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怪盗団フォックスの暗躍  作者: くろの那由多
第1章 アーリエス近郊にて
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第004話 カールマンの不満

 アーリエスの南部は、主に農園になっている。

 そして、街の南門を抜けた先には海があり、魚などが釣れる。

 そういった理由から南部には市場があり、暗夜の灯火で使用する食材も南部の市場から仕入れる事が多いようだ。


「はぁ~」

 『暗夜の灯火』の開店前、カールマンが椅子に座りながら深いため息をついた。

「何かあったんすか?」

 厨房で仕込みをしていた大柄なシェフのトレル・クーが話しかけた。

「なぁ、人参とじゃがいもは、今どれだけ在庫がある?」

「昨日も仕入れてないっすから、もう残り少ないですよ。今日の分、あるかないかじゃないっすかね」

「だよな~」

「まさか、また品切れだったんすか?」

「何かおかしいんだよな。市場に来てる連中も文句言ってたけど」

「ここんとこ天気も安定してますし、不作というわけでもないっすよね」

「明日も市場に行ってみて、また無いようなら帰りに農家に寄ってみようと思う」

「明日の仕入れの状況によっては、明日からのメニューを変えないといけないかもですな」

 そう話して、トレルは仕込みに戻り、カールマンは少し考え事をし始めた。



 翌朝、カールマンは南部の市場へと向かった。

 カールマンが市場に着くと、案の定、市場に人参とじゃがいもは置いてなく、市場中が揉めていた。

「人参とじゃがいもをいつも卸してるのは、ヴィジットとティットのとこじゃないか」

「ヴィジットもティットも最近、市場に顔を出してないぞ。誰か理由、知らないか?」

「2人ともいっぺんに廃業か?」

 市場へ買い物に来ている人や生産者の人たちの間で、文句や憶測の話が飛び交っている。

「まだ誰も農家までは行ってないようだな。とりあえず買える物だけ買って、帰る途中で農家に立ち寄ってみるか」

 カールマンはそう呟くと、他の売り物を品定めしながら買っていった。



 そして、買い物が終わるとさっき呟いた通り、農家に立ち寄る事にした。

 ティットの農家へと続く農道を歩いていると、前方から2人の男が歩いてきた。


「前はあんなヤツじゃなかったと思ったけどな」

「あぁ、全くだ。『何も話す事はない』なんてな。とりつく島もなかった」

 すれ違いざまにそんな会話が聞こえてきた。

「こりゃ、俺が行っても一緒だな」

 カールマンは、来た道を引き返して暗夜の灯火へと向かった。



 『暗夜の灯火』に着いたカールマンは、ひとまず人参とじゃがいもを使う料理をメニューから外し始めた。

「トレル、とりあえず暫くこのメニューでいくぞ」

「結構メニュー減りますな」

 トレルも頭をかきながら考え込む。

 こんな状態で、『暗夜の灯火』は開店時間を迎えた。



 更に翌日、またカールマンは市場へと出向いた。

 市場から人参とじゃがいもが無くなってから4日が過ぎている。

 カールマンは必要な物を買うと市場を出て、『暗夜の灯火』への帰路に着いた。



 その帰りの道中、カールマンは道端に人だかりができているのを見かけた。

 どうやら何かの露店が出ているようだ。

 カールマンは、横を通りながら覗いてみる。


「今、人参とじゃがいもがないってんで、ピーシスの街で仕入れてきたよ~。道中の交通費や警備隊などの諸費用がかかっちゃってるから、普段よりちょっとだけ値段が上がっちゃうけど、背に腹はかえられない。必要なら買ってって~」

 売っている物を見ると、人参とじゃがいもと人参の葉の3品だった。


 人参の葉の部分は、他の物と調合する事によって、傷を治すいわゆるポーションになる。

 このポーションは、常備している一般家庭も多い。当然、病院にとっても必需品だし、アーリエスの西部に多く住んでいる討伐者と呼ばれる者たちも持っておかないと心配な品物だ。

 そのポーションを作る材料の人参の葉は、薬師にとってはなくてはならない物である事は言わずもがなである。

 ちなみに、ピーシスはアーリエスより南に位置する農業の盛んな街の名である。


 そして、この露店で売っている価格はとんでもない事になっている。

 いつもなら人参1本30ディア程度で買えるのに400ディア、じゃがいもも同様に10倍以上の値がついている。

 ポーションの材料になる人参の葉も相当高い値がついているようだ。

 しぶしぶ買う者もいれば、諦めて帰っていく者もいる。

 カールマンも何も買わずに『暗夜の灯火』へ向かって帰っていった。



 カールマンが買ってきた物で、トレルが仕込みを始める。

 トレルは、素材が少ない事を嘆きながら仕込みをしているが、少ない分いつもより早く終わってしまいそうだ。



 夕方、リージョが出勤してきてメニュー表を見た。

「またこのメニュー?お客さんから苦情の嵐なんだよ~」

「入荷できないんだから仕方ないだろ。それよりも今晩、集合かけるぞ。こんな状況を続けられてたまるか」

「あいあいさ~」

 リージョは、カールマンの『集合』という言葉に反応してワクワクしているようだ。



 今日も客からの苦情を受けながらも何とか一日が終わった。

 だが、フォックスとしては、今からが本番だ。


 この日の夜、例のごとく『暗夜の灯火』の地下室にフォックスのメンバーが集まった。

「集まったな。今回は依頼がきたわけじゃない。が、皆も知ってる通り異常な状態だ。何が起きているのか、また何者かが暗躍しているのか、その辺りを徹底的に調べ、全てを正常な状態に戻す事を目的とする。俺が市場などで仕入れた情報を元に作戦を立てる」


 カールマンが作戦の詳細とそれぞれの役割分担を説明していった。

「以上になるが、全員異論はないか?それでは各自、つつがなく」


【読者の方々へ】


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