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怪盗団フォックスの暗躍  作者: くろの那由多
第1章 アーリエス近郊にて
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第005話 ケリーの策略

 翌日、材料不足を理由に『暗夜の灯火』を臨時休業にして、午前中から作戦を開始した。


 今回、調査の対象になる農家は、ヴィジットとティットの2つの農家であり、それぞれイグナスとリージョが調査する事になっている。

 方向が一緒なので、途中まで2人で行動していた。


「リージョ。ここから先は、農道や畑だらけで身を隠す所が少なくなってくる。どれだけ農園に人がいるか分からないが、相手の視線に気をつけて移動していくんだぞ」

「分かってるよ。イグナスが行くヴィジットの方が農園も大きいし、その分、危険も多いんだぜ。気をつけろよ」

「あぁ。じゃ、また日没の頃、ここに集合しよう」

 リージョたちはそう話をすると、それぞれ違う道を進み始めた。



 リージョ’s ビューポイント――――


 イグナスと別れてから暫くすると、ティットの農園が見えてきた。

 少ない木々やちょっとした高低差に身を隠しながら、近くまで移動してきた。

 農園には、数人の人影が見えた。しかし、その人影は農園の中で農作業をしているというより、農園の周りを見張っているように思えた。

「あいつら、レイブンのヤツらじゃないか。レイブンが関係してるって事なのか?建物の中の様子も見ておいた方がいいな」

 リージョは、農園の見回りをしている連中の隙をつきながら建物へと移動した。


 忍び装束から鏡を取り出し、窓から中の様子をうかがう。

 部屋の中には、ティットと思われる男性とその正面に男が二人立っている。

 リージョは、窓の隅に装置を取り付け、中の会話を盗聴し始めた。


「いったい、いつまでこんな状態が続くんだ!」

「ティットさん、少し落ち着きなさいよ。そもそもあなたも私たちに全て売るという事を了承したんでしょ?」

「そうそう。俺たちに売る方が市場に卸すより金になるって分かったら、すぐ決断したじゃないか」

「くっ、まさかヴィジットの方まで買い占めて、あんな高値で売り出すなんて」

「それは、あなたの想像力が足りなかったせいですよ。それより、この前、あなたを説得しに来た人がいたんでしょ?よく追い返してくれました。大した物ですよ」

 男はニヤリと嫌みな笑みを浮かべる。


「また、ああいった連中が来ても困ると思って、私の部下に農園一帯を見張らせていますから大丈夫ですよ。無償でね」

 ティットは、悔しい顔をしながら、しかし何も言えずにいる。

「あいつは、レイブンのケリー・バルザック。相変わらず嫌な笑いをするヤツだな」

 リージョは、事の流れが分かったところで、装置を外し早々にティットの家から去っていき、イグナスとの合流地点へ向かった。



 合流地点には、もうイグナスが待っていた。

「おぅ、早かったな」

「まぁな。で、そっちはどうだった?」

 リージョは、『暗夜の灯火』へ向かいながら、見てきた状況をイグナスに話した。

「なるほどな。俺の方は、ヴィジットが家に閉じ込められたまんまだったから、そこまで詳しくは分からなかったけど、ほぼ同じ内容なんだろうな」



 トレル & ロイ’s ビューポイント――――


 トレルとロイは、例の露店がある場所のすぐ裏の建物の中にいた。

 ここは元々カレー屋だったんだが、人参とじゃがいもが手に入らないという理由で暗夜の灯火同様、一時休業しているようだ。

 だから、カレー屋の中に忍び込み、シャッター越しに露店の様子を盗み聞きしている。



 正午を過ぎたが、しぶしぶ商品を高値で買っていく客がたまにいるくらいで、特に何もない。

「はぁ。何も進展なしだぜ。そろそろ引き上げるか?」

「本当に何も進展がないかの確証もほしい。何もなくても夕方までは待機だ」

「この堅物め!」

 ロイは、そう言いながら窓から外を覗き見た。

 すると、遠くから男がこちらにやってくるのが見えた。明らかに客ではない雰囲気だ。

 ロイはすぐに窓から離れ、シャッターの方へ回る。

「何かありそうだ」


「売れ行きはどうです?」

「昨日はあまり売れなかったですが、今日はだんだん売れるようになってきましたぜ。この調子なら明日は、倉庫にある分も売れるかもしれませんぜ」

 シャッターの向こう側から、そんな会話が聞こえてきた。


「そうか。私は倉庫の方へ行ってきます。こちらも引き続き夕方まで売り続けてください」

「わかりやした」

 男は、そう言うと露店を離れて歩き始めた。

 トレルは、ロイに指で指示を出し、ロイもそれに頷き、建物を出ていこうとしている。

 どうやら、トレルがここで盗聴を続け、ロイが男を追跡するという事のようだ。


 ロイは、露店から離れていく男を見つけ、尾行を開始した。

「あいつは、ケリー・バルザックじゃないか。やっぱりレイブン絡みか」

 ケリーは、ロイの尾行に気づく事なく倉庫へ向かって歩いていった。



 露店から倉庫までは、それほど離れておらず、1ブロック先の建物だった。

 ケリーが倉庫に入っていったので、ロイは窓越しに中の様子をうかがった。

「おぅおぅ。結構ため込んじゃって」

 倉庫の中には段ボールがいくつも積んであった。あとは数名の男がいる感じだ。

 ロイは、すぐさま窓の隅に装置を取り付け、盗聴を開始した。


「変わりはないですか?」

「はい。誰もこの倉庫にあるとは気づいていません」

「もう、俺が気づいてるけどね~」

 ロイがボソッと呟いた。

「露店で買う者が増えてきているようです。露店にも補充をしていかないといけなくなりそうです。明日辺り、ピーシスから運んできたように見せかけて露店へ持っていってください」

「なるほど、ピーシスへ買い付けに行ってたってのも嘘だったわけだな。こんだけ分かれば充分だ。見つかる前に退散するか」

 ロイはそう言うと、装置を外し、急いでトレルの元へと向かった。



 その夜、再び『暗夜の灯火』にフォックスが集まった。


「つまり、ピーシスから仕入れているというのは嘘で、アーリエス内の物をレイブンが買い占めて、それを高値で転売しているっていう事だな。だいたい予想通りだな。では、明朝、その倉庫を襲撃、買い占めている分を全て頂くぞ」

 カールマンの話に皆頷いた。

 決行は明日の朝だ。


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