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怪盗団フォックスの暗躍  作者: くろの那由多
第1章 アーリエス近郊にて
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第002話 ジョージたちの給料事情

 夕暮れ時、リージョとイグナスは、大通りから小道に入っていった。

 小道に入ってから少しした辺りには、『暗夜の灯火』とネオンで描かれた看板があり、そのネオンの一部が切れかけの蛍光灯のように点滅している。

「おぉ、まだ客がいるようだな」

 ネオンの一部が点滅している時は、案件を持った客がきているという合図になっているようだ。

「んじゃ、俺は一応店員だから裏口から入るな」

 そう言うと、リージョは店の裏手に回っていった。

 そして、イグナスは客を装い、入り口から店内へ入っていった。



 店内は個室式になっているため、店内に入っただけではどんな客が来ているのか分からない仕様になっている。

 いわゆる隠れ家的店内である。

「いらっしゃい!お一人様で?」

 イグナスが店内に入ると、風格のあるマスター、クリス・カールマンが声を掛けてきた。

「あぁ」

「では、4番席でお願いします」

 カールマンに席を促され、イグナスは4番の個室へ入っていった。

 イグナスは部屋に入るとすぐに5番席側の壁に装置を取り付け、会話を盗み聞きする準備を始めた。

 どうやら5番席にいる客が今回の依頼者になりそうな感じだ。

 5番席では、ウェイターの1人でもあるロイ・ライドマンが対応している。


 この店のメニュー表の裏には、『何かお困りの事がありましたら、ご相談ください。小さな事から深刻な内容までお気軽に』という言葉が書かれていた。

 某ハンバーガー屋のスマイル0円のような感じだ。


 客が相談をしてきたら、ウェイターが対応し、依頼人なのか警察の手の者なのか、はたまた俺たちを罠にハメようとしている敵対勢力の者なのかを判断していく。

 それゆえ、ウェイターには相手の事を見定める力が必要となってくる。

 下手をすれば、ここがフォックスのアジトという事がバレてしまい、壊滅させられる恐れもある。

 最悪、おびき出されて消されるという事態にもなりかねないからだ。

 ただ単に、グチを言いにきているだけの客も少なくはないのだが。


 ちなみに今、5番席で対応しているロイはなかなかイケメンな男性で、女性客が来ると大抵捕まってしまっている。

 ロイ自身も『男の嘘は見破れないが、女の嘘は俺に任せろ』と豪語するくらい女の見定めには自信があるようだ。

 だが、残念な事に今回は、ムキムキのガテン系の男性御一行様が相手だった。



 アーリエスの北部には発電所があり、この辺りには主に肉体労働者が住んでいる。

 というのも、ここの発電所は、輪っかの中に労働者が入り、ひたすら走って輪っかを回すというヤツだ。

 輪っかの回転で発電する仕組みらしい。

 だから、北部に住む肉体労働者は、やたらと足の筋肉がついている。

 今回の御一行様も同様の体格をしていた。



「はよっす!」

「おぉ、リージョ、来たか。1番席さんがお呼びだ」

 裏の勝手口から入ってきたリージョにカールマンが指示を出した。

(おっ!俺にも出番が来たか!)

 そう思ったリージョは、1番席へと向かっていった。



「お呼びでしょうか?」

 やる気満々の顔で飛び込んだリージョの相手は、孫と上手くいっていないというおじいさんだった。



 ロイ’s ビューポイント――――


「お待たせしました。ドリンクです」

 ロイが飲み物を置いていく間もマッチョマンたちの会話は続いていく。

「で、どうなんだよ。お前の今月の給料」

「いくら先輩でも、そんな個人情報は……」

「だぁ~!額を聞いてるんじゃない!働いた分に対して少なくないかって事だよ!」

「あぁ、確かにそれはありますね。がんばって回転数を増やしても先月とほとんど変わらなかったですし」

「オレもめっちゃがんばって残業したのに、増えてなかったっすよ」

「やっぱ、働いた分はちゃんと欲しいよな。なぁ、兄ちゃん?」

 飲み物を配り終えたロイに、一番年長者っぽいジョージ・レンが話を振ってきた。

「そうですよね。一生懸命働いてるんですもんね。一度直接話してみたらいいんじゃないですか?」

「実は昨日、ミケル所長に話したんだ。そしたら、電気料金を未払いの客がいて、そのせいで俺たちに払えないんだと」

 ロイの返答にジョージが答えた。


「ほう。労働者への未払い自体は認めたのか」

 隣の席のイグナスが呟いた。

 更にジョージが話し続ける。

「しかもその未払いの客ってのが、レイブンの連中らしいんだ。そりゃ、取り立てに行けって言ったって行けないわな」

 ジョージがため息をつく。

 それを聞いて、ジョージ同様、全員がうなだれてしまった。


 レイブンとは、いろいろな街に支部を置いてあくどい事をしている連中だ。

 もちろん、ここアーリエスにも支部がある。



 重い空気の中、ロイが席を立とうとした時に、バンダナをした男がハッとした顔をして、ロイに目を向ける。

「そういえば、この店ってフォックスと繋がってるってホントっすか?」

「フォックスってキツネのような仮面を被った怪盗団の事ですよね?そういう噂は聞いた事がありますが、ここで働いてる私も会った事ないですからねぇ」

「なんだぁ。噂がホントならフォックスにレイブンから未払い分を盗ってきてもらいたかったのに」

 ロイの言葉で、またうなだれる一同。


「でも、もしかしたらどこかで聞き耳を立ててるって事もあるかもしれませんから、希望を捨ててはダメですよ。で、では失礼します」

 ロイは気まずそうに5番席を離れていった。


「……聞き耳を立ててるってのは、俺の事か?」

 イグナスは隣の席でなんだか納得していた。



 その夜、閉店時間をむかえた『暗夜の灯火』の中では、後片付けを終えた者から、地下室に通じる扉を開けて、地下へと降りていった。

 最後にマスターのカールマンが戸締まりをして、地下室へと降りていった。

 カールマンが席に着くのを待ってから、ロイが勢いよく話し出した。

「レイブンから、がっつり盗っちまいましょう!」

「……何か引っかかるな。レイブンも調べるが、発電所の方も調べてから行動した方がいいな」

 ロイの話を聞きつつ、カールマンが言った。

「明日、レイブンの方をイグナス、発電所の方をロイとリージョで調べてくれ。その情報を元に、行動開始といこう。では、詳しい作戦の説明に入ろう」

 カールマンが細かい作戦の流れとそれぞれの役割を説明していった。

「以上になるが、全員異論はないか?それでは各自、つつがなく」


【読者の方々へ】


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