第100話 リーナスたちの援護
ホムラ’s ビューポイント――――
リーナスたち防衛チームは、人知れず西門から出て、その先にある森に身を潜めていた。
そして、振り返って森の中から西門付近を覗いてみた。
「討伐者でごった返しているわね」
西門付近だけではなく、西側の街壁の外側を討伐者たちがワラワラと武器を持って歩いている。
「これだけいれば、よっぽどの数で攻めてこない限り、易々と陥落はしないだろう。このままもう少しコピス方面へ行こう」
リーナスはそう言うと、トレルとホムラを連れて森の中を西へと進んでいった。
「ゴフゴブ」
「フゴー」
リーナスたちが西へ移動していくと、魔獣の群れが森を南下しているのに遭遇した。
リーナスたちは、近くの木の影に隠れて様子を見た。
「なんだ?このゴブリンの数は」
トレルが驚いて言った。
「見て。群れの中央には大きなゴブリンもいるわよ。強いのかしら」
「あれはホブゴブリンだな。ゴブリンのリーダーみたいなもんだ。しかし、どこに向かってるんだ?」
リーナスはそう言うと、ゴブリンの群れの行き先に目を向けた。
「あいつら、まだこんな所にいたのか」
リーナスの見た先には、リージョたちがいた。
「えっと、ホムラ……さん?」
「ホムラでいいわ。で、何?」
リーナスは、ホムラの冷淡な物言いにややたじろぎながらもゴブリンたちの行く先を指した。
「あいつらの援護をしてやりたいんだが、戦闘はできるか?できなけれ……ば……」
リーナスの言葉が終わるのを待たずに、ホムラは大鎌をシュパッと取り出した。
「大丈夫。戦えるわ」
「そ、そうみたいだな。それじゃ、ゴブリンの群れの後続を倒していこう」
こうして、リーナスたちのゴブリン戦が始まった。
3人は、それぞれの武器を手に、木から飛び出してゴブリンたちに斬りかかった。
ズバッ! ズシャ! グシャッ!
虚をつかれた3体のゴブリンは、あっという間に絶命した。
「フゴー!!」
「フゴフゴ-!」
その後、3人に気づいたゴブリンたちが棍棒を振り回して突撃してきたが、リーナスとホムラの強さには及ばず、瞬く間に斬り伏せられていった。
「あれ?俺、いらないんじゃ……」
トレルは、そうぼやきながらも、彼なりに戦っていった。
「ゴアァー!!」
順調にゴブリンの数を減らしていく2人の前に、ホブゴブリンよりも大きく筋肉質なゴブリンが現れた。
「ほぅ、珍しいな。ゴブリンロードか。こいつがいるなら、ゴブリンが50体ほどいるのも頷ける」
「強いの?」
「あの筋肉が硬くて、刃がなかなか通らないんだ」
「そう」
ホムラはそう言うが早いか、ゴブリンロードに向かってダッシュしていった。
そして、その勢いのままで、ゴブリンロードの左足目掛けて大鎌を思いっきり振った。
ザクッ!
大鎌の刃が多少、ゴブリンロードの左足に食い込んだが、切断には至らなかった。
スンッ
(何?この臭い)
ホムラは、ゴブリンロードから異様な臭いを感じた。
「下がれ!!」
「っ!!」
リーナスの声が響くと同時に、ホムラの頭上に大きな棍棒が迫ってきた。
ドン!!
ホムラはすんでのところで攻撃をかわし、リーナスの所まで戻ってきた。
「危なかったぞ。らしくないな、どうかしたのか?」
「ゴブリンロードから変な臭いがした」
「変な臭い?」
「えぇ。人工的な臭いとでもいうのかしら。少し嗅いだだけなのに、頭がクラクラするわ」
「作られた臭いか。気にはなるが、まずは倒さないとだな」
そう話している間に、ゴブリンロードが迫ってきた。
リーナスたちは、ゴブリンロードの方へ向き直って、武器を構えた。
「アーリエスヘノ進軍ヲ邪魔スルナ」
「何?アーリエスへの進軍が目的なのか」
「ソウ命ジラレテイル」
「誰に命令されたんだ?」
「ソレハ言エナイ」
ゴブリンロードは、そう言い終えると同時に、大きな棍棒を横に振ってきた。
ガギィーン!
トレルが大鉈で棍棒を受け止めたが、勢いに押されて横に飛ばされていった。
「トレル!だが、大振りの直後は隙だらけになる。ホムラ!!」
「分かってるわ」
リーナスが叫んだ時には、すでにホムラはゴブリンロードに向かって走っていた。
そして、棍棒を持っている右手首を狙って大鎌を振り下ろそうとしていた。
ザクッ!
「やっぱり斬れないか」
「おあぁー!!」
ホムラが一度止まった大鎌に、更に力を入れた。
ザシュッ!!
「ゴアァー!!」
ホムラがゴブリンロードの右手首を切り落とした。
と同時に、大きな棍棒が地に落ちた。
「ゴブリンロードの腕を斬り落とすとはな。けど、おいしいところはもらっていくぜ!」
そう言うと、上段に構えていたリーナスの剣が炎をまとい始めた。
『行けっ!ケルベロス!!』
振り下ろされたリーナスの剣から、3つの火球が螺旋を描きながらゴブリンロードに向かって飛んでいった。
ドドドッ!
「ゴガァー!!」
リーナスの放ったケルベロスの直撃を受けたゴブリンロードは、全身を炎に包まれていった。
ゴブリンロードが倒れ、統率を失ったゴブリンたちは散り散りに逃げていった。
「向こうも終わったようだな」
ホムラがリーナスの見ている方向を見ると、ゴブリンたちが森の中に逃げ込んでいっていた。
「ゴブリンたち、殲滅するの?」
「いや、その必要はない。統率のとれていないゴブリンに大した脅威はないからな」
そう言うと、リーナスは剣をしまった。
こうして、リージョたちへの援護射撃は静かに幕を閉じたのであった。
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