16.頑固な職人に気に入られる兄妹
あくる日。
天与の原石にて、俺たちは朝食を食べていた。
ふと、マーキュリーさんが俺の最高位天使……おっと、マイのことをジッと見つめていう。
「そういや、マイちゃんって杖何使ってるの?」
「はえ……? 杖……ですか?」
「うん。杖。付与魔法を使うときに、必須でしょ?」
杖……。
杖、ねえ……。
「「必要なの(なんですか?)」」
マーキュリーさんが「フッ……大丈夫、これくらい慣れてる」となんだか半笑いを浮かべる。
「付与術師ってそもそも魔法使いなの?」
「そうよシーフくん。付与術師は、正確に言うと付与魔法使いだもの」
「なるほど……じゃあマーキュリーさんみたいに、杖が本来ならいるはずなんだね」
マーキュリーさんは指揮棒みたいな杖を使っていた。
一方でうちの天使は、いつも素手である。
「そもそも杖って必要なものなのか? 飾りじゃないの?」
「違う違う。杖はね、二つの役割があるのよ。魔法に指向性を持たすこと、そして魔力を効率よく魔法へと変換すること」
どっちも盗賊の俺には、ピンと来ないものだ。
マイは真剣に話を聞いてる。偉すぎ。
「杖が、あれば……もっと、兄さんの、役に立てるってことですね?」
「そうねえ。まあマイちゃんの場合、莫大な魔力量と、正確に魔法を当てる腕があるけど、杖があればもっともっとシーフくんの戦闘がラクになるわ」
「じゃあ……買います、杖!」
マイ……俺の……ために!
くぅ……! 兄ちゃん嬉しすぎるぜ!
『しかし魔女よ。主の妹は天性の才を持つ魔法使いじゃぞ?』
マイの隣で座っていた、フェンリルが言う。
『主の妹にふさわしい杖なんて、そう簡単に手に入るのかの? ああいうのは、実力に見合ったものを使わぬと、かえって良くないと聞くのじゃ』
犬のくせに物知りだな犬。
「そこは心配ないわ。私の知り合いに、腕の良い職人が、王都にいるの。その人のとこへ連れてってあげるわ」
ということで、俺たちはマイの杖を買いに行くことにした。
ややあって。
「ここがその職人の店……?」
王都の外れへとやってきた俺たち。
【八宝斎工房】と看板には書いてあった。
「はっぽうさい……? 変な名前」
なんか食い物みたいな名前の店だな。
「ここ、あたしの同郷のドワーフが営んでいる店なのよ。ちょっと性格に難ありだけど、腕はいいから」
「ほーん……うちの妹にふさわしい店かどうか、俺が見極めてやんねえとな」
「何目線なのよ……」
「兄目線だよ」
俺は特に緊張すること無く、ドアを開けようとする……。
「出て行けー!」
どんっ! と勢いよくドアが開く。
冒険者みたいな男が、たたき出されていた。
「貴様なんぞに売る武器はない! でていくがよい!」
「ひぃいいいい!」
冒険者の男は泣きながら出て行った……。
「ちょぉっと、頑固な人なのよ……」
「ちょっと……」
普通に買いに来た客を、たたき出していたように見えたんだが……。
「あうぅう……シーフ兄さん……こわいよぉう……」
引っ込み思案なマイが、俺の後に隠れてしまった。
マイ……大丈夫だ。
「兄ちゃんが付いてるよ」
「うん……」
フェンを外に置いて(店の中に入らないので)、俺たちは中に入る。
「【ガンコジー】、買い物に来たわよ」
「頑固ジジイ……?」
店のカウンターには、ぶすっとした顔のドワーフがいた。
■ガンコジー・クラフト
種族:ドワーフ
性別:男
職業:上級職人
「ふん……なんだマーキュリーか。なんのようだ。わしは今とても機嫌が悪いぞ」
じろり、と頑固ジジイ……じゃない、ガンコジーがマーキュリーさんをにらみつける。
同郷ってわりに、あんまり仲よさそうじゃないな。
いや、このじーさんが単に無愛想なだけか。
「新人の子に武器を買いに来たの」
「……ふん」
じーさんが俺をにらみつける。
「なんだよジジイ」
「………………ふん。盗賊か」
見ただけで、職業を言い当てやがったぞ。
