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怪盗団フォックスの暗躍  作者: くろの那由多
第1章 アーリエス近郊にて
24/123

第024話 ブレーンのおもちゃ

 リージョ’s ビューポイント――――


 カンカセルは、アーリエスのほぼ真北に位置した街だ。

 リージョはひたすら北へと、舗装されていない道を走ってきていた。

 そして、アーリエスを出発した次の日の昼過ぎに、カンカセルの南門に到着した。


「止まれ!ここに何しに来た!?」

 門番がリージョに問いかけた。

 走ってきたリージョは、息を整えてから話し出した。

「ブレーン・ユーリの店に買い物をしに来ました」

「ブレーンの店?武器でも買いに来たのか?まあいい。通れ」

 リージョは、門番にペコリと礼をして南門をくぐって、街の中に入っていった。


「やっぱり以前に襲撃があっただけあって、厳重だな」

 リージョは、そう呟きながら、ブレーンの店を探してウロウロしていた。

 店の位置を聞いてこなかったリージョは、街の人に聞きながらブレーンの店へと向かっていった。



 ブレーンの店は、南門からずっと北進し、北門が見えそうなくらいまで行った辺りで右に曲がった所にあった。

 この辺りは、街壁の中なのに山岳地帯になっている。

 鉱石を手に入れやすいという理由で、武器や防具の店が建ち並んでいるらしい。


「すみませ~ん」

 リージョは、ブレーンの店の中へ入っていった。

「はいよ~」

 店の奥から、カールマンと同年代くらいの男性が出てきた。

 この男性がブレーン・ユーリなのだろう。

「カールマンが注文していた武器を引き取りに来ました」

「おぉ、わざわざ取りに来たのか?明日の朝、出発しようと思ってたところだったぞ。裏の工房に回ってきな」

 ブレーンはそう言うと、また店の奥へと戻っていった。

 それを見て、リージョも一旦店を出て、建物をぐるっと半周して裏の工房へ行った。



 リージョが工房に着いた時には、ブレーンが荷車を引いて出てくるところだった。

「ほらよ。結構あるが、ひいていけるか?荷車はついでにやるよ」

「ありがとうございます」

「もひとつおまけに、俺が作ったおもちゃをやろう。持っていきな」

 ブレーンが四角い箱に紐がついた物をリージョに渡してきた。

「その紐に火をつけて投げてみな。火が箱の部分まできたらドカーンと爆発するぞ」

「えっ!?」

「箱の部分に火がくるまでに投げるか離れるかしろよ。じゃないと、自分が吹っ飛ぶからな」

 ブレーンは、笑いながら説明してくれた。

 リージョからしたら、笑い事ではないのだが。


「そうだ!カールマンとリーナスは元気にしてるか?」

「カールマンは元気にしてます。リーナスっていう人は知りませんが」

「リーナスは一緒じゃないのか?まぁいいや。カールマンに、たまには顔出しにこいって言っといてくれな」

「はい。分かりました。では、失礼します」

 リージョは、ブレーンに頭を下げると工房を出ていき、カンカセルの南門からアーリエスに向けて出発していった。



 ロイ’s ビューポイント――――


 リージョがカンカセルの武器屋に着いたちょうどその頃、アーリエスの警察署付近にある建物の屋上でロイがグレーンと合流した。

「お疲れさん。昨日はジャックを尾けたんだよな。どうだった?」

「う~ん。上司のジョーにはペコペコしてて、後輩には威張ってるって感じだったなぁ。上司からトール襲撃命令があったら断らずにやるかもな。あと、昨日は西部の酒場にも行ってて、ガラの悪い連中とも接点が多いみたいだ」

「レイブンやステイ・ランドルってヤツとの接点は?」

「昨日、一日じゃ、そこまで分からないけど、今のところなしだな」

「実際にトールを襲ったやつはステイ・ランドルってヤツらしいんだ」

「まぁ、ジャックがそのステイ・ランドルに襲撃依頼をしている可能性は、ゼロとは言い切れないな」

 ロイは、グレーンの昨日の報告を聞いたところで、カールマンから昨日聞いてきた事をグレーンに話し、情報の共有化を図った。



「なるほどね。昨日は特に日付の話はなかったけど、レイブンと繋がってるヤツが『J』っていうならジャックかジョーで決まりだな」

「断言はできないが可能性は高くなったな」

「なんだよ。歯切れが悪いな。っと、そろそろ出勤しないとだ。ロイ、それじゃ、今日はジョーの尾行、頼んだぞ」

 グレーンは、そこまで言うと屋上から降りていった。


「すまんな。今日の尾行はジョーじゃないんだ」

 グレーンが降りていき1人になった後、ロイは呟いた。



 イグナス’s ビューポイント――――


 俺は昨日と同様、レイブンの事務所の2階を壁越しに盗聴している。

「ケリーはいるか?」

 ニーの声がよく聞こえる。

「どうしました?」

「ランドルは今、事務所にいるか?」

「えぇ。多分、1階にいると思いますが?呼んできましょうか?」

「いや、いい。それより今度『J』と合流する日は、明後日だったよな?」

「確かそのはずです。それが何かありましたか?」

「ランドルには、その1日後に延びたと伝えておいてくれ」

「ステイ・ランドルは連れて行かないという事ですか?」

「あいつのいない所で『J』と話がしたい」

「後で揉めそうな気がしますが、分かりました。伝えておきますね」


「『J』の要望で、北の丘にある小屋には2人までとなっているから、俺とお前で行くからな」

「小屋に入るのは1人だけでしたよね。私は小屋の前で見張りという事でよろしいですか?」

「あぁ。頼む」

「分かりました。それでは、まずは日付の変更をステイ・ランドルに伝えてきます」

 ケリーはそう言って、ランドルの所へ向かっていった。


「接触する日は明後日か。今日、シェリーが差し入れに来てくれるって言ってたな。その時に伝えるか。しかし、北の丘に小屋なんてあったっけ?」

 イグナスが独り言を言っている時に、ちょうどシェリーが来た。


「はい。差し入れ!」

「おぉ、すまんな。シェリー、北の丘に小屋みたいなのがあったっけ?」

「ん~。あまり外には出てないから分からないけど、ずっと前に行った時は何もなかったと思ったけどね」

「やっぱりそうだよな。明日は北の丘付近に下見をしに行ってくるな」

 そう言うと、イグナスはここで仕入れた情報をシェリーに伝えた。



「それじゃ、今日は仕事だからカールマンに伝えておくね。あと、私、明日休みだから下見に付き合おうか?」

「ありがたいけど、たまにはイザベルの相手もしてやりな」

「分かった。ありがとう」

 シェリーは、イグナスに礼を言うと屋根から飛び降りて、『暗夜の灯火』に向かっていった。


【読者の方々へ】


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