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怪盗団フォックスの暗躍  作者: くろの那由多
第2章 迷宮都市サジッタにて
75/123

第075話 ブリジットの炎

 イグナス’s ビューポイント――――


『暗夜の灯火』でそんなドタバタ劇があったとは全く知らないリージョたちは、その間、新しいダンジョンに挑む事にしていた。


 それは、通称、炎のダンジョンと呼ばれる所で、ダンジョンの途中から溶岩が流れ出ている所だった。

 そして、その溶岩の流れに沿っていけば、最後の部屋まで辿り着けるという地図いらずのダンジョンだった。


 ただし、ダンジョンの中はとても暑く、クールポーションという特殊な飲み物を飲んでいかないと暑さから身を守れないと言われていた。

 しかし、そのクールポーションには、暑さを感じないだけという偽物も存在するらしい。

 誤ってそれを使うと、気づかないうちにダンジョンの熱によって皮膚がただれてきて、最期は全身燃え尽きてしまうらしい。


「イグナス、頼むぞ」

「あぁ、偽物を摑まされないように気をつけてくるよ」

 リージョに声をかけられて、イグナスは意気揚々と返事をした。クールポーションの買い出しはイグナスに任されたようだ。


「グレーン、荷車の方は大丈夫だよな?」

「おっと、忘れてた。すぐに取ってくるよ」


 前回のダンジョンで学んだようで、荷車を持っていくことにした。

 倒した魔獣やその他諸々と、拾える物は拾ってきてお金に換金しないと、ここサジッタではやっていけないという事を悟ったようだ。


「じゃあ、俺たちは軽く先に進んで行ってるからな」

 イグナスたちが準備のために散っていった後、リージョとロイは、サジッタと炎のダンジョンのほぼ中間地点まで進み、休憩をする事にした。



 リージョたちが大きな木陰で休んでいると、サジッタの方面からイグナスとグレーンが歩いて近寄ってきた。

「遅かったな」

「お前らと違って、ダンジョンに潜る準備をしてたからな」

「で、クールポーションってのは手に入ったのか?」

 ロイとグレーンが言い合いを始めそうだったのを察して、リージョがイグナスに話を振った。

「あぁ、安売りしている店から怪しげな店、めちゃめちゃ繁盛してる店まで様々でさ、めっちゃ迷ったぜ」

「で、買ってきたのは本物だろうな?」

「あぁ、見抜き方を聞いてからは、簡単だったね」

「どんな見抜き方なんだ?」

「その前に……」

 リージョと話していたイグナスがクルッと振り返った。


「よぉ。今回は、炎のダンジョンか?クールポーションは持ってきてるよな?」

 リージョと話し込んでいるとはいえ、イグナスは知らないうちにすぐ近くまでリーナスに背後をとられていた。


「おっ、いいね~。余分に買ってきている辺り、いい感じだね」

 そう言いながら、リーナスは荷車に載っている麻袋を開け、中身を覗いた。


「知らないうちにやってくるよね」

「俺たちの事を尾けているのか?」

 リージョとイグナスが疑いの眼差しでリーナスを見た。

「でも、異界の雫を契約する時は、いなかったし……」

「要するに、怪しいって事だろ」

 続いて、ロイも言った。


「そう言われると元も子もないな」

 リーナスはお手上げってポーズをとった。

「だけど。決して、お前らが損するようには動いてないはずだぜ」

「それは、分かってる」

 リージョがリーナスに返事をした。


「まっ、疑っても仕方ない。炎のダンジョンへ出発しよう!」

 リージョがそう言うと、全員で炎のダンジョンの入り口へと向かって進み始めた。



 暫く歩くと、炎のダンジョンの入り口が見えてきた。

 入り口付近には、最初のダンジョンと同様、ギルドの者が立っていた。

 ダンジョン内から熱気が来るのか、かなり離れて立っている。


「4人様ですね。お気を付けてどうぞ」

 熱気でダルいのだろう、適当にあしらわれてリージョたちは通過していった。

(あれ?4人?)

 通過して暫くしてから、リージョが思った。


 そして、リージョが振り返ると、手を振るリーナスがいた。

「どうした?気になる事でもあるのか?」

 リーナスは、きっと、通過の際はどこかに隠れていたのだろう。

 しかし、なぜ?とも思ったが、リージョは敢えて考えない事にした。


 入り口からは熱気がもうもうと立ちこめている。

 リージョたちは、クールポーションを1つ飲み干した。

「それじゃ、行こうか」

「またリーダーぶりやがって」

 リージョがみんなに声をかけたら、ロイがブツブツ言った。

「ぶってねぇよ。それに別にいいだろ」

「ぶってねぇって事はリーダーのつもりって事かよ。余計に腹が立つ!」

 リージョとロイが言い合いしながら、炎のダンジョンの中へ入っていった。



 ゴポッ ゴポッ


 至る所から溶岩が噴き出している。

「うわぁ~。天井が高いな~」

 足元に気をつけながら、リージョが呟いた。

「熱気がこもらないように高く作られているんだ。だけど、天井が高い分、翼のある敵が襲ってくる事もあるから、空中戦も覚悟しとけよ」

 リージョの呟きにリーナスが返事をした。


(作られた?ダンジョンは自然のものじゃなく人工的なものなのか?)

 リーナスの返事に、イグナスがふと疑問に思った。



 リージョたちが溶岩の流れが下へと続いている所へ近づいた時、背後から殺気を感じた。

 振り向くと、そこには炎の入った壺を持った魔獣ブリジットがいた。


「散開しろ!」

 リーナスの言葉を聞き、咄嗟にリージョたちは散った。

 その直後、ブリジットは壺の中の炎を掴み、さっきまで全員がいた所へ炎を投げつけた。

 地面に着弾した炎は、四方八方へ飛び散っていった。


「おぉ、危ねぇ」

 避けたロイが言った。

「ちょっとやめてくれよ。せっかく買った荷車が中古になっちまうじゃねぇか」

 グレーンが荷車を引きながら火炎を避けている。

 ブリジットは、おかまいなしにリージョたち目掛けて炎を投げつけてくる。


「このっ!」

 リージョがその炎をかわして、ブリジットに向かっていった。

 しかし、着弾した後の炎が飛び散り、距離を詰める事ができない。

「くっ!」


『サンダーバード』


 イグナスが叫んだ。

 そして、ブリジットの後方から一気に接近した。

 ブリジットもイグナスの接近に気づき、後ろを振り返ったが、その瞬間、再びイグナスが叫んだ。


『行け!オーディン!!』


 イグナスが持つ槍の先端から直線的に稲妻が走っていき、ブリジットに直撃した。

「ギィィヤァァァ!」

 ブリジットの断末魔が響き渡り、黒焦げになったブリジットがその場に倒れた。


「炎の魔獣を更に焼き尽くすとは。そのオーディンってのはかなりの威力だな」

 リーナスがイグナスに言った。

「その分、疲れるけどな」

 イグナスは、槍を杖代わりにしながらリーナスに返事をした。



 ブリジットを倒した一同は、溶岩の流れに沿って下へと潜っていった。


【読者の方々へ】


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