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第1章 世界を進化させる遺産

とりあえずといった形で投稿致しました。

のちに構想が完成し、一気に全文を執筆してそれが終わり次第、全て投稿する予定です。

よろしくお願いいたします。

「ついに見つけたぞ」


琥珀色の石畳の部屋の中央に配置された黄金の円盤には確かに「エンディミティ」と刻まれたディスクが置かれている。

終焉の災厄。世界を滅ぼす最古の超テクノロジー。

これがあればこの星の末路を回避することが可能になる。最も「終焉」を意味するこのテクノロジーが世界を救済する最良の手段となりえることは皮肉めいてもいるが。

幾多の未開拓地を探検してきた冒険家ジェイリットはそのディスクを丁寧に円盤から取り出した。

それに反応して表面に刻まれたあらゆる文字や模様が青く光った。

彼はその表面を眺めた。

象形文字らしきシンボルマークが環状にびっしりと刻み込まれており、その中央にはワシの頭が描かれている。

予言にあった通りだ。伝説と謳われた文明、それも天空に存在したとされる幻の文明の発展に大きく寄与したとされる、偉大なる鳥人のシンボルがその遺産であるメダルに刻まれている。

世界を書き換えることを願った、一大種族の偉業を成した人物、その名は………。


「イカロス・エンデル」


思わず声に出して呟く。世界が始まったとされるこの地で、人類と彼らの種族との関連性、その秘密が隠されていると、そう噂で聞いてからずっと探し求めてきた、人類世界の行く末を左右するとも言っても過言ではない遺産が今、自身の手の内に収まっている。

何を目論むつもりもない。世界が危機に陥っているわけでもない。故にこれを使って世界を救おうという大それた根拠もない。ただ、この伝説の遺産が骨董市で途轍もない法外な値段で取引されていることを密かに知っただけであり、その大金を得るべくしてこれを探し求めてきただけなのだ。そう、彼が欲しいのは食扶ちに困らないだけの十分な資金さえあれば良かった。たとえそれを可能にするこのメダルがいかなる突拍子もない逸話に基づいた遺産であるにしても、そんなことは金輪際関係のない話だった。とにかくお金が入ればいいのだ。レガシーハンターを始めたのも生活に必要な分、もっと欲を言えば一攫千金を得るためがゆえ。確かにある程度の関心はあれど、大金を目の前にさえすればそんなことはまるでお構いなしの世界だった。

お金。とにかく生活費。それがゴージャスな生活へと変わるための大金を得られるなら、それに越したことはないのだ。


「これで俺も大金持ちってやつか!」


内心喜ばずにはいられないような大きな期待感が膨らんでいくのを直に感じ取りながら、ジェイリットはそれをベルトからぶら下がっている布巾着にそっと落とし込んだ。

………それがのちに途轍もない災厄をもたらすことになるであろうとは、思いもせずに。






やはりというか、いつ何度来てもここ江ノ島の景色は壮観だった。久しぶりに訪れた海岸線に立ち並ぶ街並みが煌びやかな日光に照らされて、白い壁がより潔白な色を帯びているように思えた。彼の顔を吹き付ける塩辛い潮風に乗ってさざ波の音が静かに聞こえてくる。トンビの鳴き声があたかも本格的な夏の到来を告げているようなその感覚が、恋人との新たな発展を期待してきた高揚感を押し上げてくれるような気さえする。


「もう七月も下旬だね」


梨奈が握っている手を思わずというべきか、握り直しながらそっと呟く。土砂降りの夕立で互いを責め合ってしまったあの時の大喧嘩が嘘のように思える。あのことはもう、すでに過去のものとして自分たちの記憶の片隅に思い出の一つとして生まれ変わったんだろうか。そんな気持ちを確認しようと、控えめな上目遣いで静かに勇輝の表情を確かめてみた。

何かを考え込んでいる様子で眉をひそめている。

………まだ、気にしているのかな。

僅かに不安に駆られた梨奈の心境を読んだかのように彼女の視線に気づいた勇輝が言った。


「俺たち、恋人同士で本当に良かったよな」


………やっぱり、気にしていないみたい。

ふっと笑いながら、梨奈は勇輝の瞳を横から見つめ直す。


「うん、そうだね」


あえてそれだけ返答してみた。

彼が何を考えているのか、真に知りたかったためだ。

数秒の間が空いた後、勇輝が再び口にした。


「………交際記念日も近づいてきたことだし、今日はそれに先立って何かプレゼントしたいんだよな、俺」


一気に好奇心が弾けたような気がして、梨奈の声が僅かに高ぶる。


「えっ、なになに?プレゼントって?」


なぜか難しい顔を崩さないまま、勇輝は次の言葉を平然と言ってのけた。


「………世界を変える秘密が隠された黄金のメダルさ」


不意打ちされて、梨奈は返答に困った。

………世界を変える秘密が隠された黄金のメダル?

一体全体、何の話を………。

戸惑う彼女の様子に気づいた勇輝はそこでようやく難しい表情を解いてみせた。

笑顔を梨奈の方に向ける。


「世界に数枚しか存在しないとされるその黄金のメダルがこれから向かう江ノ島のある市場で販売しているらしいんだ。迷信かもしれないけれど、そのメダルには人を至福へと導く魔法がかかっている、と言われていてね。俺は梨奈のことを幸せにしたいから、そのメダルで今後の関係をうまく発展できればな、と思ってね」


「………そうだったのね!」


勇輝の表情の真意が半ば理解できたような気がして、梨奈は喜んだ。

たとえその話が実際にあろうと、迷信だとしても、気持ちだけでとっても嬉しく感じる。


「そうと決まったら、早く、行こう!」


握っている手をそっと引っ張って、梨奈が江ノ島へと続く道へ催促した。

勇輝が未だに考え込んでいるその真意はもっと別のところにあるとは気づきもしなかった。

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