匠の下で修業し手に入れた、二つ目のエクストラスキル、【完全解体】。
殺した相手のすべてを、手に入れることができる。
通常、魔物を倒すとドロップアイテムが残る(肉とか牙とか)。
何がドロップするかは完全にランダムだ。
けれど、この完全解体スキルを使えば、魔物が持つすべてを、ドロップさせることができる。
すべてとは、すべてだ。
相手が持つ、スキルさえも。
そう、完全解体スキルを持っているものが、相手を殺すことで、技能宝玉というかたちで、スキルをドロップさせることができるのである。
「ごめんね、兄さん。宝玉、兄さんのなのに……」
ミノタウロスを倒したのは俺だから、宝玉は俺の、って言いたいらしい。
なんて優しいんだ。大好きだぜ、マイ。
「気にすんな。そもそも、俺じゃ使えないからさ」
「どういうこと?」
「人にはスキルスロットってものがあるんだそうだ」
「スキルスロット……?」
「簡単に言えば、スキルを獲得できる数の上限ことらしい」
これも師匠から聞いた話だが、人は獲得できるスキルの数に、限りがあるそうだ。
スキルスロットが10個なら、10のスキルを身に着けることができる。
「俺のスキルスロットは、奪命と完全解体を身に着けたことで、いっぱいになっちゃったんだ。だから、宝玉を使ってもスキルは身につかないんだよ」
「そう、なんだ……」
「ああ。そして、妹よ。よろこべ、おまえのスキルスロットは、9999個もあるそうだぞ!」
これもまあ、師匠から聞いた話だが。
妹はとんでもない才能の持ち主で、スキルスロット数が、人間のレベルを超えてるそうだ。
9999のスキルを、獲得可能である。
「俺が魔物を倒せば、魔物の力を奪うことができる。そんで、おまえを強化できる」
「でも……そんな、悪いよ。私ばかり強くなって……」
「おまえの力を、お忘れかい? 付与術師さん」
「あ!」
マイには技能付与、という付与術がある。
一時的に所有してるスキルを、他者に付与できるという魔法だ。
「つまりマイが居れば、俺が強い敵を倒し、能力を奪って、さらに強い敵を倒せるようになる」
「! SS級も……夢じゃないね!」
そうだ、俺たち兄妹がそろえば、無敵なのだ。
「頑張ろうぜ、マイ」
「うん!」
……マイにはあえて言わなかったが、完全解体の対象は、魔物だけじゃない。
あくまでこのスキルは、殺した相手のスキルを手に入れるというもの。
殺す相手が、人間でも……。
まあ、それは言わなくていい。
かくして、俺たち兄妹は、最強になる第一歩目を、踏み出したのだった。