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怪盗団フォックスの暗躍  作者: くろの那由多
第1章 アーリエス近郊にて
39/123

第039話 オークの牙

 トレル & ロイ’s ビューポイント――――


 作戦3日目。

 今日が今回の作戦の最終日となる。

 2日間でアーリエス南部周辺、西部にある森の中の川辺周辺と行動してみたが、未だにニーの足取りは掴めていない。


 今日は、トレルとロイがペアで行動する事になっているのだが、今までの2日間のような採集ではなく、魔獣を討伐しなければならない。

 2日目もリザードマンと戦闘になったが、今回はイレギュラーではなく確実に戦闘になるのだ。

 というのも、今回の集める素材というのがオークの牙という事なのだ。

 オークが牙をくれるわけがないから、仕留めてから牙を切り取らないといけない。

 オーク自体は、そこまで強敵ではないと思われるが、群れでいた場合、一気に周りを囲まれる可能性もあるため、慎重に行動しなければならない。



 作戦日の前日に、ロイはウェイターの仕事をしながら、オークをどうやって1体ずつ倒していくか思案していた。

「持って帰れる分だけでいいから、オークの肉も頼むな」

 ロイが不安になっている事を知ってか知らずか、カールマンは軽く頼んできた。

「はいはい」

 それに対して、ロイは、ややムスッとして答えていた。



 トレルとロイも森に向かうため、グレーンたちと同様、西門から出て森へ入っていった。

 ただ、グレーンたちが真っ直ぐ西へ進んで、川辺に向かったのに対して、トレルたちは森に入った後、北上していった。

 数年前の出来事だが、森林北部から突如、出現したオークの群れにカンカセルが襲われた事があったからだ。


「なぁ、オークの群れがカンカセルを襲ったのは結構前の事なんだけどさ、まだオークたちの居住区があったりするのかな?」

 ロイが不安げにトレルに聞いた。

「そりゃ、移住してなければ、そのまま住んでるんじゃないのか?数年前にカンカセルが襲われたのは、居住区のオークの人口が増え過ぎたからだとも言われているからな。オーク全員でカンカセルに突撃したんじゃなければ、生き残りがいるのは想定内だな」

「今回、もしオークの居住区があったら、居住区にいるオークを全滅させる?」

「いや、そこまで戦う必要はないな。素材として必要な分、せいぜい3体くらいじゃないのか?それだけ倒せばいいだろう」

「カールマンから頼まれたオークの肉は?」

「それこそ1、2体もあれば充分だろう。一応、荷車も持ってきてはいるが、それ以上は載らないと思うぞ」

 2人はそんな事を話しながら、森を北上していった。



 そして、森を抜けた所で立ち止まった。

 2人の目の前には、岩肌が見える丘が現れていた。

 その丘の中腹辺りをよく見ると、いた!オークだ!

 しかし、見る限り、2体いるだけだった。

 居住区もありそうな感じだが、こちら側ではなく、丘の向こう側なのかもしれない。

 それよりも、なんだか慌てふためいているように見える。


「なんか様子がおかしいな。バタバタしている」

「確かにな。まぁ、何にせよ、チャンスだな。今のうちに、あそこに見えてる2体を倒すぞ」

 トレルはそう言うと、荷車から大鉈を取り出した。

 この大鉈がトレル用の武器だ。

 トレルが武器を構えるのと同時に、ロイも双剣を抜いた。

「ここから先は、あまり身を隠す所がない。一気に行くぞ」

「あぁ、俺が右のヤツを相手するから、トレルは左を頼む」

 ロイはそう言うと、走り出す体勢をとり、丘へめがけてダッシュしていった。

 やや遅れて、トレルも左側にいるオークに向かって走り出した。


 ロイが丘を上り始めた辺りで右側のオークはロイに気がつき、棍棒を構えて迎撃の体勢をとった。

 左側のオークもそれに気づき、応援に行こうとするが、自分の方にもトレルが近づいてきている事に気づき、トレルを相手する事にしたようだ。



 ロイがオークのいる位置と同じ高さまで、駆け上がってきた。

「ガァァ!」

 オークが叫び、棍棒を構えながら突進してきた。

 オークは、ロイが棍棒の届く範囲に入ると、すぐさま右腕で棍棒を振り下ろした。


 ブォンッ!


