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怪盗団フォックスの暗躍  作者: くろの那由多
第1章 アーリエス近郊にて
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第008話 アレックの安堵

 翌日、リージョとイグナスが交代でアレックの小屋を見張っていたが、ケリーは大した動きも見せなかった。



 そして夕食時になった頃、ジャーノ一家が『暗夜の灯火』に来店してきた。

「いらっしゃい!」

「今朝、ポストに家族全員無料の招待状が届いていたんですが。しかも日時指定の。誰かのいたずらか何かでしょうか?」

 出迎えたカールマンに、ジョアンがそっと招待状を差し出した。

 カールマンは、その招待状をまじまじと見て、答えた。

「おぉ!これは来店1万人に1人のプレミアムチケットですね。ささっ、奥の席にどうぞ」


 ジャーノ一家は、カールマンに促されるまま、奥の座敷に入っていった。

 子ども達は大はしゃぎだったが、アレックは何だかそわそわしていた。

「いらっしゃい。今日はコースになりますので、こちらから順にお出ししますね」

「いや、今日はちょっと用事があるのでそんなに長居は・・・」

「せっかくのプレミアムチケットですよ。ゆっくりしていってくださいね」

 接客にきたロイに対してアレックが口を挟んだが、押しきられてしまったようだ。



 ニー’s ビューポイント――――


「アレックのヤツ、家族で食事に出掛けているようです」

 ニーがレイブンの事務所の椅子に座っていると、その部下が入ってきて報告した。

「刻限までは2時間以上ある。それまでに戻ってこればいいさ。まぁ、ノーとは言わせないがな」

 ニーは、怖ろしい笑みを浮かべて言い放った。



 イグナス’s ビューポイント――――


 忍び装束に身を包んでアレックの小屋を監視しているイグナスの所へ、同じく忍び装束のリージョが差し入れを持ってきた。

「どうやら1時間に1回くらいの間隔で差し入れがあるようだな。リージョ、次の差し入れの時を狙うぞ」

「オッケー。それじゃ急いで行ってくるよ」

 リージョはイグナスと会話した後、カールマンに報告するため暗夜の灯火へ戻っていった。



 こうして、それぞれが思い思いの時間を過ごし、1時間が過ぎていった。

 次第に、辺りは暗闇に覆われていった。



 ケリー’s ビューポイント――――


「差し入れっす」

 レイブンの下っ端が、小屋の中にいるケリーに差し入れを持ってきた。

「あぁ、待ってましたよ。もう腹ペコですよ」

「これが最後の差し入れっすね」

 下っ端が話しているが、ケリーはお構いなしに差し入れをあさっていた。

 その間に、リージョとイグナスは小屋の入り口へ足音を立てずに近寄った。

 そして、何やらサインを交わすと、リージョが小屋のドアをわざと音を立てながらゆっくり引いていった。


 キィー


「おや、扉が開いてますよ。デビルは暑い気候じゃないと枯れちゃうんです。さっさと閉めてきなさい」

「あれ?おかしいな。ちゃんと閉めたはずなんすけど」


 そう言って、下っ端がドアの方に近づいてきた。そして下っ端の手がドアノブを掴もうとしたその時に、イグナスが飛び込んで一撃を食らわし、ダウンさせた。

「誰だ!あ、お前たちはっ!」

「よぉ、また会ったな!」

 驚くケリーに対して、イグナスはそう言い放って、襲いかかっていった。


 しかし、今度は下っ端の時とは違い、ケリーの方も2つの短剣を抜き、身構えていたため激しい攻防戦になった。

 イグナスのパンチをガードして、ケリーが短剣で斬りかかり、かわされるといった互角の戦いになっていたが、すぐにリージョが乱入してきて2対1になり、ケリーは防戦一方になっていった。


「いててっ」

 その時、倒されていた下っ端が起き上がってきた。

「兄貴に伝えなさい!フォックスの襲撃です!」

 ケリーはそう言って、下っ端を逃がすためにドアの方へ回り込んだ。

 それを見て、下っ端は一目散に小屋を出て行った。

「おぅおぅ。俺たち二人を相手に何とかなるって思ってるんじゃないだろうな」

 イグナスに言われ、ケリーは苦い顔をした。



 ニー’s ビューポイント――――


「なに!襲撃だと!?」

 報告を受けたニーは、コートを羽織ってすぐに事務所を出て行った。

(どういう事だ?確かにフォックスは邪魔な存在だったが、今回の件はヤツらに何も関係のないはず)

 そんな事を考えながら、ニーは小屋へと急いだ。



 ロイ’s ビューポイント――――


「お待たせしました。デザートになります」

 ジャーノ一家のテーブルに、ロイが締めのデザートを運んできた。

 上の子ども二人は届いたデザートに大はしゃぎ、下の子どもはうつらうつらと半分夢の中のようだ。

 そんな中、アレックだけは終始落ち着かない様子だった。


「そういえば、さっき来店されたお客さんが、南通りの畑の辺りでケンカがあったとか言ってましたよ。確かアレックさんって南部の人でしたよね?」

 ロイがデザートをテーブルに置きながら話すと、アレックは目を見開いて立ち上がり、少し考えた後、店を飛び出していった。

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 ジョアンは飛び出したアレックの跡を追おうと、帰り支度を急いだ。



 ニー’s ビューポイント――――


 ニーが小屋に着いた時には、野次馬が集まっていた。

 その視線の先にはボロボロの状態の小屋と、その小屋と同じようにボロボロになったケリーが横たわっていた。


 そして、そのケリーの向こうには、忍び装束にキツネの仮面といったフォックスの出で立ちの二人が立っていた。

「貴様らか」


 ガチャン!


 ニーの問いかけに対し、横たわっているケリーの前にリージョが無言でデビルの苗を落とし答えた。

 その苗はすでに枯れていた。


 そこへジャーノ一家もやってきた。

「……っ!なんてひどい状態なの」

 ジョアンが小屋の様子を見て嘆いた。

 アレックも愕然としていたが、しばらくすると憑き物が落ちたような顔になっていた。

「通してください!警察です。通してください!」

 警察も到着したようだ。


「このままで済むと思うなよ。必ず後悔させてやる」

 この現状を見たニーは、リージョたちを一瞥してそう言って、人混みの中に消えていった。

「これから厄介な事になりそうだな」

「警察も来たことだし、ひとまず帰ろっか」


 警察たちが小屋の前まできた時には、イグナスとリージョも闇に紛れてその場を立ち去っていた。

 その後、警察たちが辺りを取り囲み、捜査を始めた。

 フォックスの存在に気づくことなく。


【読者の方々へ】


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