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23.妹が新装備を得てさらにバケモノになる



 辺境伯のもとで色々もらった俺たちは、王都へと戻ってきた。

 行きは色々あったけど、帰りはすんなりだったな。


 王都に戻った俺たちは、ドワーフ職人、ガンコジーの元を訪れた。

 妹の杖を作ってもらうためだ。


 杖は数時間で完成した。


「マイ殿。こちらをお使いくださいですじゃ」


 ガンコジーはうやうやしく、マイに黒い杖を渡す。

 マイの身長ほどある、デカい杖だ。


「なんか重そうだなこれ」

「軽量化のまじないが掛かっておる。マイ殿でもモテるかと」


 ガンコジーはマイには敬意を払っている。

 マイがとんでもない使い手だってわかってかららしい。

 わかってんじゃねえか(後方腕組み兄貴面)。


「なんだかゴツい杖ね。神威鉄オリハルコンを使ってるからかしら」

「頑張って小さくしようとしたんじゃが、マイ殿の力を引き出すためには、これくらいの大きさが必要だったんですじゃ……悔しい……」


 どうやらもっと小さくしたかったみたいだ。

 マイは杖を持った状態で、目をキラキラさせてる。


「落ち込むことないって。マイはこれ、ちょー気に入ったみたいだぜ。な?」


 うんうん! とマイが何度もうなずいてる。


「毎度だけど、よく妹の気持ちがわかるわね」


 マーキュリーさんが感心したように言う。


「そりゃ兄貴だからね。で、杖を装備したことで、具体的にどんなことができるんだ? ガンコジー」 


 ガンコジーが説明してくれる。


「マイ殿は、新しい魔法が使えるようになるのじゃ。正確に言うと、使いたくても使えなかった魔法、じゃがな」


「え? どういうこと……?」


「マイ殿はもの凄い才能をお持ちじゃ。これを巨大な池に例えよう。ここから、力という名の水をくみ取るとき、おぬしならどうするじゃ?」


 水をくみ取る……?


「手とか、バケツとか使うだろ」

「そう。これが今までじゃ。マイ殿の才能(水)は大きいけれど、それをくみ取るための器が、小さかったのじゃ」


 しかし、とガンコジーが続ける。


「この杖という器(※触媒)を用いることで、より多くの、マイ殿の力をくみ取ることができる。

 今までが手とかバケツくらいだったのが、今度はもっと大きなホースみたいな感じじゃ」


 なるほど……。


「マイちゃん自身の力が増えるというより、マイちゃんの出力が上がるってことね」

「マーキュリーさんの言ってることはわかんないけど、ガンコジーの言いたいことはわかった」


「ごめんね説明力が不足してて!」

「別にいいよ。マイがすげえってことだけわかれば」


 マーキュリーさんに背後に回られて、ほっぺたを引っ張られた。

 その際になんか無駄にデカい乳が当たってきた。無駄にデカいな。


「この杖でさえ、マイ殿の才能の……1割も引き出せぬ」

「まじかよぉ! うちの妹は天才やぁ!」


 喜ぶ俺をよそに、マーキュリーさんがなんかドン引きしていた。


「マイちゃんって……ほんとのばけm……ごほん。マイちゃんってすごいのね。すごいすごい」


 マーキュリーさんがかがんで、妹の頭をなでる。 

 ふにゃふにゃ、とマイが嬉しそうに笑っていた。100兆万点。


「マイ、具体的にどんな魔法が使えるようになったんだ?」

「う、うん……えとね、新魔法は、2つ。遅延の光(レイ・ディレイ)と、風化の風(ウェザリング)


 どっちも聞いたことないな。


「マーキュリー、どんな魔法なの?」

「どっちもデバフ……相手の力を下げる付与魔法ね」


 マイは今まで、デバフ魔法は阻害の茨(ソーン・バインド)しか使っていなかったな(スキル反転っていう例外もあるけど)。


「どんな効果だろう。マイ、ちょっと撃ってみてよ」

「いや、いくらデバフ魔法で、殺傷能力ないとはいえ、危ないわよ……」


「マーキュリーさんに」

「おい!」


 じっ……とマイがマーキュリーさんを見てる。

 撃ってみたくて、うずうずしてる。


 新しい可能性を試したいのだろう。


「う……ぐ……。わかったわ。いいわよ、撃ってきなさい」

「ありがとう! マーキュリーさんっ」


 ババディとドンドン仲良くなっていくなぁ、マイ。

 兄ちゃん嬉しいよ。ぐすん。


「えとじゃ、遅延の光(レイ・ディレイ)!」


 マイが杖先をマーキュリーさんに向ける。

 そこから、変な色のビームみたいのが出てきた。


 マーキュリーさんに直撃する。


「死んだの?」

「だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーれーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーがーーーーーーーーーーーーーしーーーーーーーーーーーーーーーーーーぬーーーーーーーーーーーーーーーーかーーーーーーーー」


「え、きしょ……何そのしゃべり方……?」


 マーキュリーさんの挙動が遅い……そうか、これが遅延の光(レイ・ディレイ)の力か。


「動きを遅くするデバフ魔法のようじゃな」

「でもそれって阻害の茨(ソーン・バインド)とどう違うんだろ? どっちも動きを鈍くするじゃん?」


阻害の茨(ソーン・バインド)は茨で身体を動けなくする。こっちは動きそのもののを遅くするみたいじゃな。それとこれなら、敵の攻撃の速度も遅くできるじゃろう」


 なるほど……それは便利だな。

 たとえばこないだのシュンサツとの戦い。


 やつは銃を撃ってきた。

 銃弾を茨で捕らえることはできなかったが、この遅延の光(レイ・ディレイ)の光を当てれば、動きが鈍くなってよりよけやすくなる。


「マイ、すごい! こんな凄い魔法使えるようになるなんて!」

「ふへへ~♡ 兄さんにほめてもらえるのが、一番すき~♡」


 くっ……! なんて……うれしいことを!