 ロイは、その攻撃に合わせて、オークを飛び越えるようにジャンプした。

 そして、ロイがオークの後ろに着地する。

 振り向くオークは、右腕と左目を斬られていた。

「グガァァ!」

「片手で腕を斬り落とすのは難しいな」

 怒り狂うオークに対して、ロイは冷静に分析している。


 オークは、斬られた右腕を抑えながら、再びロイに突進を行った。

 オークが棍棒を振りかぶった瞬間、ロイがオークの首を双剣で薙いだ。


 ブシュゥゥ!


 両サイドを斬られたオークの首は、落ちはしなかったものの、激しく血飛沫を上げている。

 おそらく太い血管を斬ったのだろう。

 オークは、後方へと崩れ落ちていった。


 ロイは、倒れたオークの胸を剣で刺してトドメを刺した。

 そして、牙を切り取ろうと、牙に手をかけようとして一瞬、躊躇した。

「最期に噛みついたりするかな?よし、トレルにやってもらおう」

 ロイはそう呟くと、トレルの方に目をやった。



 トレルは、ロイほど素早く丘を駆け上がれなかったようで、丘の坂道の場所でオークに上から棍棒で叩かれていた。

 もちろん、トレルの武器の大鉈で防いではいるが。

「いつまでも上から叩きやがってぇ!」

 トレルは、オークの棍棒での攻撃を防いでいた大鉈を思いっきり振り切った。

 オークの棍棒は押し返されて、オークは後ろに尻もちをついた。


 オークが尻もちをついている間に、トレルはオークを飛び越え、その上の平たい位置に着地した。

 オークがそれを呆然と見ていたら、トレルがかかってこいと言わんばかりに上からチョイチョイと手招きをした。

「ウガァァ!」

 オークは、トレルの挑発に乗り、棍棒を構えて一直線に丘を駆け上がっていった。


 オークがトレルの位置まで駆け上がり、棍棒を振り下ろそうとした時、すでにトレルは大鉈を横にして構えていた。

「おらぁぁ!」

 オークが振り上げていた棍棒を振り下ろす前に、トレルの大鉈がオークの両腕を捉えていた。


 ザシュッ!


 オークの両腕があっという間に斬られていた。


「力技だな」

 遠目に見ていたロイが呟く。


 両腕がなくなってしまったオークが狼狽えているところへ、更にトレルが大鉈を横に振って、オークの首を切断した。

 トレルは、オークの頭部が転がった所まで行き、牙を掴んで小刀で牙を切り取った。

「おぉい。こっちの牙も切り取ってくれよ!」

 それを見ていたロイがトレルに叫んだ。



 トレルがロイの倒したオークの牙を切り取ったところで、ロイが話し出した。

「反対側にも回ってみるか?」

「あぁ、その方がいいだろう。だけど、反対側はおそらく居住区が近いぞ」

「ハイオークとかも居そうだな」

「ハイオークで済めばいいけどな」

 そんな事を話しながら、2人は岩伝いにゆっくり反対側へと回っていった。


 ちなみに、ハイオークとはオークが進化したものだと言われている。

 そして、装備品も鉄製の物にグレードアップしているという。


 ロイが岩から少し顔を出して、向こう側を見た。

 丘の下の遠くで戦闘が繰り広げられているのが見えた。

「ん?オークの群れと戦っているのがいるぞ」

 ロイの言葉に反応して、トレルも岩陰から顔を出す。

「ホントだな。1人か?」

「今、生き残っているのが1人なのかもしれないけど、そんな風に見えるな」


 岩の陰で、そんな事を話していると、ロイは何やら視線を感じたようだ。

 すぐ斜め前に、甲冑を着たオークが座っていたのだ。

 そのオークが立ち上がり、こちらに近づいてきた。

「オ前ラ、アイツノ仲間カ?」

 オークの群れが戦っている辺りを指差し、しゃべってきた。


【読者の方々へ】


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