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17.辺境伯の娘を助ける



 俺は妹の杖の素材を採取するため、マーキュリーさんの故郷、デッドエンドってところへ行くことになった。


 王都を出て北東へと向かう俺たち。

 天与の原石が所有する馬車に乗り、目的地を目指す。


「しかし馬車までタダで貸してくれるとは……さすがSランクギルド」


 荷台には俺、マイ、マーキュリーさん、そして人間姿のフェン。

 フェンの背に乗せてもらえばいいかって?


『われは誇り高きフェンリルじゃぞ? われの背に乗せるのは主だけだ』


 だ、そうだ。

 まあマイ(親族)なら載せてもらえるだろうけど、そうなるとこのババディ(ババア+バディ)をおいてくことになるしな。


 超聴覚で周囲の探知を行う。


「しばらく敵には遭遇しないとおもうから、のんびりしてていいよ」

「馬車移動も、シーフくんがいれば大助かりね。さすが~」


 別にババアに褒められてもな。


「シーフ兄さんのおかげで、安全に旅ができる。ありがとうっ!」

「どういたしまして!!!!!!!!」


 マイにほめられた!

 うぉおおお! やったー!!!!


「リアクションの差よ……」

「あ? 当たり前だろ。マイは天使だぞ?」

「わけわからん……」


 ま、そんなわけでしばしのんびり旅をしようとした、そのときである。


【クイム ムウ ティウ バエ(※こんにちわ)】


 ……超聴覚を発動してる、俺の耳に、頭上からそんな声が聞こえて聞いた。


 あー……。

 めんどい。


【クイム ムウ ティウ バエ(※こんにちわ)】


 無視しとこ。


【クイム ムウ ティウ バエ(※こんにちわ)!!!!!!!!!!!】


 ……やれやれ。


「ムエムウ?(※なに?)」


 俺が、そうつぶやく。

 真横に座ってるマーキュリーさんが、怪訝な表情をする。


【ドゥイクイ ウ クオムイ?(※どこいくの?)】

「ドゥンエドゥ ンムドゥ(※デッドエンド)」


【エブオ エム ウヤイ!(※危ないよ!)】

「オディオ スエウ(※うるさい)」


【ワウウクエディエ ウディオ?(※力、いる)?】


 ……力、いる……か。

 俺は師匠の言葉を思い出す。


『坊や、その力にあんま頼っちゃ、駄目よ?』


 ……わかってるっての。


「ウバエ ウディエム(※今、いらん)」

【ウディオ ドゥントゥイ ウティーン!(※いつでも言ってね!)】


 頭上からの声が聞こえなくなる。

 やれやれ……うっさいやつだ。


「シーフくん?」

「なに?」


 マーキュリーさんが首をかしげる。


「今の……なに語? 大陸公共語じゃないわよね?」


 大陸公共語とは、俺たちの住んでいるゲータ・ニィガをはじめ、周辺の六大国が使う公用語だ。

 つまり、俺たちが普通に使う言語。


「そーね」

「誰と話してたの?」


「誰とって……」


 言っても信じないだろうし、まあいいか。

 俺は頭上を指さす。


「空……? ああ、月にいるキルマリアさんと話してたのね。ほんと、耳良いわね、宇宙に居る人と会話できるなんて」


 ああ、まあ、そういう解釈になるのか。

 訂正するのもめんどいし、いいや。


 そのときだった。


「…………あー」


 【あれ】と話してて、気づかなかった。

 この先で、トラブルが発生してることに。

 でも兄ちゃん的にはほっといていいんだけど……。


「シーフ兄さん」


 ずいっ、とマイが俺の顔を近づけてくる。

 険しい表情の、マイ。


 どうやら俺が気づいたことに、マイも気づいたようだ。

 まったく、以心伝心の妹だぜ。最高かよ?


