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22.辺境伯から感謝され国宝をもらう


 デッドエンド領に巣食う、盗賊団を壊滅させた。

 それから数日後。


 俺たちはミョーコゥという街にある、辺境伯の館にやってきていた。

 ここはマイの友達、スペル・D・キャスターの実家である。


 しかし、辺境伯の住む屋敷のわりに、木造で、質素な外観をしていた。

 でも中身はしっかり豪華だった。


 応接間にて。


「初めまして、私はワイズ・D・キャスター。現、デッドエンド領の領主にて、スペルの父だ」


■ワイズ・Dキャスター(39)

種族:人間

性別:男

職業ジョブ:二刀流剣士


 ワイズさんは金髪で、ガタイいいおっちゃんだ。

 髪の毛をきれいに刈り込み、ひげもはやしてるが、こちらもきれいにそろえてあった。


 服装も貴族のわりに、そんなにちゃらちゃらしてない(アクセサリー類を身に着けてない)。

 あんま貴族っぽくないな、っていうのが俺の印象だった。


 マイも怯えてる様子はない。そこ重要。


「お久しぶりです、ワイズ閣下」


 マーキュリーさんがうやうやしく首を垂れる。

 え? あ、そっか。マーキュリーさんここの出身なんだっけか。


 彼女からすれば、上司? みたいなもんなのか。だから敬意を払ってるわけだ。


「久しいな、マーキュリー。元気そうで何より」


 じっ、とワイズのおっちゃんが俺とマイを見てくる。


「君たちが、我が領内の危機を救ってくれたんだね?」


 おっちゃんの声からは、深い感謝の気持ちが音として伝わってきた。

 ……意外だった。


 貴族ってたいてい平民を見下してるものだ。

 おっちゃんもそうだと思っていた。


「ありがとう、シーフ君、マイ君。本当に、感謝してる」


 !?

 き、貴族が頭を下げていた……? 嘘だろ……?


 貴族って言えば勇者より立場は上のはず。

 立場が下の俺らに、頭を下げることは絶対ない。


 それに、形だけの感謝じゃないのが、音でわかる。


「あ、いや……たいしたことしてないし。な? マイ」

「あ、は、はい。わたしは、ただ……」


 ん?

 マイがなんだか、珍しい反応をしていた。こういうときは普通にうなずくだけなのに。

 もにょもにょと口ごもって、て、照れてる……だと?


 まさか、こういうイケオジがタイプなのか!?

 マイぃいいい!


 年上はいいけど、既婚者はだめだぞぉお! 

 いやでもマイの幸せを考えるならぁああ!


「何頭かかえてるのさ、君?」


 マーキュリーさんがあきれた調子で言う。


「我が領の救世主は、面白い人たちだね」

「きゅ、救世主って……おおげさじゃね?」


 マーキュリーさんがなんか怒っていた。

 また怒らせるようなこと言っただろうか、俺?


「ちょっと、相手は辺境伯なのよ、シーフ君。敬語を使いなさい」

「構わないよ。彼らのおかげで、我らは窮地から脱することができた。本当にありがとう」


 ……おっちゃんの声から、まじで今回の件、結構なピンチだったことがうかがえた。


「Sランカーを輩出するような、すごい領地なんでしょここ? なのにこの程度でピンチなの?」

「ああ。私の先祖、ここに住まう人たちはすごい人たちばかりだったんだよ。【英雄村】なんて呼ばれていたこともあった」


 英雄村て。

 たいそうな名前だな。


「でもそれも、大昔のことだ。大魔導士アベル・キャスター。薬神リーフ・ケミスト。彼らがいた動乱の時代から数世紀、今はもう平和でね。あの頃のような英雄はもううちにはいないんだ」


 ふーん……。


「だから盗賊団ごときに、後れを取っていたんだね」

「あ、あのねえ! シーフ君! 君が壊滅させた盗賊団は! あの有名な【灰の狼】なのよ!?」


 ふーん……?

 灰の狼?


「なにそれ?」

「超有名な大悪党集団よ。王国騎士団が長年かけても、そのしっぽをつかめないほど。この国の深い場所に根を下ろす、悪党の一派なんだから」

「あんなのが?」


 てかあの程度に苦労してるのか、王国の騎士って。


「あんま大したことないな」


 騎士も、盗賊団も。


「あんたらが大したことありすぎるのよ!」


 まーたうるせえし……。


「君たちには大変世話になった。これは、ほんのお礼だ。受け取ってくれたまえ」


 おっちゃんが指を鳴らすと、メイドがワゴンを押しながら、部屋の中に入ってくる。

 かぶせてある布をめくると、そこには、山のような金貨があった!


 う、うそぉお!

 なにこの大金!? す、すげえ……。


「盗賊捕まえただけだぜ、俺ら?」

「君たちにとってはたいしたことないだろうが、君は我が領地を危機から救ってくれた。それに見合う正当な対価を支払う必要がある」


 はあぁ……まじか。

 俺たち、こんな大金もらえるくらいの働きをしてたのか!


 やっぱ、マイのおかげだよなぁ。

 こんな大金があったら、もうしばらくは生活に困らない。


 マイに不安定な生活させなくてすむぞぉ!


