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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

なろうラジオ大賞5投稿作品

雪山のコスモス

作者: 輪形月

拙作をお読みいただきまして、ありがとうございます。

『久々に滑りに行こうよ』

『なら二泊ぐらいしない?』


 金魚の糞ポジ瑞子に拒否権はない。

 強制同行でレンタルウェアとスキー板装着、リフトへ放り込まれるくらいなら許容範囲か。

 でも上級コースに連れ込まれたら、大騒ぎ一択だ。人目があるアウェイなら、板を外して回れ右しても、報復はない。ゲレンデでは。


 だけど現実は予想の斜め下。

 まさか『バックカントリー行こうよ』の一言でコースアウトの上、置いてきぼりとか。


『瑞子トロすぎ。いっしょに滑んのヤダ』

『下で待っててやるから、ちゃんと降りてこいよ』

『遅いと、帰っちゃうかもだけどー』


 ぎゃはは、と、濁った笑い声の記憶に頭を振る。自分が一体何をした。というか。


「いやー、ここまでダイレクトに殺人行為するとはなー……」


 親や学校に泣きつくことも考え、証拠用に自撮りもしていたが、肝心のスマホが物質(ものじち)ではどうしようもない。

 だが、クズ連中の滑降跡はくっきりしている。ならば、対処法は上級コース置き去りルートと同じでいいだろう。


 読みは甘かった。ゲレンデは板を外しても沈まない。バージンスノーと言っても、ちゃんと固めてあったんだと瑞子は悟った。


ずぼずぼ嵌まって抜けを繰り返すうち、谷間はみるみる蒼い闇に沈んだ。これ以上進むのは危険と諦め、瑞子はビバークの用意を始めた。

 積雪の山に板をさくさく刺し、こじって穴を掘る。身体がぎりぎり入るサイズにして這い込むと、入口に板を刺す。風で体温を奪われないようにするためだ。

 ストックの先に十徳ナイフを髪ゴムで巻いたのは念のため。こんなに雪があるのだ、もう熊は出ないはずだけど。


 ウェアポケットから出した食糧を口に入れて一息つき。

 …瑞子は息を呑んだ。


 こんなに澄み渡った満天の星空は初めてだ。

いつまで見蕩れていたのかわからないが、少しずつ向きを変える、ダイヤを撒いた濃藍の水晶板の規則正しさは、美しかった。


 秩序ある、調和のとれたものはいい。クズたちのこともどうでもいい。

 カースト上位というだけで、執着する意味はない。

 自分があって、世界がある。世界があるから、自分がある。それだけで十分だ。


 白金の筋が夜空に閃き、瑞子は反射的に願った。

 あるべきものが、あるべきようになりますようにと――。


 翌朝、瑞子はレスキューされた。クズ連中が穴持たずといわれる、冬眠できず空腹でより危険になった熊に襲われたせいだ。

 その荷物からスマホが出てきたことで、クズたちの殺人未遂は立証された。

コスモス=宇宙ということで。

瑞子は「たまこ」だったのですが、ルビが字数制限に引っかかり断念。

「たまご」と空目しやがれ、という罠だったんですが……無念。

1000字規定に沿うようあれもこれもと切り詰めていったら、ざまあが薄味過ぎる結果に。

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― 新着の感想 ―
[良い点] コスモスからは遠いよなあ、と思いつつも、展開が気になる内容で、ああ、これは宇宙として使っているな、と気がついたらストンといきました。 [一言] タイトル競題という意味では「雪山」ですね。で…
[一言] コメント失礼するぜ。 なかなかコスモの景色だけは、取り残された場所だからこその世界.... 夜空を見た時の圧倒的、開放感は堪らないだろうなぁw
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