「何かあったんでしょ?」

「……ああ。でも」

「なにか、あったんでしょっ?」


 ……駄目だ。 

 マイは本当に良い子だから、不幸の芽をほっとけないのである。


 うちの妹は、気弱だけど、でも正義感のある良い子なんすよ。

 慈悲深い……女神かな……?


【バエティエ スウ!】


 ……無視無視。


「この先で馬車が盗賊に襲われてるようだ。乗客は女と御者のおっさん。盗賊の数は10。たいしたことない」

「そこまで詳細にわかるのね、さすがシーフくんの耳」


 マーキュリーさんが感心してる一方。

 俺はマイに尋ね……ない。


 マイは俺の目を見ている。

 何も言わない。言わずとも、彼女の心の音が聞こえてくる。


 ……正義の音だ。

 真っ直ぐな音。弱い物を助けようとする、きれいな音だ。


 俺は、マイほどお人好しじゃない。

 正直関係ないやつが盗賊に襲われていようと、妹が無事ならそれでいいと思っている。


 でも、マイは違う。 

 妹は助けたいと、うったえてきてる。


「……OK。マイ、行ってくるよ」

「! シーフ兄さんっ。ありがとっ」


 マイの笑顔が見れるなら、もうそれだけで十分だ。

 やれやれ。


『ではわれが近くまで送ろう』


 のそり、とフェンが起き上がる。


「送るって……?」

『フェンリルの足のほうが、人間よりも早く、そして持久力もわれのほうが上だ』

「あ、そ。じゃ、連れてって」


 まあ別に遅くなっても良かったが……。

 まあいいや。


 フェンが馬車の外に出る。

 俺はカノジョの背中の上に乗る。


「兄さん……ファイト!」

「おうよ!」


 モチベはだいぶ低いが、まあ、マイが応援してくれるしな!

 よーし! 兄ちゃんがんばっちゃうぞぉ!


