表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かなえバシ(旧作)  作者: 結芽月
EP01エピローグ
31/31

エピローグ[失ったものの奪還]

「さてさて。いいデータがとれた。キカカカ!これからももっと研究できるぞ!」

「嬉シソウデスネ、ますたぁ」

「そりゃぁ、な?こんなデータ、そんなにとれないしな?あいつらには感謝、感謝だな。キカカカ!!」

 ルーネィはどこかの[国際都市]にある喫茶店で、笑顔で首をねじ切りながらそう言う。

 そしてその手で、[地球の断片]に関する今回のことで取れたデータ、その全てがはいったチップを弄んでいた。

「呂廠たちへの入れ知恵とかは、特に楽しかったな!キカカカ!」

 ルーネィは、今回のことに関して、あらゆる点で関与していた。テラも呂廠も、ときわも、その他の()()全員が、そのデータ取りに利用されていただけだったのだ。

 誰もそれに、気づいてはいなかった。

「また、機会があったら、あったり取引するかもな?キカカカカ!」

 ルーネィとノーザリアは、研究と商売のために、またこういったことをするのかもしれないが、それは誰にも分からないことであった。

「さぁて?これでなにするかねぇ…」

 そう言って首を付けなおしたルーネィが、ニヤニヤしながらなんとなしにチップを軽く放り投げた時だった。


 バキンッ!


 銃弾が吐き出される音。空気を貫き、突き進む音。それらを感じさせる暇なく、最後の、チップが粉々に砕ける音が響いた。

「……」

 それを見たルーネィの目は点に。

「のぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?でぇぇ!でぇぇぇたぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 パニックになり、絶叫して頭を引きちぎっては投げようとするルーネィ。

「落チ着イテ居クダサイ、ますたぁ!」

 それを止めようと無表情のままで、しかし声には焦りがにじみ出ているノーザリア。

 彼女等が展開するそんなコントのような場に、女性は足を踏み入れた。

「待ってください」

「?」

 多少は落ち着いたルーネィがノーザリアと一緒に振りむく。

するとそこには、服がボロボロになり、明らかに落ちぶれた様子のアメジスタが立っていた。

 両手に持った銃を向けて。

「……フィラさんたちだったり、あの守銭奴たちのせいで散々ですよ。解雇されてこの様です。……ですが、あなたたちは見つけました。さぁ、神妙にお縄に付きなさい!」

「…キカカ、カカ!解雇されたんなら逮捕権も、武器を持つ権利もないだろ!お前は違法に銃を所持し、一般市民に発砲した犯罪者だぜぇ?…っていうかデータ返せ!」

「うるさいです!例え一切の権利が剥奪されようと!地の底まで落ちていこうとも!あなたを捕まえるんですからぁ!犯罪者を捕まえるんです!」

「そうかよ!いいからデータ返せぇ!」

「やかましい!もう心は折れません!アメジスタだけで、やってやりますよ!」

「手伝いがあってもしくじった奴が調子に乗るんじゃねぇよ!データどうしてくれるんだよぉ!」

 アメジスタは銃を乱射しながら、ルーネィを抱えて逃げるノーザリアを追うのであった。

 ときわは、どこかの病室で目を覚ました。

 随分清潔な部屋だ。開けた窓から吹いてくる優しい風がカーテンを、彼女の髪を揺らす。

「なのさ……?」

 状況がよく分からずに首を傾げる彼女。そこに部屋の入口の方から声がかかる。

「ときわ君。君はもう大丈夫だ。生身とはいかぬがな、生きながらえることができるようになったぞ。あの[星神]…いや、君の大切な友達に感謝するといい。彼女の適切な対応がなければ、君は身体改造をしたとしても、助からなかったんじゃ」

白衣にゴーグルを掛けた背の低い初老の男性(医者なのだろう)はそう言い、部屋の出口の方に行く。

「面会は構わないぞ。既に面会者は来ておる。無理にならない範囲で話しておいてかまわん」

 そう言ってするりと退室した彼と入れ違いに、小さな影が病室の扉を駆け抜けた。

「……ときわ!」

「なのさ?」

 どこから持ってきたのか、ときわの横たわるベッドの横に三脚を流れるような動作で起き、テラはそこに座った。首には[封御の輪]はがついている。

「ときわ!」

 テラは目じりに涙を浮かべながらときわの手を握った。

「…ときわ!ときわ!ときわ!」

「…テラ」

 ときわはテラの手を握り返す。

「また一緒にすごせる……過ごせる…うぅ」

 テラは我慢しきれなくなったのか、ときわに抱き着いて泣き始めた。ずっと、ずっとだ。その鳴き声はあまりに大きく、他の病室の担当医から注意が来るほどだった。

 しかし、それほどテラのため込んでいた気持ちは大きかったことになる。大切なときわに生きていてほしい、また一緒に過ごしたいと、そう望む気持ちが。

 それは、今もっとも近くにいる彼女にはすぐに分かった。

「………」

 彼女は慣れていない一部が機械の体をどうにか動かし、テラを抱きしめる。

「……ごめん、なのさ……」

 二人の額が触れた。

「…ありがとう。これからも、ずっと一緒にいようね…なのさ」

 優しい風が二人を包んでいた。

「…よかったな」

「うん」

 テラとときわの様子を、フィラと神威は病室の入口から覗いていた。…まぁそのせいでテラの鳴き声が拡散されやすくなり、注意を受けることになったのだが。

「………さて。どうしよう……」

 フィラは脂汗を浮かべながら言う。

 今回の事件、ルーネィがアメジスタによって捕まえられたことで全容が解明され、誤解が解けている。フィラ達が捕まる理由になったことも今回はノーカウントとされた。

 黒幕であったルーネィの存在を知り、フィラは怒りが湧かないわけではなかったが、ルーネィが今回の事件の責任で終身刑に処されたのだから、これ以上何か言う事でもなかった。

 ただし、ただしである。

 今回の事で、フィラがどうやっても言い逃れできないことがある。

 それは。

「…窃盗……」

 あの艦で機体を奪ったことだ。幾らテラの手伝いのためとはいえ、それを言う事もなく奪い、[地球の断片]の残骸となった[星入界塔]に放置してきたのである。さらに機体はフルールから機体を奪う際に小破している。よって器物損壊も追加である。

 彼女が手伝いの組織に所属していることやテラと言う[星神]の言葉などがあれば多少は現在されるかもしれないが、無罪はさすがに無理な気がする。

 所詮、何処までいっても犯罪は犯罪なのだから。

「テラ姉ちゃん……」

 今フィラがここにいるのは、温情でテラの様子を見に来ることが出来ているというだけで、これから裁判が待っているのだ。

 それを証明するかのように、廊下にはフィラを見張っている者がいる。

「神威……」

 彼女は避けられない嫌な現実にため息をつきながら言う。

 そこに彼は、

「おつとめ、がんばってきてくれ」

 無情な一言。

「まだ懲役刑と決まってないからね!?…いやそう言う問題じゃなかった…!」

 そして。

「被告人を有罪とする。罪は罰金刑」

 やはり、いかなる理由があっても物を盗るのはいけないことのようだった。

「……すみません」

 唯一の救いは、テラの言葉であの[星神]を信奉する[竜]の男を抑え、組織からの除名だけは防げたことか。

「…まぁ、テラの手伝い、できたからいいかな」

 フィラに後悔はなかった。

 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