「まーーーーーーーーーーいーーーーーーーーちゃーーーーーーーーーーん。かーーーーーーーーいーーーーーーーじょーーーーーーー」

「あわ! ご、ごめんなさい。直ぐ解除します」


 ぱっ、とマイがデバフを解除する。


「トンデモない魔法ね……。でも、上手く使えば、シーフくんの戦いが楽になるわ」

「はい! 頑張って……使いこなせるようにします!」


 妹は努力家だなぁ……!

 

「で、あとは風化の風(ウェザリング)か。どんなの?」

「確か、武器とか防具とかの、耐久度を下げる魔法だった気がするわ」


 マーキュリーさん長生きしてるだけあって、色々知ってるな。


「耐久度って?」

「まあ強度みたいなもん。下がると壊れやすくなるのよ」


「そっか。よし、マイ。撃ってみろ!」

「え、さすがにちょっと……君宝剣もってるし」


「マーキュリーさんに!」

「おぉい!」


 マーキュリーさんが言う前に、マイが魔法を使う。


風化の風(ウェザリング)!」


 杖先から風が発生する。

 さっきみたいに、派手な感じはない。


 ザァアアアアア……!


「って、ちょぉお!? 服がボロボロになってんですけどぉおおおおおおおおおおおおおお!?」


 マーキュリーさんの服が、消えていく。

風化の風(ウェザリング)は装備品を風化させるみたいじゃな。武器や防具を風化し、解除させる」

「それだとかなり戦闘がラクニなるね。防具とか身に付けてると、こっちの攻撃が通らないときあるからさ。いくら奪命ヴォーパル使えても」


 ガンコジーと話し合う俺。


「ちょおぉい! こっちが大変なことになってんのに! 何のんきにおしゃべりしてんじゃごらぁ!」


 ババディがうずくまって、無駄な肉を隠していた。


「マーキュリーさん、乳に無駄に肉ありすぎじゃない?」

「誰が感想いえっつった!?」


 マイが身に付けてるローブを、マーキュリーさんにかけてやる。

 妹の優しさ……プライスレス!


遅延の光(レイ・ディレイ)風化の風(ウェザリング)。やっぱりどっちも強力ね。でも……」


 でも?


「……ううん。なんでもない。良かったねマイちゃん。これでお兄さんをもっとサポートできるわ。がんばって」

「はいっ!」


 ううん……。

 マーキュリーさんは、何か言いたげだったな。


「マイ殿にローブも作ってみたのじゃ。丈を合わせるからこちらに」

「わ、ありがとうです!」


 マイがガンコジーと話してる。


 そのすきに、俺はマーキュリーさんに聞く。


「ねぇ、マーキュリーさん。さっき何言いかけてたの?」


 こっそりと、マイに聞こえない声音で言う。

 さっきの発言、マイへの配慮が感じられたからさ。


「……君たちのパーティの弱点が、克服されたわけじゃないよって」

「……弱点」


「そう。確かにマイちゃんは化け物レベルの付与術師。シーフくんは強い盗賊よ。でもね……致命的な弱点が一つある」


 それは、とマーキュリーさんが言う。


「……最大の火力が弱い」


 火力。

 一回の攻撃力、ってことだろう。


「マイちゃんは基本戦闘力がない。シーフくんの奪命の一撃ヴォーパル・ストライクは、間違いなく最強よ。そこは誤解しないでね」


 マーキュリーさんが慌てていう。

 わかってる、別に馬鹿にされてないってことは。


「君たちパーティの火力は、シーフくんになってる。でもシーフくんの必殺技は、相手【一人】を必ず殺す。裏を返すと、たくさんの敵に襲われたとき、弱い。一気に戦況を覆すような、攻撃力は無い」


 ……そう。

 奪命の一撃ヴォーパル・ストライクは、マーキュリーさんが言うとおり、対個人では最強。


 でも、相手が複数居る場合は、その都度攻撃を当てる必要がある。


 火力不足。それはごもっともだ。


「ま、そこは大丈夫だよ。【奥の手】あるからさ」

「奥の手……?」


 そう。

 俺には、マーキュリーさんにも、そして、マイにも言ってない奥の手が存在する。


「シーフくん、魔法使えるの?」

「魔法じゃないよ。でも、それを使えば、一気に大量の敵を、殲滅できるようになる」


「え、すご……。どんな力なの?」


 ……マイを見る。

 目が合って、こっちに手を振ってきた。

 ……マイを心配させたくない。


「奥の手なんだから、言うわけないじゃん」

「それもそっか。ごめんね、詮索して」


 ……このババアも、結構いい人なんだよね。

 あれこれ聞いてこないし。


「別に良いよ。あんたがデリカシーにかけたやつってわかってるし」


 耳が良いって言ってるのに、どなってくるしさ。


「君に言われたくないんですけど!?」


 まあ、何はともあれ、マイは新装備を手に入れて、さらに強くなったのだった。

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