「早く行け」

『委細承知!』


 ぐんっ! と体がひっぱられる。

 草原をもの凄い速さで、フェンが走っていく。


「は、早いじゃねえか……」


 ちょっとビビるくらい、フェンは速かった。

 あっという間にマイたちを載せた馬車は見えなくなる。


『かかかか! そうじゃろうそうじゃろう! 神狼フェンリルの足は神獣の誰よりも速いのだ! もっと褒めてくれ!』

「やだ」


 なぜペットごときに褒めないといけないのか。

 俺が褒めるのはマイだけだ。


 ややあって。


『居たぞ、馬車だ……というか、こんな離れた場所の馬車の音を拾っておったのか、我が主……さすが……』


 少し先に巨大な森が広がっている。

 その入口付近で、馬車が盗賊に襲われていた。


『しかし大丈夫なのか、主よ? 妹君からだいぶ離れているが?』

「おまえ? バカ? 家族っていうのはなぁ」


 俺は鷲馬短剣グリフォン・ダガーと大鬼丸を手に、フェンの背中に立つ。


「離れてたって、繋がってんだぜ? 【縮地】!」


 俺は師匠から付与してもらった、スキルを発動。

 フッ、と体が軽くなる。


 フェンには及ばないものの、それに近い速度で、盗賊に接近。


 やつらは縮地スキルの効果で、俺の接近に気づいていない。

 俺はダガーの柄で、近くにいた盗賊の後頭部を殴る。


「がっ!」

「な!? な、なんだてめえ! どっから沸いてでて……がっ!」


 ふたり、三人……と俺は盗賊たちを無力化していく。


「て、てめえ! 動くな!」


 盗賊のリーダーらしき男が、馬車の中から、少女を連れて出てくる。


「ひぅ……!」

「こ、この女がどうなってもいいのか!?」


 リーダーが人質に取っている女は、ドレスを着た、身なりの良い女だ。


「ああ、どうなってもいいよ」

「なんだとぉ!?」


「俺は……な」


 すうぅ……と俺は息を吸い込む。


「ーーーーーーーーーーーーーー!」

「ぐぁ!!!!! な、んだこの……声ぇ!?」


 獣咆哮バインド・ボイス

 大鬼オーガから習得ラーニングした【スキル】である。


 ああ、マイ……やっぱり俺たちは、心で繋がってるな。


 獣咆哮バインド・ボイスの直撃を受けたリーダーと盗賊【だけ】が、動けなくなる。


「え? な、なんですの……?」


 動けなくなった盗賊どもの頭を、ダガーの柄で殴り、気絶させる。


「す、すごいですの……盗賊を、一瞬でたおしてしまわれた……ですの」


 俺は倒れてる盗賊どもが起きても困るから、【鋼糸】を使って、捕縛する。


「よし。帰ろ」


 俺はフェンのもとへ戻る。


『驚いたぞ、主……今おぬしは、スキルを使ったな?』

「そうだな。すげえだろ」

『ああ、凄すぎて……びっくりしたよ……』


 だろぉお?

 俺はフェンの背中に乗り、マイたちの元へ戻る。


「おーい! まーい!」

「にーさーん!」


 馬車は少し進んでいた。

 俺はフェンの背中から下りて、荷台に戻る。


「ありがとなぁ、マイ! 助かったよ!」

「ううん、どういたしまして」


 やっぱマイは最高やぁ~。

 一方マーキュリーさんは戸惑っている。

「え? なんのこと? なにがおきたの? 盗賊は?」

「あ? 無力化してきた」


「もう!? い、いや……10人くらいいたんでしょ? でもどうやって……?」


 そのときだった。


「勇者様が、たすけてくださったですの!」


 気づけば、背後に、俺が助けたガキがいた。


「てめえはさっきの……」

「はいですの、勇者様♡」


 勇者って……俺?

 何言ってんだこのガキは……?


「勇者様は縮地で盗賊を一瞬で片付け、人質になっていたわたくしを助けるため、獣咆哮バインド・ボイスを使ったのですの。そして、倒れた盗賊を鋼糸でしばりあげましたの!」


 ……あれ、このガキ、俺【たち】が使ったスキルを、把握してる?

 結構やるやつか……?


『うーむ……さすが我が主の妹。もの凄く距離が離れてて、状況も見えていないのに、主の欲しいスキルを遠隔で付与するなんて』


「え? これくらい……普通にできますよね?」


『いや……これは……む? どうした、魔女? こういうとき、叫びながら無粋なツッコミを入れるのが、おぬしではなかったか?』


 マーキュリーさんがばっ、と頭を下げている。

 なんなん?


「ご、ご無沙汰しております……【スペル】様」

「スペル……? このガキの名前……?」


 マーキュリーさんが殴りかかってくる音が聞こえたので、軽くよける。


「ひかえなさい! この方を誰だと思ってるの!?」

「知らん」


「デッドエンド辺境伯の娘、【スペル・D・キャスター】様よ!」


 ………………?

 ほーん……?


「つまりどういうこと?」

「し、シーフ兄さん。お貴族さまだよっ」

「へー……偉いんだ」


 ……俺、あんま貴族って好きじゃ無いんだけど。


「それよりマーキュリーさん、マイの付与ってやっぱりすごかったのか? 神業だったの? 説明してくんない、いつもみたいにうるさい声でさ」

「今! それどころじゃ! ねえっつのばかっ!」


「なんでだよ?」

「スペ様の御前だからよ!」


「たかが貴族の娘だろ?」

「ばっかもう! 王族! このお方は、王族の血も入ってるの!!!!!!」


 ……どうやらこのスペルってガキは、辺境伯の娘であり、王族の親戚でもあるようだった。

 ほーん……。


「それよりマイのすご技付与についてだな」

「あぁああああああああああ! 空気読めぇえええええええええ!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公の性格がやっぱ好きになれるなー ナチュラルに犬っころと思ってるし 人に対する態度もちょっと…
[一言] この言語、妖精かな?
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