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19.盗賊のアジトも超余裕で突破



 俺たちはデッドエンドに、妹の杖の素材を取りに来ている。

 だがひょんなことから、辺境伯の娘と知り合り、彼女とともに盗賊のアジトへと乗り込んだのだった。


「で、どうするのシーフくん?」

「別に。中にいる連中をしばりあげて、それで仕舞いさ。いこうぜ」


 正直盗賊を捕まえる、みたいなイベントなんて、余計なことなんだ。

 さっさと神威鉄オリハルコンをゲットしたいのである。


 俺にとって最優先事項は妹だからな。


「でも……盗賊のアジトの内部がどうなってるのかもわからないわよね」

「は? わかるでしょ? 俺、耳イインだよ?」


「ああ、そっか……。コウモリみたいにして、反響音から、内部構造まで把握できるのね……」

「わかってんじゃん」


「くっそが……こほん。いずれにせよ、優秀な盗賊の職業ジョブ持ちがいて助かったわ。ありがとう」


 ババディが褒めてくれる。あの無能カス野郎と違って、ちゃんとやったことに対しては、褒めてくれるんだよな、この人。


 口うるさいけどさ。悪い人じゃないし、嫌いじゃない。ツッコミがいちいちうるさいけどさ。


 一方で、スペルが目をキラキラさせながら言う。


「強い上に優秀だなんて! さすがですの、勇者様!」


 ……勇者。

 嫌な単語だ。俺の妹をいじめたやつが勇者だったからな。


 まあいい。

 このお嬢さまに当たり散らしても意味ないもんな。


 俺は歩きながら、聞き耳を立て、内部の構造を理解。


「中は結構広いね。部屋がいくつもある。そこに盗賊ども【とか】がいる」

「ん? とか……?」


 俺が立ち止まると同時に、マイが「阻害の茨(ソーン・バインド)!」とデバフ魔法を使う。


「ぎゃ!」

「なんだ!?」

「もがががぁ!」


 マイを見て、うなずく。

 ナイス妹。さすがだぜ。

 マイも嬉しそうに笑っている。今日も俺たちは息ぴったりだぜ。


「ちょ、何やったの二人とも……?」

「その折り曲がった通路の向こうで、待ち伏せしてやがった盗賊を、マイの阻害の茨(ソーン・バインド)で捕まえたんだよ」


 通路を折り曲がると、そこには体中を、茨でがんじがらめにされた盗賊あほどもが転がっていた。


「マイちゃんよく、見えてない相手にデバフかけられるわね」

「えと、私が見えてなくても、兄さんは聞こえてるから。周りの状況とか、兄さんの感じとかで、どこにどんなデバフがいるかってだいたいわかり……ますよね、普通?」


 マーキュリーさんがまた、大声でツッコミを入れようとしていた。

 でも、ぐぐぐっと堪えて、マイの頭をなでる。


「すごいわマイちゃん。上級者の魔法使いでも、見えてない相手に魔法をかけるのって難しいのよ」

「まじか! マイすげえ!」


 マイがふにゃふにゃと嬉しそうに笑う。可愛い……。

 しかしマーキュリーさんも、いいぞ。


 大声が苦手なマイには、俺にするような馬鹿みたいなツッコミをしないなんて。


「成長したね、マーキュリーさん。その調子だよ」

「あんたねえ! あたし先輩なんだけどぉ!?」


 マイへは気を使うのに、俺へのツッコミは大声なんだが……。

 まあいいや。


 茨で動けない盗賊たちを、鋼糸で捕縛。その辺に転がしておく。


「マーキュリーさん、やばいかもしれん」

「どうしたの?」


「こいつら、俺らを待ち構えてやがった」

「! なるほど……侵入はもう、伝わってるのね」

「マーキュリーさんがトラップ踏むなんてチョンボするから」

「うぐ……ごめんってば」


 つまり今このアジトの中にいる連中は、外部から敵(俺たち)が来たことに気づき、警戒態勢をとってる、ということだ。


「まあ、だからどうしたってわけじゃない。な、マイ?」

「うん! 大丈夫! 兄さんがいるもん!」


 マイ……。そりゃ俺のセリフだ。

 お前がいるから、どんな状況でも、平気なんだぜ。


「【獣咆哮バインド・ボイス】!」

「ちょ!? シーフ君! それ急に使わないでよ! 鼓膜が破裂し……はれ?」


 マイにスキル付与してもらい、獣咆哮を発動。

 マーキュリーさんたちが、首をかしげる。


「あれ? おかしいわ、スキルが……効いてない? それどころか、耳もいたくない」


 獣咆哮は大声を出し、相手を一時的に、行動不能にするスキルだ。

 しかしマーキュリーさんたちは普通に動けるし、大声によるダメージも負っていない。


