第二章[穴埋めの日常]13
全てが消える。
みんながなくなり、町は消え、思いでの世界は砕け散り、全てが消滅する。
破壊が迫ってくるなか、私達は私が住む場所に辿り着く。
そこにある、ほぼ完成している飛行機体を使えば、迫る脅威から逃げることが出来るかもしれなかった。
けれど、そのコックピットは、最終調整のための装置が複雑に接続されており、私達両方が乗れるほどのスペースはなかった。
だから。
「……あっ!?…どうして、なのさ!」
「私にとって大事だからよ」
私は友達を、その機体に乗せる。
「…分かってよ。これ以上、いなくなって欲しく、無いの……」
「……分かったなのさ」
しばしの沈黙の後、承諾してくれた友達は、それに乗って姿を消した。
「……どうして、終わるのよ……」
私は迫る破壊の光を顔だけを後ろに動かして見、不満を漏らす。
いつの間にか涙が流れており、決して止まってはくれなった。
迫る破壊の光の中、私はすべてが消える光景をつい思い出してしまい、胸が苦しくなる。
そして、破壊が私を飲み込んだ。
「……あああああああああああああああああああああ!!」
激痛が全身を貫く。絶え間えない痛みと共に、体が背中から徐々に崩れていく。
痛くて、痛くて………でも、そのままいけば痛みから解放されると思って、身を任せた。
服が破れ、首輪が砕け、皮膚が泡立っていく中、はやく楽になりたいと強く、強く目を瞑る。
そして、ついには………、という時だった。
「……え?」
私はいつの間にか、友達が乗って去っていたはずの機体に乗っていた。
動き始める機体のある場所は上空で、閉じたコックピット内の画面の下の方を見れば、
「……、なんで」
去ったはずの友達が、地上の丘の麓で、笑顔で私に手を振っていた。
その後方には、破壊の光が迫ってきており、先ほど私がいたところから少しだけ離れた場所のようだった。
「……どうして!」
「……あなたなら分かっている。言葉の通りの思いで、その通りのこと、すると思った?」
彼女は表面上の態度と、その腹の内は全く違う。
私に従ってように見せて、騙して私を逃がしたのだ。
「……そん、な!待って、待ってぇぇぇぇぇぇぇ!」
私は機体を操作して友達の所へ行こうとする。
だが、友達によって自動操縦になった機体は、私の意思と関係なく、全速力でその場を去っていく。
友達を残して。
「あ、ああ………」
苦悶と苦痛の叫びが木霊する地獄が、この[星の断片]を包み込んだ。
だれもが最後には笑顔になれるはずもなく、苦悶の表情で光りに飲まれていった。
……もうどこにも、誰もいない。
「……みんな、笑っていたのに………」
無の世界に私は一人、残された。
友達が消える時の表情は、私の脳裏に焼き付いた。
「…………」
そして。空洞が、私の心に生まれた。空白が、ぽっかりとした穴が開いてしまって、私はそれから目を背けるように、嫌な記憶から逃げるように、そこから逃げた。
「……………」
その時、その[星神]は見たこともない形の武器らしきものを多数持って、襲い掛かってきた。笑って。………そう、笑っていたんだ。嬉しそうに。楽しそうに。
みんなは、大切なみんなは、いつまでも幸せに過ごしたい、過ごしてほしかったみんなは消えたのに、あれは………!あいつは、笑っていたんだ……!
「……全部、なくなっちゃったのに……」