第101話 リザードマンの襲撃
シェリー’s ビューポイント――――
「今日、泊まる所ってどんな所なの?」
作ったばっかりのサンドウィッチを早速ほおばりながら、シェリーが聞いてきた。
「どんな所だろうな。誰も行った事ないから分からないな。でも、野宿じゃない事は確かだぜ」
リージョがスープを作りながら返事をした。
「このまま順調に行ければだけどな」
「また、そういう嫌な事を言う」
しれっとしているロイに対して、シェリーが嫌な顔をして言った。
「まぁでも、ロイの言う事ももっともだな。宿までは、川を1つ越えないといけないから、まだ何が起こるか分からないしな」
「イグナスまで……」
ちょっと不安になるシェリーだった。
昼食を終えて、再びコピスに向けて歩き出したリージョたち。
先程、ゴブリンの襲撃があったため、周囲を警戒しながら進んでいったが、何事もなく前方に川とそれを渡るための橋が見えてきた。
日はもう傾いていた。
「ほら、順調にきたじゃん。あの川を越えたら宿なんでしょ?」
「そういう事は言わない方がいいぜ。フラグが立っちゃうじゃん」
リージョがシェリーに注意した。
「話をしてるそばから、すぐだぜ」
ロイが前方を指差した。
その方向を見ると、リザードマンが川辺から上がってきていた。
「今度はリザードマンか」
「前にリザードマンと戦った時も日没間近だったね」
「嫌な事を思い出させるなよ」
リージョと話していて、以前に目の前で門を閉められた事を思い出して、憂鬱になるイグナスだった。
「そんな呑気に構えてないでよ!私のニードルじゃ、リザードマンには刺さらないのよ!」
思い出話をしている2人を見て、焦るシェリー。
「確かにあの鱗は、厄介だな」
ロイがそう言ったが、その口調に慌てている感じはなかった。
「しょうがない。異界の力を使うか」
そう言って、イグナスは一歩前に出た。
リージョとロイは、任せたと言わんばかりに腕組みをしている。
「あ、そういう事ね。だから、余裕綽々だったんだ」
3人の態度にシェリーが反応した。
「まぁな。でも異界の力は、とっておきだ。多用はできないし」
「でも、あの数のリザードマンだったら、イグナスだけで充分だろ?」
「多分、大丈夫だけど、全く手伝わないつもりかよ」
リザードマンは、昼間に戦ったゴブリンよりは強い魔獣だが、十に満たない数だったため、ロイがイグナスに余裕だろいった感じで言った。
シェリーが呆気にとられていた。
そんな会話をしている間にも、リザードマンがどんどん近づいてきている。
「ほら、結構近くまで来ちゃってるぜ!?」
「分かったよ」
急かされたイグナスは、ため息をつきながら、異界の生物を呼んだ。
『来い!サンダーバード!』
バチバチバチ。
イグナスの体にサンダーバードの力が宿った。
「それじゃ、ちゃちゃっと片付けてくる」
サンダーバードの力を纏ったイグナスは、リザードマンたちに向かってダッシュしていった。
ブン! ブン! ブォン!!
「ギャッ!」
「ギェェ!」
加速している分、攻撃も威力が増していて、イグナスはリザードマンの群れの中で無双していた。
「おぉ~。派手に暴れてるなぁ。オーディンは使わないで倒しきるつもりなのかな?」
「黒幕の手の者がどこかで見てるかもしれないからじゃねぇか?」
イグナスの無双っぷりを見ながら、しゃべるリージョにロイが答えた。
「ゴブリンやリザードマンの襲撃が、そいつらの仕業って事か?」
「あぁ。1回だけならまだしも、整備された街道を移動していて、1日に2回も襲われるってのは、ちょっと考えにくい」
ロイの言う事は、もっともな事だった。
この世界の街道に使われている石畳には、魔獣が苦手とする成分が含まれているからである。
ちなみに、現在、そのように整備されている街道は、コピス~サジッタ間と、ここコピス~アーリエス間の2ルートだけであった。
これは、魔獣が苦手とする成分の精製がコピスで行われている事に関係していた。
「その黒幕がコピスにいるという事?」
「かもしれないが、それを確認するための潜入だ」
シェリーの疑問に対して、ロイは答えた。
3人がそんな話をしている間に、イグナスがリザードマンを全て倒して戻ってきた。
「お前ら。援護する気、全くなかっただろう」
「俺は最初の方、少し見てたぜ」
「……。弁解になってないな」
慌てて弁解するリージョだったが、墓穴を掘ったようだ。
そんな事もありながら、リザードマンを撃退したリージョたち(?)は、橋を渡って宿屋を目指していった。
川を越えて暫く歩いていると、明るい光の灯った建物が見えてきた。
「ねぇねぇ。今日、泊まる宿ってあれ?」
「多分、そうだろうな」
「よかったぁ。野宿になるんじゃないかと思った」
シェリーがそう心配するように、時刻は日没を迎えていた。
「4人だが、宿は空いてるか?」
「え!?空いてるか?空いてなかったらどうするの!?」
宿屋の主人と話しているイグナスの言葉に、後ろにいたシェリーは目を丸くした。
「そりゃ、野宿だよ」
驚いているシェリーに、リージョがさらりと答えた。
「大丈夫ですよ~。今のところお客さんは1人だけなんで」
慌てふためいているシェリーが見えたのか、宿屋の主人が大きな声で宿の状況を説明した。
「女性もいるようなので、お部屋は2つがいいですかね?」
「あぁ。それで頼む」
宿屋の主人の提案にイグナスが頷いた。
こうして、ゴブリンやリザードマンからの襲撃があったが、無事、宿にありつけた潜入チームだった。
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