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怪盗団フォックスの暗躍  作者: くろの那由多
第3章 医療都市コピスにて
107/123

第107話 ニーとの共同戦線

 蜘蛛の子を散らすように、一斉に逃げ出す住民たち。

 その住民たちを避けながら、討伐者たちや警察が西方の使者を包囲していく。

 そして、ニーが西方の使者と対峙した。


「なんだぁ?死にたがりか?」

「お前の好きにはさせん」

 ニーはそう言うと、黒狼剣を抜いた。

 そして、西方の使者の手には、血のついた長剣が握られていた。


 ニーは、ジリジリと間合いを詰めていった。

(この威圧感。尋常じゃないな)

「フッ」

 冷や汗をかくニーに対して、西方の使者は不敵に笑った。

 そして、血のついた長剣を横に振り、血の雫を飛ばしてきた。


 ニーはとっさに左の手のひらで防いだ。

 そのせいで、ニーの視界が遮られてしまい、西方の使者の姿を見失った。

「眼のいいヤツほど、引っかかる」

「しまっ……」

 ニーの一瞬の隙をついて、西方の使者は一気に間合いを詰めて、ニーを両断するために斬りかかった。


 ギィィーン!


 ニーが慌てて左手をどかすと、そこにはホムラが大鎌で、西方の使者の長剣を抑えている姿があった。


「その大鎌、『暗夜の灯火』にいた嬢ちゃんか!?」

「ここはいいから、あなたは北門に向かって!」

 ホムラは背中越しに、ニーに言った。


「しかし、女の子1人に任せるわけにも……」

「私には私の、あなたにはあなたのやるべき事がある。早く北門へ!」

「あ、あぁ。分かった。気をつけろよ」



「妙な仮面つけてるから気づくのが遅れたが、貴様、『天使』だな」

「あら、そういうあなたは『堕天使』かしら?」

「ぐっ!つけ上がるな!!」


 キィーン!


 西方の使者は、力任せに長剣を振りきった。



 ニー’s ビューポイント――――


 タッタッタッ


「しかし、あの嬢ちゃん。妙な事を言ってたな。北門で俺のやるべき事ってなんだ?」

 ニーは、ホムラの言っていた事が何なのか、分からないままだったが、ひとまず北門に向かってメイン通りを走っていた。



 脇道からメイン通りに合流する交差点では、その脇道を走ってくる人影が見えた。

(俺と同じように北門へ行くように言われた討伐者か?)

 ニーはそんな事を考えながら、反射的にその人影を見た。


「あっ!お前は!!」

 ニーの目に映ったのは、キツネの仮面を被ったリージョの姿だった。


「よりによって……。緊急事態じゃなかったら、ここで叩きのめしてるとこだぜ」

 リージョが舌打ちをしながら、ニーに言った。

「よく言うぜ。叩きのめされたのは、お前の方なのにな」

「今やれば、俺が勝つ!」

「やんのか!?」

「やらん!緊急事態って言ったのを聞いてなかったのかよ!」

 意外とリージョは冷静だった。


「なんだよ、緊急事態って?」

「お前、それも知らないで北門に向かってるのか!?」

「あぁ。知り合いの嬢ちゃんに『北門に行って』って言われたからな」

(誰に言われたんだ?シェリーの事か?)

 リージョは、そんな事を考えながらも話を続けた。


「ま、いっか。討伐者たちに指示を出してるのはお前なんだよな?」

「俺だけじゃないが、最終決定は俺がしてる」

「西門に人を集めてるようだが、北門が手薄なのは何故だ?」

「ゴブリンやリザードマンなどの魔獣が、西門に多く来ているからだ」

「俺たちフォックスの情報だと、北門にも魔獣が来るぜ」

「少数のオークくらいだと思うが……。オークロードもいるのか!?」


 リージョは人差し指をチッチッチッと横に振った。

「その上だよ」

「……。っ!まさか!!」

「あぁ、オークの王とも言われているオーカスだ。少数の討伐者たちじゃ防ぎきれない……ぜ……」

 リージョは、ニーを見て少し怯んだ。

 オーカスと聞いて、ニーの目つきが変わっていたのだった。

「違うオーカスだが、この手で仇が討てる……」

(そういえば、親の仇だって話だったな)



「だけど、援軍はここまでだぜ。フォックスからも俺だけで、あとは西門を守ってる」

「フッ、俺一人でも充分だ」

「おぅおぅ。いつにも増して強気だこと」

 そんな話をしている間に、2人は北門に辿り着いた。



「首尾はどうだ?」

「あ、ニーさん!って、フォックスも!?」

 北門を守っていた討伐者は、意外な組み合わせにビックリしたようだ。


「で、どうなんだ?」

 リージョが再度聞いた。

「あ、あぁ。少数のオークが攻めてきてるくらいだ。これくらいなら、俺たちだけで何とかなるさ」

「今から大物が来る。気をつけろ」

 リージョはそう言うと、二、三歩前に出て周囲を見渡した。


「お前たちは、今まで通りオークに専念してくれ。リーダー格がきたら、俺とそこのフォックスのヤツで相手をするから」

「は、はい!」

 討伐者は返事をすると、陣形に戻っていった。


 ニーも前に出てきて、リージョと肩を並べた。

 それに気づいたリージョが、ニーに話しかけた。

「どうだ?ヤツの気配を感じるか?」

「いや、まだ気配はない。むしろ、静か過ぎて不気味だな。それから、ヤツのスピードは、他のオークと比べ物にならない。気配を感じ取ったら、すぐ来ると思え」

「あぁ、分かった」

 こうして、アーリエス北門では、リージョとニーとの共同戦線が張られた。



 ロンド’s ビューポイント――――


 トレルがロンドの病院内に呼び出されていた。

「で、俺は何をすればいい?解毒薬なんて作れないぞ」

「調合は僕がやります。トレルさんには、素材の収集をお願いしたいです」

「それなら任せておけ。何が必要なんだ?」

「必要な素材をリストアップしてありますので、集めてきてください」

 ロンドはそう言うと、素材の名前や収集できる場所などが書かれたリストをトレルに手渡した。

「こんな魚もいるんだな。初めて見るぜ」

「それは、海藻です……」

「あっ……。スマン」

 相変わらず、イラストは合っているのか分からない絵だった。

 一抹の不安を覚えながら、トレルはロンドの病院を出ていった。



 トレル’s ビューポイント――――


 ひとしきり海を漁って、トレルが海からあがってきた。

 ロンドに頼まれて、解毒薬の素材を集めるために海に潜って海藻を採取してきたようだ。

「ん~。見方によってはイラスト通りとも言えなくもないのかな??」

 やはり、ロンドのイラストは個性的なようだ。


【読者の方々へ】


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