始まりが走り出す
「あー・・・どうも、ありがとうございます・・・?」
どったんばったん大騒ぎしている内に陽は傾き、夕暮れが近づいてくる。
されるがまま茶屋に連れてこられたアマリは、とりあえず礼を言うものかと思い、冒頭に至る。
「おっ、礼儀正しい子は嫌いじゃないよ。でもお礼はいいよ。可愛い女の子を助けられてボク大満足だからー」
チャクラがホクホクの顔で言い切る。
「かわっ・・・そんなことより、あなたも一位の賞品狙いですよね?」
わかりやすく当然のことを言って話を変える。が、
「んぇっ?賞品?」
わかってなさそうな声と顔が予想外。
「・・・あれっ、知りません?」
コクコクとうなずかれ、ホントに何しに来たんだろこの人・・・とため息をつく。
「えっと・・・このテストで一つのブロック、要するにサーバーで最後まで勝ち残った一名は、フルダイブへの適性が認められてここの社員として働ける上に部屋まで用意されるんです。」
「えぇ・・・初耳なんだけど・・・」
テスターに選ばれたときにいろいろ説明されたはずだが、何を聞いていたのだろうか。
「まぁ、でも、さっきの急に爆発させるやつがあればなんとかいい線いけるとおもいますよ。」
先程の戦闘を思い出しつつ話す。
「というか、あれ、どうやったんです?」
「爆弾メリケンで高速ジャブ」
すかさず返され、呆気にとられていると、チャクラが立ち上がり、
「そんなことより、つまり、一番強くなりゃお仕事もらえるんだろ?」
「えっ、今の説明を・・・」
完全にさっきの話は忘れられ、急に真面目くさった顔つきになった無職は、
「なぁ、手伝ってくれよ。ほら、助けたお礼だと思って」
「さっきはお礼はいいなんて言ってたのに・・・まぁ、助けられたのは事実ですから、お手伝いしますよ。」
文句は言いつつも、お礼はしないと、と思っていたので、承諾する。すると、子供のような笑顔で、瞳の奥に炎を燃やして、
「よし、決まり!ありがとな、・・・えーと、名前は・・・?」
締りのない、彼らしい始まりが走り出した。