27.神の力で無双する
それはキルマリア師匠のもとで、本格的に修行を着けてもらっていた頃の話し。
『坊やの耳はね、特別なんだ』
キルマリア師匠は俺との組み手を終えたあとに言う。
俺がへばって大の字になっているそばに、しゃがみ込んでいる。
そして、俺の耳に触れる。
『もの凄い、特別な耳なんだよ』
『特別な耳って……そりゃ、俺には超聴覚スキルがあるから……』
『違う』
ぴしゃり、と否定する。
『スキルがあるから凄いんじゃないんだよ。逆なんだ』
『逆……?』
『ああ。耳が凄いことを、表現するのに、【超聴覚】スキルを使ってるだけさ』
『……いまいちピントこないんだが』
苦笑する師匠。
『恐らく君は、幼い頃から、人には聞こえない存在の声を聞いていたね』
『!』
……どうして、それを?
俺はずっと隠していてきていた。
俺は小さいな頃、俺にしか感知できない、【友達】がいた。
だが、周りの反応から、そんなやつはこの世に存在しないと気づいて、だんだんそいつと話さなくなった。
『イマジナリーフレンド、という概念がある。空想の友達を作り上げ、遊ぶ子供っていうのはまあいなくはない。でもね……君の場合は違う。本当に、居るんだ』
『居る……? でも、俺はあいつの姿を見たことないよ』
『だろうね。その子はこの世界には存在しない、上位の存在なんだ』
上位の存在……?
『この世界にはね、神と呼ばれる、高次元生命体がいる。そいつらは人間、魔族などを凌駕する、凄まじい力を持っている。山を穿ち、海をわり、空に浮かぶ雲を消し飛ばすこともできる』
……そんな凄い存在が、いるのか。
『普通の人間は、彼らを知覚することはできない。あまりにレベルが高い存在だから。
ほら、高周波とおなじさ。あまりに高い音は、人は感知できない』
『??????』
師匠のたとえはわかりにくかった。
『でも、君は違う。君はね、神と会話するため、神の声を聞くために、その特別な【耳】を持って生まれた存在』
『神と会話するために……?』
『そう。言ったろ? 順序が逆なんだ。君は超聴覚を与えられたから耳がいいんじゃないって。神と会話するため、神が作った耳を与えられた存在……それが、君なのさ』
……俺の耳は、そんな特別だったのか。
『君がもっと強くなりたいなら、その神の声に耳を貸すといい。そうすれば、今よりもっと強くなれる。ただし……気をつけることだね』
師匠は、俺に忠告する。
『神の力は余りに強大だ。それゆえに、それを使うと……力に飲み込まれる危険性がある。それでも……身に付けたいかい?』
是非もなかった。
俺は、強くなりたいんだ。マイを、大事な家族を守るために。
『そっか。じゃあ、やり方を教えてあげよう。神を己の身に下ろし、神のごとき力を手に入れる、超技術』
その名も……。
『【神降ろし】』
☆
王都郊外。
俺は城壁に立ち、神を呼んだ。
瞬間、空を雷雲が覆う。
俺がダガーを頭上に掲げる。
ピシャッ……!
ダガーめがけて雷が墜ちる。
「ぐ、ううぅううう!」
俺の中に、力が流れ込んでくる。
俺の身体が別のモノへと変えられていく。
【オディン スアウー(※うれしい)】
内側から、やつの声が聞こえてくる。
やつ……つまり、神。
【エムエ ティエムイ ムエクエ アエウティーン(※あなたの中に、入っていく♡)】
気色の悪いことを……言いやがる。
「し、シーフくん!?」
「!? ま、きゅーりー……さん」
ホウキに乗ったマーキュリーさんが、そこにはいた。
逃げろって言ったのに……!