「あ、あのぉ……」


 マイが手を上げる。

 ……マイ?

 え? マイ? まじでか?


 俺はマイの声音から、彼女の次の行動を先読みしていた。

 嘘だろ……?


「う、受け取れません」

「なにぃいいいいい!?」


 マーキュリーさんがいつものとおり叫ぶ。

 今回ばかりは、このババディと同じ気持ちだった。


「ど、どうしてよマイちゃん?」

「そうだぜ、マイは頑張ったんだ。マイにこれを受け取る権利があるんだぞ!」


 でも、マイの意思は変わらないようだ。

 ふるふる、と首を横に振る。


「これでは、足りないということかな?」

「ちげよーおっちゃん!」


 おもわず、俺は声を荒らげてしまった。

 マイがそんな、強欲な奴、だなんて思われたくなかったから!


「マイは本気で受け取るの、やめるつもりなんだよ。……でもマイ、いったいどうして?」


 音からある程度、気持ちを汲むことが出来る俺にも、理解できないことだってある。

 マイは微笑みながら言う。


「わたしたちは、お金欲しくて、やったわけじゃないです。スぺちゃん……友達が、困ってたから、手を貸しただけです。だから……依頼じゃないんです」


「マイちゃん……! ああ、なんていい子ですのー!」


 スペルがマイに抱き着く。

 妹は嬉しそうに抱き返していた。


 ……なるほどなぁ。

 マイ、お前本当に、スペルのこと大事な友達って思ってるんだな。


 そりゃそうか。

 同年代の友達なんて、今までできたことなかったもんな……。


「それに、シーフ兄さんも、同じ気持ちです!」

「え?」


「困ってる女の子がいたから、助けただけです。依頼じゃなく。だから受け取るつもり、最初からないです! ね!」


 う……。

 マイ、おまえの目を、兄ちゃん見てられないぜ……。


「シーフ君?」


 じとーっと俺を見てくるマーキュリーさん。

 俺は妹の手前、かっこつけてしまう。


「も、もちろん。金なんていらねえさ。うん」


 ……これがあれば、マイにもっとうまいものを食べさせられたり、マイと旅行できたりしただろうなぁ……。

 はぁ。ま、いっか。妹の意思を尊重しよう。


 盗賊を捕まえられたのは、妹のおかげだしな。


「素晴らしい、二人とも、強いだけでなく、心まで清らかなのだな。私はとても感心したよ」


 ワイズのおっちゃんが何度もうなずきながら言う。

 声の感じからマジで俺らのこと褒めているようだ。俺じゃなくてマイをもっとほめてほしいけどね。


「しかし何もしないのは気が引ける。何か欲しいものはないだろうか? 君らのためならなんだって用意しよう」


 なんだって……?

 あ、そうだ。


「じゃあ、オリハルコンちょうだい。マイの杖を作るんだ」


 もともと、そのためにこの地にきたんだしな。


「それくらいお安い御用だ。すぐ、手配しよう」


 ぱんぱん、とおっちゃんが手を鳴らす。

 さっきのメイドが入ってきて、うなずくと、出ていく。


 ほどなくして、メイドが戻ってきた。


「うわ! すげ。こんなにたくさんもらっていいのかよ?」


 ワゴンの上にはオリハルコンが山盛りに乗っていた。

 そんで、他にはポーション瓶がいくつか、そして1振りの剣。


「受け取ってくれたまえ」

「さんきゅー! って、このポーションと剣は?」


「それはおまけだ。受け取ってくれたまえ。ポーションは我が領内の特産品。剣は、わがキャスター家の宝剣だ」


 ほーん?

 宝剣……?


「すごいよシーフ兄さん! この剣!」


■雷速剣(S+)

→強力な雷の力が込められた魔剣。装備者に速度上昇、攻撃対象に麻痺のデバフをかける。

→装備ボーナス:雷速、雷掌


「装備ボーナスが二つも? へー、すげ」


 俺が剣を手に取る。

 すると、刃が縮んで、俺が使いやすい短剣サイズになった。


「サイズまで変わんのか。へぇ……って、マーキュリーさん。どうしたの?」


 マーキュリーさんが唖然としてた。


「閣下。それって、キャスター家当主、大魔導士様の作られた剣ですよね? 国宝じゃないですか! か、彼に渡して本当にいいんですか……?」


 だいまどうし?

 知らん。


 でも国宝らしい。へー……これが。


「かまわないよ。この剣はふさわしいものの手にあるべきだ」


 まあ、どんな剣だが興味ないけど、便利な剣たくさんもらえてラッキー。


「兄さんこのポーションもすごいよ! 最高品質のポーションだよ!」

「まじぃ!? いいんですかぁ!?」


 めちゃくちゃたくさん、こんな高品質のポーションもらえるなんて!

 うひょー! やべえ! ふとっぱらぁ!


「なんで国宝より、ポーションもらってるときのほうが喜んでるのよ!?」

「だってポーションがあれば、マイがケガしたときに治療できんじゃん」


 剣よりよっぽど役に立つ。


「ああもぉお! このがきゃぁあああああああ! 失礼すぎんだよぉおおおおお!」



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