第087話 ジョシュのおすすめ
アーリエスで一波乱あった事なんて全く知らないリージョたちは、ようやくサジッタに着こうとしていた。
「やっと着いたぁ」
リージョが大声で叫んだ。
「かなり遠かったし、魔獣も出てくるわで、結構大変な旅路だったわね」
「まぁ、そのおかげで異界の力の使い方も分かってきたし、シェリーだってニードルの命中率上がったんじゃないか」
「そぉ?」
「そんな事よりもさっさと宿屋を決めようぜ。俺は早くサジッタの料理を食べてみたいんだ」
すっかり料理長が板についてきたトレルだった。
トレルの発言で、宿屋探しに出たリージョたちだったが、結局前回と同じ宿屋にする事になった。
宿屋を決めたリージョたちは、ダンジョン潜りを明日からにして、今日は必要な物の買い出しが終わったら、各自、自由行動にする事にしたようだ。
リージョ & シェリー’s ビューポイント――――
「あとはポーションを買って終わりだね」
「そうだな」
「ねぇねぇ。その後、何かお土産みたいなのを見に行かない?」
「えぇ~。ここ物価が高いんだぜ」
リージョとシェリーがそんな会話をしながら、店を見て歩いていた。
その時、2人の前方に見た事のある顔の人物が現れた。
「今度は、その女を連れてのダンジョンか?」
それは、ここのギルドのサブマスターをやっているジョシュ・ファロンだった。
リージョは、なぜか警戒するかのような顔つきで、シェリーの前に出て緊張しながら話した。
「偶然、見かけただけだ。そんなに警戒する事はない。ほぅ、そっちの女はニードルの投擲か」
ジョシュは、リージョの後ろに隠れているシェリーの腰にあるベルトを見て、そう言った。
「どこのダンジョンに潜るか決まっているのか?」
「まだ決まってないですよ。みんなの欲しい属性がバラバラで」
リージョは警戒しながらも、実際どこにするか決まっておらず困っていたため、言葉を選びながら内情をジョシュに話した。
ジョシュは顎に指を添えて、少し考えてから話し出した。
「それなら、ランダムダンジョンと呼ばれている所がいいかもしれないな」
「ランダムダンジョン!?」
「あぁ。その名の通り、どんな属性の魔獣が出てくるか分からないダンジョンさ」
「以前、ダンジョンに潜った感じだと、同じ属性の雫が手に入るように思えたけど、違うダンジョンもあるんだな」
リージョがへぇ~っといったような顔をしながら言った。
「まぁ、参考までに」
ジョシュはそこまで言うと、フッと軽く笑って去っていった。
「どうするの?」
リージョの後ろからシェリーがひょこっと顔を出して聞いてきた。
「ん?あぁ。悪い話じゃないと思うけどな。ロイたちにも話してみよう」
そんな事があり、リージョたちはこの後ポーションを買うと、ロイたちと合流するために宿屋へと向かっていった。
リージョとのショッピングがなくなってしまったシェリーが、終始不満顔だったは言うまでもない。
宿屋に到着すると、トレルもロイも戻っていた。
「なぁ、潜るダンジョンの話なんだけどさ……」
リージョは、ロイたちにジョシュとのやり取りを伝えた。
「と、まぁそういう事なんだけど、どう思う?」
「今の俺たちに、ちょうどいいダンジョンだな」
「だけど、あのジョシュが言ってきたんだぜ?何かあるのかと」
「確かに怪しいといえばそうだけど、他にアテもないし」
「俺はダンジョン初めてだから、お前たちの判断に任せるぜ」
リージョからの提案に2人とも反対するわけでもなかったため、潜るダンジョンはランダムダンジョンと決まった。
翌朝。
朝食をとったリージョたちは、ランダムダンジョンの入り口の前に立っていた。
「昨晩も話したけど、基本的には俺とロイで倒していくよ。トレルとシェリーは安全第一で」
「赤眼の魔獣は強いから、出てきたら気をつけて」
「わ、分かった」
リージョとロイから念を押されて、シェリーの緊張の度合いが増す。
「赤眼の魔獣を倒したら、俺が体を掻っ捌いて、異界の雫を取り出せばいいんだな」
さすがは年長者のトレル。
初めてのダンジョンだというのに落ち着いているように見える。
「それでは各自、つつがなく」
「また……。言いたいだけだろ」
リージョの発言にロイが呆れている。
ランダムダンジョンに入り、まっすぐ進んでいくと、Y字の分かれ道に出た。
「リージョ、地図」
「え?俺、持ってないぞ」
ロイの言葉に、リージョが返した。
「なんでだよ!」
「地図買ってこいなんて、言ってないだろ!」
「お前がここのダンジョンの話を持ってきたんだろうが!」
「話を持ってきただけで、その時点では確定してなかったじゃんか!」
「まぁまぁ。まだ入ってまっすぐきただけだし、戻ればいいじゃん。ね」
2人の言い合いに、シェリーが仲裁に入った。
「チッ!」
「チッ。じゃねぇよ!」
ロイの舌打ちに、リージョがまた噛みつきそうになった。
「「!!」」
その時、リージョとロイが同時にダンジョンの奥へと目をやった。
「どうした?2人とも」
「何かいる」
トレルの問いにリージョが答えた。
リージョの言葉に、トレルとシェリーが慌てて武器を構えた。
ザック’s ビューポイント――――
ザックがギルドの事務所にいると、向こうからジョシュがニヤニヤしながらやってきた。
「何か面白い事でもあったんですか?」
「ん?大した事じゃないさ。あぁ、そうだ。例のアーリエスからの客人、またダンジョン潜りに来てたぜ」
「またですか。力をつけすぎるのも困るんですけどね」
ザックが渋い顔をしながら言った。
「それで、今回はどこのダンジョンに行くって言ってましたか?」
「迷ってるようだったから、ランダムダンジョンに行くよう勧めておいたぜ」
「なっ!ランダムダンジョン!?何故ですか!!まだ素人同然ですよ!」
「いろんな属性が出て、お手頃だろ?」
「確かにいろいろな属性が出ますが、ほとんどが赤眼ですよ!」
「あぁ、そうだったな。さて、どうなるか」
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