「ど、どうなってるんですの? こんな至近距離でスキルを受けたら、わたくしたちにも被害が出るのに……」

「えとその、スキル……効果対象を、限定しました。それと、音がうるさくないように、兄さんのスキルをスキル反転して、みんなに付与を……え?」


 マーキュリーさんとスペル、そしてフェンさえもが、あんぐりと口を開いていた。


「わ、わたし……なにかしちゃいました?」

『我が主の妹よ……おぬし、どれほどの高等技術を使ったのか、わからぬのか?』


 フェンに尋ねられても、マイがふるふると首を振る。

 俺たちは先を進む。


「あのね……マイちゃん。スキルの効果範囲を絞るのってね、めちゃくちゃ難しいの。シーフ君が、超聴覚でもやってたでしょ? 効果を絞るやつ。それめちゃくちゃすごいの」


「兄さん凄い!」


「うぎ、ぐぐぐ……うん。でね、他者へのスキル付与ってほら、理論上無理って前に説明したよね? 覚えてるかしら?」


「は、はい。もちろん。えと、だから何に驚いてるんだろうって」


「うん、あのね。なに? スキル反転って?」


 きょとん顔のマイ。

 かわよ。


「え、えとスキル反転は……デバフ技術、です。スキルの効果を、反転……つまり、逆にするんです」


 ぽかん顔のマーキュリーさんに、妹が説明する。


「たとえば、兄さんの超聴覚。耳をよくするスキル、ですよね? それの効果を逆、つまり、耳を悪くするスキルに変えるんです。それを、他者にスキル付与すれば、デバフ効果になる……」


 正直、一個も俺には理解できなかったが、これだけはわかる。

 ババディが、キレてる。つまりすごいこと。マイは、すごいことをした! ってこと。そこが一番重要なのだ。


「ま、マイちゃん……? あなた、今とんでもないこと、したのよ?」

「ど、どれ……ですか?」

「全部だよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 ババディのやつがまた騒ぎだした。

 野郎……。女だけど。


「ちょ、うるさいよ。今倒れてる盗賊、捕縛してるんだから」


 獣咆哮の効果で、盗賊たちはみなしびれて動けなくなってる。

 俺は鋼糸でやつらを捕縛してる最中だ。


「スキルの効果を反転!? そんなの聞いたことないわよ!? どうやってやるのよ!?」

「え、えと……ひゅーって、やって、ひょい、です。ひゅー、ひょい、です」


「いやわからん!? わからないよ!? なにそれ!?」

「あう……ごめんなさい」


 今作業で手が離せないが、あとでババディのケツは蹴っておこう。


「ああ、ごめんねマイちゃん……大声出して。ほんとごめん」


 ……ち。蹴るのはよしてやるか。


「でも、とんでもない発明よ、マイちゃん。スキルって大抵、対象者の力を上昇させるもの。それを反転させる運用なんて、本来は意味のないマイナス行為。でもそれを、相手に押し付けることで、デバフにできるだなんて。これ……スキル付与以上にとんでもない理論よ」


 おお! そうなのか!


「スキル付与は、長年、できないかなって議論が起きていた。でも、スキル反転なんて概念は、議論の上にもでてこなかった超技能。それをマイちゃんはやってのけた。もう規格外ってレベル……超えてるわよ」

「あう……それって、ダメなことなんですか?」


 マーキュリーさんが切れるのを、我慢、我慢して……。

 ぽん、とマイの頭を優しくなでた後……。


 彼女が俺に近づいてきて、耳元で言う。


「あんたの妹すごすぎるのよぉおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 だろ?

 つか、なんで俺に対していったのかさっぱりだけどさ。


 ま、妹がさらに凄いことがわかって、俺は満足だったね。


 マイのおかげで、アジトの中にいる雑魚【だけ】は、全員捕縛完了したのだった。

 さて、残りはこいつらの頭領だけだな。


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― 新着の感想 ―
[一言] 家入さんと同じく感覚派の人間おった笑
[良い点] 面白い [気になる点] ひゅーひょいは呪術廻戦から家入さんのセリフから取りましたか?
[一言] 賢神のアベルさんと同じ世界線なのですねスペさん王家の血ってことはもう彼女になってるあのひととの娘ですね
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