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怪盗団フォックスの暗躍  作者: くろの那由多
第1章 アーリエス近郊にて
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第001話 プロローグ

基本的に毎週月曜日の昼に掲載していきたいと思います。

末永く、宜しくお願い致します。

 俺の名は、リージョ・ローン。

 俺は、このアーリエスという大きくはないがそれなりに発展している街に住んでいる。

 この街は、ほぼ正方形の街壁に囲まれていて、東西南北それぞれに門がある。


 俺の職業は、表向きは『暗夜あんや灯火ともしび』という居酒屋のウェイターだ。

 大きな声じゃ言えないが、裏では泥棒稼業をしている。

 ちなみに、その居酒屋のマスターが俺たち怪盗団フォックスのリーダーでもあるクリス・カールマンだ。


 今日も裏の方の仕事が入ったみたいだから、今こうして『暗夜の灯火』に向かっている。

 まぁ、表でも裏でも向かう所は一緒なのは置いておこう。



 『暗夜の灯火』に着くまでの間に、この世界の事を簡単に説明しておこう。


 遠い昔、俺たちの先祖は四足歩行だったらしい。

 その四足歩行のケモノタイプからヒトタイプと呼ばれる二足歩行へと、みんなが神と呼ぶ種族が変えたという。

 神と呼ばれている種族もまた二足歩行だったため、俺たちをそう変えたのだというのが小さい頃から聞いている言い伝えだ。

 そして、二足歩行になった事により道具を使うようになり、道具を使う事により知能が発達し、文明を築いていった。

 その結果、今のような街などの集落があるらしい。


 俺は、そんな言い伝えも特に気に掛ける事なく日々を過ごしている。

 実際、ケモノタイプというものも見た事がないから、神という存在も怪しい気がしている。

 それに、そんな事を考えている余裕もない。

 日々の生活をしていくだけで必死なのだ。

 哲学者や研究者みたいな者たちがいろいろ調べているようだし、調べたい者が調べればいい。

 最近の俺は、特に裏稼業の方が忙しいのだ。



 俺の裏稼業についても少しだけ説明しておこう。


 俺たちフォックスは、他の泥棒たちとは違い、ただ盗むだけではない。

 居酒屋の方に依頼がきて、マスターであるカールマンがその依頼を受けるかどうかを判断し、問題がないなら実行という感じで進めていっている。

 というのも、フォックスは基本的に法で裁かれないようなヤツらを獲物にしているからだ。


 そもそも一般人は、何か困った事があれば泥棒などに頼らず警察に行くだろう。

 だが、警察も組織の団体だ。

 上層部から圧力がかかったり、公にされては困るような場合など様々な理由で警察に行っても取り扱ってくれないケースがあるようだ。

 そんな誰も頼る所がなくなった人たちがフォックスに相談を持ってくるのだ。

 格好良くいえば義賊だ。

 もっとも、本質は泥棒だから、依頼がなくても盗みを働くことは時々ある。

 俺たちにも生活があるからな。

 真面目に働けって?

 それができてたら、泥棒なんてやってないさ。



「待てぇ!泥棒!!」

 俺がアーリエスの大通りに出たあたりで、大声がした。

 習性というものは、怖ろしいものだ。

 一瞬、ビクッとしてしまう。


 あたりを見渡すと、パン屋から少年がパンを1つ手に持って飛び出してきていた。

 その後を追って店主らしき男性が走ってきている。

 どうやら俺の事ではなく、その子の事らしい。


 通りには、それなりに人がいるのだが、少年は上手く避けながら逃げていっている。

 しかし、店主もなかなか早いもので、少年との差が縮まってきている。

 少年が狭い路地へ逃げ込もうとしたその時、店主が少年の右肩をがっしりと掴んだ。

「あっ!」

 少年が右手に持っていたパンが転がり落ちた。

「あっ!じゃねぇ!!二度と悪さできないように腕の骨を折ってやる!」

 そう言って、店主が少年の腕の骨を折るように身構えた。

「まぁまぁ、落ち着いて」

 俺は、2人の間に割って入っていった。

「なんだよ。あんたには関係ないだろ」

「まぁ、そう言わずに。善悪の見境がつかない子供のした事に目くじら立てなくてもいいじゃないですか。それに……あっちはいいんですか?」

 俺が指差した方向には店主のパン屋があり、そこから紙袋にパンをいっぱい入れた男が走り去っている。

「ちょっと、あんた!待ってぇ!」

 今度は店主の妻らしき女性が、後を追って店を出てきた。

「おいおい、またかよ!お前、逃げずにここで待ってろよ!」

 紙袋を持った男が店の向こうに走り去っているので、店主は猛ダッシュで追いかけていった。


(この店主、明日は筋肉痛だな)

 俺はそう思いつつ、落ちたパンを拾い上げて少年に渡そうとした。

「ほら、今度は捕まるなよ」

 少年は、ムッとした顔をしてパンを受け取った。

「別に礼なんか言わないからな」

「礼なんかいらないさ。その代わり、お前が今度困っている人を見かけたら助けてやれ」

 俺はそう言うと、『暗夜の灯火』のある方向に向かっていった。



 暫くすると、俺の隣にパンが入っている紙袋を持った背の高い男が現れた。

「どうだ。上手くいったか?」

「あぁ、イグナス。ありがとっ」

「いいって事よ。まったく厄介事に首をつっこみたくなるヤツだな。んじゃ、行こうか」

 この男、イグナス・ダートンも俺と同じフォックスのメンバーで今から『暗夜の灯火』へ向かうところだった。



 パン屋の店主’s ビューポイント――――


「くそっ、見失っちまったぜ。1日に2回も連続で盗まれるとはな。で、どんだけ盗られたんだ?」

 店に戻ってきた店主は、息を整えながら妻に聞いた。

「えっ?盗られたんじゃなくて、お釣りを持っていかなかったんだよ。それがさ、最初に盗られた分の金額とちょうど同じだったんだけど偶然だよね」

「えっ!?……」

 店主は狐につままれたような顔をした。

 しかし、とりあえず損はしてないからいいのかと、一人で納得したようだった。


【読者の方々へ】


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ぜひ、宜しくお願い致します。

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