どうせみんなありふれる
馬鹿野郎! 何であんなテンプレ書いた、言え! 何でだ!
と、嘆く読者が多いのが、いわゆるテンプレ展開。テンプレ構成。
ああ、テンプレ、テンプレ、テンプレ。
どこかで見た展開。
どこかで見たセリフ。
どこかで見たストーリー。
どこかで見たキャラクター、構成、その他諸々。
とかくこの世はテンプレまみれ!
見ろよ、日本が誇るWeb小説投稿サイトの『小説家になろう』なんか、ランキングに乗るような作品なんてほぼ全部テンプレじゃねーか!
こいつはひでー!
右を見ても左を見ても、話がありふれてやがるぜー!
何が異世界転生だよ!
トラックに轢かれて死んで、その死が手違いだったって神様に謝られてチートもらって異世界に転生して、もらった知能デバフわずらった現地住民に対してもらったチート使ってちやほやされて、美女に囲まれてハーレム作るとかよー、見飽きてんだよー!
あー、テンプレテンプレ!
ホント、同じようなモンしかないわー!
何が追放ざまぁだよ!
仲間にあらぬ言いがかりで因縁つけられて罵倒されて追放されて、それから実は有能だった主人公が理解者を得て本格的に活躍して成り上がっていって、一方で主人公を追放した元仲間は見る見るうちに没落していって、サイコーにざまぁ! 今さら戻れと言われてももう遅いとかよー、見飽きてんだよー!
あー、テンプレテンプレ! これもテンプレ!
ホント、同じようなモンしかないわー! どこ見ても『もう遅い』まみれだわー!
何が悪役令嬢婚約破棄だよ!
ゲームの悪役令嬢に転生した主人公が最終的に婚約者から婚約破棄されて破滅するしかない絶望的人生を覆すために奮闘するとかいう異世界転生の亜種のクセに、最近じゃゲーム世界への転生要素なくなって純粋に悪役令嬢が婚約破棄されてから他のイケメンといい感じになったり、スローライフしたりする追放ざまぁの亜種になってるじゃねーか、テンプレから別のテンプレが派生する速度どーなってんだよ! あと見飽きてんだよー!
あー、テンプレテンプレ! これもテンプレ!
ホント、同じようなモンしかないわー! どこ見ても公爵令嬢まみれだわー!
もうさー、ホントにさー、同じことやるしか能がないの?
って言いたいワケよ、読者はさ。
何よ、なろうにはオリジナリティって言葉はないワケ?
ちょっとウケたテンプレがあったら、それをなぞるしかできないのかい?
うわー、はっずかし。
それって創作者って言っていいの? ただのパクリ野郎じゃね?
そんなんで書籍化して嬉しいの?
テンプレ使って、他人と同じような話書いて、それで書籍化とかさぁ……。
ホント呆れる。
何ていうかさ、参考にするなら他のもの参考にしなよ。
テンプレなんか使わないでさ、きちんとした話の組み立て方を勉強しろっての。
例えばさ、三幕構成って知ってる?
ハリウッドの名作映画でよく使われてる物語の基本構成のことなんだけどさ。
すごいよ、話の始まりから終わりまで、きちっと話が組み上がるからね。
序盤、中盤、終盤の三つに分けてさ、それぞれのパートの流れも計算されてるんだ。
これを勉強すれば、最低限、お話としての体裁は整えられるっていう優れモノさ。
わかるかい、ただなぞるだけのなろうとは違うんだよ。なろうとは。
だからね、物語の基礎を覚えたいならまずは三幕構成を学ぶのがいいと思うんだ。
だって、これを覚えれば誰でも、ちゃんとした構成の話ができるんだからな!
そう、誰にでも! ……ん? 誰にでも?
つまりテンプレやんけ。
いやいや、いやいやいやいや――。
ちょっと待ってくださいって。
そんなワケ、ないじゃないですか。
数多の名作に使われてきた三幕構成が、なろうテンプレと同じワケないですって。
そもそも考えてみればですよ、三幕構成は映画。映画の話なんですよ。
ほら、小説の話の組み立てには他にも色々とあるじゃないですか。
例えば、起承転結とか、序破急とか、ね?
そこを踏まえておけば話が成立する基本形。
誰でも、そこさえ覚えておけば物語を描くことはできるっていう――、
つまりテンプレだぁ――――!
くッ、これはどういうことだ。
話を話として成立させようとすると、必ずどこかにテンプレが必要になるとでも?
そんなバカな話があるか、それじゃあなろうと一緒じゃないか!
いや、そもそも何かを参考にしようというのが間違いだ。
それじゃあ、オリジナリティの欠如を自ら推し進めるようなものだ。
だったら最初から全て自分流に組み立てていけばいいだけだ。
ニーズなんか気にしちゃいけない。
流行に媚びるなんて、下劣なだけだ。創作者のやることじゃない。
そうだ、誰もやったことのない、空前絶後のオンリーワン作品を作ればいいんだ!
もしそれができたら、みんな驚くに違いない。
そして大々的にヒットして、みんなに認知されて、二次創作も増えたりして。
さらにはみんながそれに影響を受けて、リスペクトしてくれるんだ。
やがて、フォロワー作品が増えていき、一つのジャンルとして確立されるに至る。
つまりテンプレ化するってことだァァァァァァ――――!
何てこった。
オリジナリティを追及して成功しても、その先にあるのはテンプレだなんて!
そう、つまりはこれこそが結論。
実に普遍的な、不変の、しかし非常に恐るべき、無情なる結論なのである。
あなたがなろうテンプレを嫌おうが、憎もうが――、
目のかたきにしようが、バカにしようが、軽んじようが、忌避しようが、
自分の流儀を貫こうが、オリジナルを追求しようが、そんなことは関係なく――、
どうせみんなありふれる。