「なんで……?」
「君が心配だったのよ!」
「あ……そう……」
俺の身体の内側で、力が暴れている。
制御できる、ギリギリの力だ。
「シーフくん……その身体……? なに? 髪の毛真っ白だし、狐みたいな耳が……」
神を下ろした影響で、俺の身体に変化が訪れている。
髪の毛は黒から真っ白になる。
ばちばち……と常に帯電してる。
狐のような耳、肥大化した筋肉。
「近づくな……。巻き込まれるぞ……」
魔蟲の群れがこちらに襲いかかってくる。
俺は虫どもにむかって……。
「ーーーーーーーーーーーーーーーー!」
咆哮。
ただしこれは、スキル獣咆哮ではない。
単なる叫び声だ。
……それだけで。
パァアアアアアアアアアアアン!
「んな!? ま、魔蟲が粉々になった!? なんで!?」
「声に……力、載せた。神の……力」
「神の力……って」
今俺の身体には、神の力が宿っている。
その力で、敵を粉砕したのだ。
「声だけで、あの硬い魔蟲の外殻を破壊しちゃうなんて……」
たんっ! と俺は空を蹴る。
空歩ではない。
「う、浮いてる!? 空に!? 空中浮揚の魔法!?」
そんなちんけなものじゃない。
「神は人間のルールにしばられない。重力というくさびから解放された俺は……。空を、飛べる」
「なによそれ……ほんとの神じゃないの……!」
ホントの神?
バカ言うな。
まだ俺は、力を使っていない。
魔蟲の群れがこっちに押し寄せてくる。
俺はダガーを持った右手を挙げる。
雷雲から、ゴゴゴゴゴゴ……!と凄まじい音を発する。
空に、エネルギーがたまっていく。
「【神の雷】!」
俺がダガーを振り下ろすと同時に……。
天を覆い尽くす雷雲から、極大の雷が、地上めがけて降り注ぐ。
まるで、豪雨のごとく、雷が……降り注いだのだ。
ズガガガガガガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
……信じられない光景だろう。
空から幾筋もの雷がふりそそぎ、魔蟲だけを正確に焼き殺したのだから。
唖然、呆然とするマーキュリーさん。
ぐ、が……!
「はぁ……はぁ……」
力を使ったことで、さらに俺の中の力が増大するのを感じる。
まずい……このままじゃ、自分を見失いそうだ。
「マーキュリー、さん!」
「え? あ、はい……」
「敵、ボス! どこ!」
マーキュリーさんには特別な目がある。
才能を色で見分ける目を持っているのだ。
敵のボス……司令官を見つけ出すのも容易いだろう。
マーキュリーさんはうなずいて、鑑定スキルを発動。
「あ、あっち! デカいの居る!」
俺は空を、文字通り迅雷のごとくかけぬける。
途中魔蟲たちが襲いかかってきたが……。
俺に触れると同時に粉々に砕け散った。
俺の身体からあふれ出る神の力で、敵はぶっ壊れてしまったのである。
「はぁ……! はぁ……! はぁ……!」
どれだけ時間が経ったのかわからない。
俺はそいつを見つける。
一番奥に陣取ってやがった、魔蟲。
そいつの顔面めがけて、俺は右手に持ったダガーをぶっさす。
「悪く……思うなよ」
バチッ……!
と俺の身体の雷が、ダガーを介して、魔蟲の身体の中に流れ込まれる。
「妹を……守るためなんだ。死んでくれ」
激しい雷がほどばしる。
ボスの魔蟲は一瞬にして、粉々に砕け散った。
……神の力でだいぶ数が減っていた魔蟲達。
そいつらが一斉に、散らばっていく。
「はぁ……はぁ……」
すう……と俺の身体から、力が抜けていく。
そのまま、地上へと墜ちていく……。
『我が主!』
フェンが、俺のことを背中でキャッチしてくれた。
ああ、うん……。
危なかった。
あのまま、この高さで落下したら死んでたわ……。
「悪い……助かった」
『我が主よ……凄かった……だが……あまり無茶はするな、じゃ』
わかってる。
でも、必要だったのだ。
【トゥエンティエ ムン(※また、ね♡)】
やつはそう言って、天界へと帰って行った。
……こうして、王都を襲った魔蟲の大群を、撃破することができたのだった。
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