第三章[真実の中の真実]1
「…?通信?」
とある[無名の断片]の空中。
「……えぇ。けど、面倒くさい。アメジスタさんや、よろ」
「………オペレーターさんが仕事しなくてどうするんですか」
「………だるいんですよ。補給時期まで延々と危険な地上を彷徨い、犯罪者を捕まえるなんて。懸賞金までかかったルーネィは一向に見つからないし……」
「……それが仕事なんですから。高給取りでしょう?」
「………ストレスが尋常じゃなぇですよ。正直、今の…六十倍は欲しいですよーだ」
「今、絶対ただの欲望入れましたよね」
アメジスタがいるのは、[星法平星機関]の所有する空中艦である。何種かあるうち、速力に秀でた艦種で、武装もそれなりに搭載している。
主な任務は先に出た言葉通り、犯罪者の捕縛である。
そんな彼女等は地上での移動が許可されており、[星法平正機関]などの国際組織の者に武器の携帯が許されているのと同じである。
ちなみに、フィラの所属する[星進志機関]も、一応国際組織である。
「ちゃんとしてください。地上を見て。アメジスタ達よりも危険な、怪物狩りをしている方たちもいるんですよ。……決まりのせいで、残念ながら、お手伝いできませんけど」
艦橋にいるアメジスタは、設置された巨大な画面に映る、地球で言うところの蜘蛛のような機体に乗り、大量発生した虫系統の怪物を狩る者たちを、ゴツゴツとした指で指す。
彼らは、[星の断片]をどこまでも版図を広げようとする怪物の脅威から守る者たちで、[無名の断片]内で増えすぎたそれらの数を、定期的に減らしている。
「……知らねぇ。むこうはむこう。知ったこっちゃない」
「そうだそうだ!俺らより高給取りなんて許さねぇ!」
「……っていうか我らの給料増やしてほしいのです。のです」
「はぁ…………。なんて冷たい部下たちなんでしょうか………」
アメジスタはため息をつきながら、各々の席で好き勝手している部下(どこかに行かない分、多少はやる気はあるのだろう)を一旦放置し、オペレーターをどかし、彼の目の前のコンソールパネルを動かし、通信に応答する。
「……はい。こちらは………」
『キカカカカ!どうも。真面目にご苦労さん』
「………。総員、賞金首です。捕まえたら臨時ボーナスがたっぷりもらえますよ」
アメジスタは沈黙の後、即座に言い放つ。
『金か?』
今まで不真面目さしか感じなかった部下たちが急に真面目な雰囲気を放ち始める。
(なんて単純な…………)
呆れるアメジスタ。
『………気が早い、気が早い。ちょっと通報をしに来たんだよ』
「……通報される側がする方に回る?どうしたんですか、頭でも外れましたか」
『そりゃよくねじ切ってるから、外れはするがな』
「……そういえばなんでねじ切る必要性が……」
『奇行こそ個性!そういうことだろ?キカカカカ!』
「はぁ……?それで、なんですか。逆探知は遠慮なくさせてもらいますし、捕まえには行きますが、その通報の内容ぐらいは聞きますよ」
『そこは真面目でいいねぇ。前そっちに掴まった突っ走り下級幹部の言ってた通りだよ』
「………あれ、やっぱりあなたの商会の……まぁそれはとにかく。それで?」
『……侵略者だ。それとそれに加担する侵入者』
「ジャミングがかかっていて正確な位置までは分かりませんでしたが……おおよそは分かりました」
分析官が報告を行い、
「……よし。そこへ舵を取ってください」
それを受けたアメジスタは操舵手に指示を出す。
「……それで?その侵略者と言うのは?」
『[封御の輪]を破壊した[星神]だ。今は自分のではない[星の断片]で、そこの[星神]とやり合っている。座標は、そっちが今言ってたところだぜ?よければ、捕まえてくれや。キカカカカ!』
「………怪しいですね。何故、そんなことを?」
『……ふっ。そろそろ善に目覚めたのさ。なーんてな!キカカカ!』
「………もういいです」
その後ロクな会話が出来そうにないように感じたアメジスタは通信を切った。
「……しかし、[星神]が…。相当に怪しいですが、もし本当なら取り締まらなければ」
彼女の乗る艦には、[封御の輪]なども、物資として保有はしているが、それを易々と[星神]がつけさせてくれるとも思えない。
「被害は覚悟しなければなりませんが……」
アメジスタは部下たちを見る。
『金だ…我らは金のため金のため………あの犯罪者を……!』
「………。この守銭奴たちは…。前に病院送りになったのが、とどめだったのでしょうか……より一層お金にがめつくなって……」