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怪盗団フォックスの暗躍  作者: くろの那由多
第2章 迷宮都市サジッタにて
54/123

第054話 ニーの噂

 翌日、『暗夜の灯火』の開店前に従業員が全員集められた。

 しかし、そこには、ロイとリージョ、グレーンの姿はなかった。

「え~。今日からロイとリージョ、それからグレーンの3人が研修のため、暫く『暗夜の灯火』を離れる事になった。スタッフが減ってみんなに負担がかかると思うが、よろしく頼む」

 カールマンが集まった従業員全員に発表した。

「ホールスタッフにも研修とかあるのかよ~」

 アスティンがぼやくように呟いた。

「接客も大事だからね」

 それに対して、シェリーがフォローを入れた。



 その3人とイグナスは、朝早くにサジッタへ向けて出発していた。

 この4人が最初に異界の力を取りに行くメンバーだ。

 リージョたちはカンカセルを経由して、サジッタへ向かうルートで移動している。

『暗夜の灯火』が開店時間を迎えた頃は、アーリエスからカンカセルまでの半分の距離を進んだ辺りで野営の準備をしていた。


「リージョ、カンカセルまではあとどれくらいだ?」

「あと半分弱くらいかな。明日の昼頃には着くと思うよ」

 聞いてきたイグナスにリージョが答えた。

「さすが一度行ってるだけあるな。頼もしいぜ」

 それを聞いて、ロイがリージョに声をかけた。


 3人が話しながら、寝袋などの準備をしているのを横目に、グレーンは夕食の準備をしていた。

「おぉい。そろそろスープができるぞ」

「おっ。待ってました」

「やっぱりキッチンスタッフがいるといいよな」

 グレーンに呼ばれた3人はそんな事を言いながら、グレーンの所へ集まってきた。

 こうして、出発初日の夜が深まっていった。



「そろそろ出発するぞ」

 翌朝、イグナスに3人が起こされた。

 昨晩、交代で見張りをしていたリージョたちだったが、特に何もなかったようだ。

 イグナスは、その最後の見張り役だったため、朝起こす役も任されたようだ。


 リージョたちは、眠い目をこすりながらもカンカセルまでの道のりを急いだ。

「リージョ。ところでよ、前にカンカセルへ行った時って、夜どうしたんだ?徹夜か?」

「いや、ちゃんと寝たさ」

「何もなかったのか?」

「あぁ。この辺には魔獣とかも出ないからな」

「じゃあ、交代で起きてなくてもよかったじゃないか!?」

「もしもの為だよ!4人もいるんだからいいだろ!」

 道中でロイとリージョがそんな言い争いをしたりと、話しながら歩いていったため、あまり時間を気にせずにカンカセルまで行く事ができた。

 そして、リージョの予定通り、昼を少し過ぎた頃にカンカセルの南門に着いた。



 南門からカンカセルに入ったリージョたちは、まず宿屋を探した。

 ここで、1泊して翌朝、サジッタへ向かうつもりなのだろう。

 サジッタでお金を使う事になるかもしれないと、カールマンから言われていたため、少しでも節約しようと、安い宿屋に泊まる事にした。


 リージョたちは、宿を決めると部屋に荷物を置いて、食料など必要な物を買いに出掛けた。



 宿を出た所で、イグナスが話し出した。

「じゃあ、分担して買い物に行くか。なるべく必要な物だけにして、節約していくぞ」

「んじゃ、俺は食料を買いに行ってくるな」

 グレーンがそう言ったのに対して、3人とも当然とばかりに頷いた。

「俺、ちょっと武器屋に行ってきていいかな?この前、世話になったからさ」

「あぁ。じゃあ、俺とロイで物資の調達に行ってくるよ」

 リージョに対して、イグナスが答えた。

「それじゃ、各自、用事が終わったら宿屋の部屋に戻るって事でいいかな?夕飯は、この宿屋の飯にしよう」

 イグナスがそう言うと、4人はそれぞれの方向へと移動していった。



 リージョ’s ビューポイント――――


「こんにちは~」

 ブレーンの店に入って、リージョが挨拶をした。

「はいよ~」

 奥からブレーンが出てきた。

「おぉ。この前の小僧じゃないか。武器は役に立ったか?」

「はい。あ、でも、俺のとイグナスの武器が逆でした」

「あれ?タグを間違えてつけちゃったかな?まあ、無事でなによりだ」

 ブレーンは、間違えた事をあまり気にしてないようで、笑い返してきた。