「鑑定持ちなのか、あんた?」
「ふん。違うわい。手を見れば、だいたいどんな人生を歩んできたのかわかるわい」
じーさんは一度店の奥へとひっこみ、ぽい……と俺に鞘に入ったナイフを投げてくる。
「牛頭包丁はやめておけ。貴様はパワーよりも速度と手数で攻めるタイプだろう?」
……驚いた。そこまでわかるのか、このジジイ。
■鷲馬短剣
→鷲馬の加護を得る。移動速度、攻撃速度が上昇。
装備ボーナス:スキル【空歩】
■空歩
→滞空中、足下に空気の塊を発生させる。二段ジャンプを可能とする。
「装備ボーナスって?」
「装備してるときだけ、発動できるスキルじゃ」
なるほど。装備していれば、マイの付与を必要とせず、スキルを使えるんだな。
「装備ボーナス付きの武器って……。ガンコジー、あんたこんなレアなもの売ってあげるの?」
「ああ。わしにはわかる。この小僧が、この武器を持つに、ふさわしい努力の人だと」
……そこまで、わかっちまうんだな。
頑固なやべえジジイかと思ったけど、いいやつっぽい。
こいつなら、マイを任せてやってもいいかもな。
「さんきゅージジイ。お代は……?」
「いらん。その武器を使ってくれるならな」
「いいのかよ?」
「ああ。わしにとって金儲けなんてどうでもいいのだ。貴様が使ってくれるなら、その武器も喜ぶだろうしな」
ふーん……変わった爺さんだ。
「じゃあこの、鷲馬短剣、遠慮無く使わせてもらうよ」
マーキュリーさんが目を丸くして感心したようにつぶやく。
「驚いた……あの頑固なガンコジーに気に入られるなんて。シーフくん凄いじゃない」
ま、俺のことはさておき……だ。
「ジジイ。悪いけど、妹にも武器を見繕ってやってくんない?」
「む? 貴様の妹? どこにいるのだ……?」
俺の後にいたマイを、前に出す。
その瞬間……。
「こ、これはぁ……!!!!!!」
ガンコジーがカウンターから身を乗り出す。
「なんと……なんという……才気! こんな天才は、そうお目に掛かれるものじゃあない!」
「ひぅ……にいさーん……」
興奮するガンコジーに、怯えるマイ。 だが……ジジイ、よくわかってんじゃないか!
「そう。うちの妹は天才なんだ。この天才にふさわしい武器を……」
「ない!」
はっきりと、ガンコジーが言い切った。
「小娘……いや、あなた様に見合った武器は、残念ながら今ここにはございません」
なんだこのジジイ。
マイには凄くかしこまった態度とってやがる。
いいぞ!
「お力になれず申し訳ない……」
「い、いえ……」
マーキュリーさんはさっき以上に驚いてる声でいう。
「あ、あの頑固で有名なガンコジーが、敬意を払う相手なんて……マイちゃん、恐ろしい子」
あ?
恐ろしい子じゃないだろ?
才能あふれる天使様だろうが。言い直せよ。
「あなた様が使う杖を作るとなりますと……そうですな。神威鉄と、神獣の毛が必要となります」
神威鉄と、神獣の毛……か。
「神獣の毛なら直ぐ手に入るわね」
「え? どこに……?」
マーキュリーさんがドアを開ける。
『む? なんじゃ……?』
「フェンリルは神獣よ」
あ、そうか。
なら……素材二つのうち、一つは手に入ってる訳か。
がたたっ!
「なんと! 神獣を従えてらっしゃるとは! いやはや、さすがでございますな!」
「あう……あの……従えてるのは私じゃなくて……」
俺なんだがまあそんなのクソどうでもいいのだ。
「あとじゃあ、神威鉄?」
「そうね……このあたりじゃ手に入らないわ。一番近くだと……デッドエンドかしらね」
ん?
「デッドエンド……?」
「あたしとそこのガンコジーの故郷よ。神威鉄を採掘できるダンジョンがあるわ」
ほぅ……。
なら、次の目的地は決まったな。
「じゃ、いこうぜデッドエンド。マイの杖を作る素材を取りにさ」
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