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プロローグ

 十五歳の誕生日の日、俺はママとケーキを買いにケーキ屋に来ていた

 俺の一番好きなイチゴの乗ったケーキ

 それを二キレだけ買って家路につく

 俺はママと二人暮らしで父親はいない。数年前に事故であっさり死んでしまったからだ

 パパのことは好きだったし、当時何日も泣いていたのを覚えている

 優しくて頼りがいのあったパパ、俺をいつも可愛がってくれていたが、唯一言葉遣いだけは直せと口を酸っぱくして言われていた

 あの頃はよく治そうとしてたけど、今となってはこの言葉遣いはパパの形見だ

 何せパパと同じ話し方だからな

(れい)、帰るわよ」

「うん」

 ママに言われてケーキを出た。そのとたんだった

 急ブレーキの音が聞こえて

 俺とママは死んだ

 恐らく即死だったろう

 痛みすら覚えていないからな


 気づいたら俺はどこか見知らない場所で寝ていることが分かった

 この時はまだ死んだなんて思っていないから、急ブレーキが聞こえたことから事故で病院に運ばれたんだと思ってた。でも違っていたんだ

 体が動かないから事故の後遺症で動けないのだと思うと泣けてきた

 で、むせび泣こうとすると声がおかしかった

 まるで赤ん坊のような甲高い金切り声。そしてその声に呼び寄せられるようにして誰かが俺の顔を覗き込む

「まぁまぁ起きたのねレイ、おーヨシヨシ、いい子ね泣き止んで」

 この声、この顔、間違いなくママだ

 でもおかしい、何かがおかしいんだ

 俺は周りを見渡すと、そこは小さな家のようで綺麗に掃除がいきわたってることが分かる

 母さんに抱っこされたまま俺は移動する

 抱っこ?

 俺は増々不信に思って混乱しているとママが話しかけてきた

「混乱してるのねレイ。でも大丈夫、もう大丈夫よ。この十八年長かったわ。ようやくまたあなたに会えた」

「マァ、マァ」

 うまく話せないけどようやくそれだけ話せた

「ええそうよ、私の可愛いレイ」

 よく見るとママはなんだか若返っているように見える

 十八年待った? 俺が生まれるのをってことかな?

 俺はママの顔をじっと見つめる

 ママの目には涙が浮かんでいた

「う、うう、あの時トラックに轢かれたの。レイ、あなたを守ってあげれなくてごめんなさい」

 まだうまく話せないけど、俺はママを恨んだりなんてしない

 ママのおかげで幸せだった

 話せるようになったら真っ先にそれを伝えようと思うんだ

 

 俺を産んだばかりのママはまだ体調が万全じゃない

 そのため夫がいろいろと家のことなどをしてくれるんだけど、その夫、つまりパパも見覚えがあった。というかパパじゃん!

 俺の前世のパパに間違いない

 俺が言うのもなんだけどイケメンのパパで、昔見た顔のまんまなんだ

 ママも美人だし、美男美女の子供として生まれたって自負がある

「レイ、俺もママと同じくこの世界で生まれ変わったんだ。まさか別の世界で生まれ変われるどころかまたこうして家族が一緒になれるなんて思っても見なかったよ」

 パパだ。間違いなく

 どうやら俺たちは家族で別世界に転生してしまったようだ

 どういうことか分からないけど、とりあえず家族が再会できたことは喜ばしいことだ

 俺はママにしっかり甘えつつすくすくと育っていった


 そして六年後、六歳になった

 色々とママとパパを見ていて分かったことだけど、ママは冒険者という職業についているらしい

 パパの方はそれほど強くなかったため家で農作業をしている

 この世界には魔物がいて、それらが人間に危害を加えているらしい

 ママは冒険者としてそれらを倒すことを主な生業としている

 俺はママにそんな危険なことをしてほしくないとパパに言ったんだけど、心配ないとのこと

 どういうことなんだろう?

 パパは全く意に介してないみたいだし、聞いてもフフと笑うだけだ

 まあそれは今はさておいて、俺は教会に来ていた

 この国、エディラーン精霊国は六歳になった時精霊からの加護を受ける

 精霊とはこの世界の自然を守る存在で、エディラーンではその精霊達に寄り添った自然的な暮らしをしている

 そしてこの精霊から加護をもらう儀式、これはこの国のしきたりで、どんな加護をもらうかは六歳になった時教会でわかるらしい

 つまり俺は今日精霊に何かの加護をもらうってことだ

「では次、レイちゃん」

「はい!」

 俺の名前が呼ばれた

 席から立つと神父のおじいさんの前に立った

「うんうん、元気そうで何より。ではここの前に立って」

 おじいさんの横に虹色に輝く玉が置いてある

 それに手をかざすように言われた

 ゆっくりと手を玉の上にかざしてみると、弾が急に煌びやかに光った

 俺の前に儀式をした子供達は淡く光る程度だったのにだ

「こ、これは!」

 神父のおじいさんが驚いている

 一体何が起こってるんだ?

「すぐに国王をここへ! 十八年ぶりの加護です!」

 まわりがざわざわとし始め、俺は何が何だか分からないまま別の部屋へと連れていかれた

 そこには慌てた様子でやってきた国王様とお妃、そして第一第二王子と王族がそろい踏みだ

 何もわからないまま俺は席へと座らされ、すぐに神父様からの説明がなされた

「困惑しているかと思いますが、これは大変由々しき事態ですので落ち着いて聞いてくださいねレイちゃん」

「は、はい」

 神父様は呼吸を整えると王様に一礼して話し始めた

「この子は実に十八年ぶりの快挙で精霊神の加護を授かりました。まさか同じ時代に二人もの精霊神の加護を受けるとは・・・。なんにせよ国王様、この親子は非常に精霊に愛されております」

 ん?親子?

 確かにママもパパも精霊の加護はもってるけど、そう言えばどんな加護なのか聞いたことはなかった

 ママはしょっちゅう冒険者としての仕事で家にいないし、パパも特に気にしてる様子はなかったらなあ

「なんと、親子そろって精霊神の加護とは驚いた。マミヤにはあの時すでに心に決めた者がおったから第一王子との縁談はならなかったが、この子と第二王子なら・・・」

「王様、それはこの子の自由にさせて上げていただきたいのですが」

「む、すまないついな」

 まだまだ混乱が収まらない俺にゆっくりと順立って神父様は説明してくれる

 まず俺は精霊神という神様からの加護を授かったこと

 それと俺のママも実はその精霊神からの加護があること

 俺はママから十八年ぶりの快挙でその加護を授かったことと、ママは数百年ぶりにその加護を授かったことを説明された

 精霊に愛された家、それが俺に説明された全てだった

 ちなみに精霊神からの加護はこの世でも並ぶ者がないほどに優れていて、現にママは冒険者の最高峰と呼ばれるSランクの冒険者、らしい

 冒険者については教えてもらっていないからよく分からないな

 でもまあ悪いものじゃなく、凄い方に騒がれてたんだから全然悪い気はしない

 ちなみにママはあまりにも強すぎてファンすら俺の家に来てママに会うのを敬遠しているほどらしい

 うん、転生っていうのも驚いたけど、それが家族ごとでしかもとんでもない力を持ってしまったって言うのもさらに驚きだ

 はぁ、どうなっちまうんだろうね俺の第二の人生は

 というかもう気づいているかと思うが、俺の性別は女である。前世も今世もな

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