「それで、今日は何のようだ?何か買いに来たのか?」

「あ、いえ。ちょっと挨拶に」

「わざわざ挨拶のためだけにカンカセルまで来たのか?」

「あ、ここにはサジッタへ行くために立ち寄っただけで」

「サジッタ?迷宮にでも行くのか?」

「はい。明日の朝、出発する予定です。ちょっと異界の力が必要になっちゃって」

「この前もいきなり武器が必要になって、今度は異界の力か。アーリエスは荒れてるのか?」

「まぁ、ちょっとした小競り合いですよ」

 リージョは、頬をかきながら答えた。


「ふ~ん。で、その忍び装束でダンジョンに潜るのか?」

「そのつもりですけど、何か?」

「いやに軽装だな。防御力、大丈夫か?せめて、ワイヤーを編み込んだ忍び装束にするとか」

「そんなのがあるんですね。でも、今は節約しないとですから」

 リージョは、欲しそうな顔をしながらも我慢した。

「ま、武器や防具が必要になったらまた注文してくれって、カールマンに伝えておいてくれや」

「了解です」

 そんな会話をして、リージョはブレーンの店を後にした。



 リージョはブレーンの店を出て、自分たちが泊まる宿屋へと向かっていった。



 宿屋に着き、自分たちの泊まる部屋に入ると、まだ誰も帰ってきていなかった。

「みんな、まだ買い物中か」

 リージョは、そう呟きながらベッドで横になった。

 ケガが治ったばかりで、旅路での疲れがたまっていたのか、リージョは知らぬ間に眠ってしまった。



「おい、リージョ。そろそろ起きろよ」

「まだ本調子じゃないんだ。もう少し寝かせてやれ」

「そう言ってるイグナスもケガから復帰したばっかりじゃないか」

 そんな会話が聞こえてきて、リージョは目を覚ました。

 見ると、3人とも部屋に揃っていた。


「あぁ。ゴメン。知らないうちに寝てしまってた」

 リージョは、体を起こしてみんなに言った。

「そろそろ日も沈みそうだから、夕飯を食べに行こうか」

「そうだな」

 グレーンがそう言うと、全員で頷いて宿屋の食堂へ向かって歩いていった。



 食堂に入り、それぞれが思い思いに注文した。

「いつもは、食事を提供する側だから、たまにはこういうのもいいな」

「そうだな。イグナスはいつもだけどな」

 グレーンが言った事に対し、ロイが笑いながら話した。

「俺もいつも遊んでるわけじゃないぜ。時々、討伐者として稼いだりしてるんだぜ」

「そういう所でトレーニングしてるのか。俺も討伐者やろうかな」

「気をつけないと、ニーと鉢合わせになるぞ」

 リージョの言葉に、イグナスがクギを刺した。


「マジか。イグナスは会った事があるのか?」

「あぁ。武器を覚えられていたら素性がバレちまうから、慌てて武器を隠したけどな」

 リージョたちは、そんな事を話しながら、食事をしていった。



「ちょっと待ってくれ」

 食事を済ませて、リージョたちが食堂を出ていこうとした時、宿屋の店主が声をかけてきた。

 リージョたちが振り向くと、店主が話し出した。

「さっき、『ニー』とか言ってなかったか?もしかして、ニー・ディアスの事か?」

「あ、そうでモガッ」

「いえ。ニーンと言っていたんですけど、どうかされましたか?」

 リージョが答えようとしたのをイグナスが遮って、店主に返事をした。

「いや、ニー・ディアスというのは、昔ここがオークどもに襲われた時に、戦死した少年兵の名前なんだけどね。その子の遺体だけがなかったもんだから、もしかしてどこかで生きてるのではと噂になってて」

「そうなんですか。カンカセルの事件は小さい頃、聞いた事があります。大変でしたね」

「オークが群れで襲ってくるなど、ほとんどない事なんだけどな。あ、人違いだったんだな。引き止めて悪かった」

 店主はそう言うと、リージョたちの食器をさげに戻っていった。



 そんな事がありながら、リージョたちは部屋に戻っていった。

「あ~あ。ニーにそんな過去があるなんてな」

 ロイが呟いた。

「そうだな。あんな事を聞くと、今後、戦いにくくなるな」

 グレーンが続いて話した。

「まぁ、あんまり気にしない方がいい。明日も早いんだ。今日はもう寝よう」

 イグナスの言葉で、それぞれベッドに入っていった。



 その夜、ニーと直接戦った事のあるイグナスとリージョは、なかなか寝付けなかった。


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