8.桴改造
まあ、いいか。リクの事はペットとして扱おう。
しっかり、しつけしないとね(黒笑)
リクがせっかく用意してくれたので、屋根を作る事にする。
イメージはビニールハウスだけど、雨水が直接大樽に流れこむようにしたい。
曲げられた竹はL字形なので、桴のサイズにあわせてコの字形になるように、真ん中をロープで結んで、ニャンコシャークの歯を使って余分な所は切る。それを6組作った。
それを桴の隙間にさして針金で固定する。
樽側は低めに、反対側まで少しずつ高くなるように調整した。
次はレザーシートを広げて大きさを確認すると、横1.5メートル、長さ2.5メートル位のが4枚あった。
「風呂敷みたいにデカかったらしんどかったけど、これなら切らずにできそうかな」
レザーシートを1枚、縦10センチ間隔の蛇腹状に折ってから、樽側から上に被せ竹の上、下と交互に入れて反対側まで被せ、シワになった所を伸ばす。
とりあえず、端っこは樽の底に届く位に調整して、
それからぐらつきを抑える為に、曲げられていない竹をレザーシートと同様にL字形の角に交互にさしていく。
天井にあたる結び目の所にはL字形の竹を短い方を樽側に向けて、長い方を差し込んでいき、さらにロープで固定。この時に真ん中を凹ませて雨水の通り道を作る。
横にもレザーシートを張ろうと思ったけど、風であおられて桴ごと転覆は避けたいし…。
うーん、風の通り道を作って、開け閉め出来るようにしようか。
天井同様に蛇腹状に折ったレザーシートを交互に差し込んでから、等間隔に3本差し込んでロープで固定。
反対側も同様にやる。
これだけだとぐらつくので、針金を竹の両端に巻いて切る。
それを針金の端をU字にし、組んだ竹に引っ掛けたら海に沈めて桴の下に通す。
あとは交互に引っ掛けながら樽側の組んだ竹まで移動。組んだ竹を挟むようにして針金で固定。
ふう…。
あとは蛇腹状に折ったレザーシートを、少しずつ上にあげれば
風の通り道を調整できるよね?
残った材料は組んだ竹に緩く捻った針金で固定。これで流されないでしょ。
レザーシートが1枚残ってるので、今度は針金の釣り針を使って服を作ろう。
着替えは必要だよね。下着は無理そうだけど…特に下の部分は…。
今、ウチが着てるのは長Tシャツにハーフパンツ、タンクトップ、下着である。
だって寝てたしね…。
Tシャツ自体作る訳じゃなく、結ぶタイプのベストみたいなのと
ハーフパンツを作ろうと思う。
レザーだから通気性悪そうだもんね…。
少し短めのワンピースタイプの方が作るのが楽だけど、溺れた時の事を考えたら怖い。
泳げないからよけいに…。
Tシャツを脱いで、広げたレザーシートに、ニャンコシャークの歯を使って苦戦しながら切る。
見栄をはったサイズ…、少し大きめにね。
ロープは綿?っぽいから、適当な長さに切って繊維をほどく。
繊維状になったら刺繍糸位に束ね、針金釣り針にくくりつける。
少しずつ錐で穴をあけながら、クロスタッチで縫う。ハーフパンツも作って、出来上がる頃には辺りはオレンジ色に煌めいていた。
出来上がりは…、まあその場しのぎだからいいかって感じかな。
出来たばかりの服と残ったレザーシートを畳んで、中樽に入れて蓋をする。
あ、そうだ。期待は出来ないけど、ロープを等間隔で結び目を作って桴から海に沈めておこう。
貝系がくっついたら儲けもの位で。
はあ…。
ご飯…。
お腹空いた。
桴の下をそっと覗いてみるが魚はいない。
そりゃそうだよね。ついさっきまで桴改造してたんだもん。
ガタゴトしてたら逃げるよね、そりゃあ。
仕方ないので竿に針金をくくりつけて、ロープで作った疑似餌擬きと、針金釣り針を取り付けて海に放る。
時々、竿を動かしてみるがそう当たりなんて来ないよね。
ぼーっとしているのも無駄な気がするので、リクが何でウチを助けたのか考えてみる。
さっき加護を付けたと言っていた。
で、真贋さんとやらの説明だとリクに食事を与えないと弱るときた。
何でそんな自分が不利になるような事したんだろう?
ウチを死なせた罪滅ぼし…にしてはやり過ぎな気がしてならない。
それに助けたと言って、なんで海のど真ん中なの?
無駄に頑丈な浮島みたいな桴も気になるし…。
まあ、一番気になるのはリクの生態だけど!
そもそも、真贋とかスキルって何?
大体ウチってスキルとか、なんとか魔法とはなんぞや?な人間だよ?
ウチはゲームもあまりやってなかったし、漫画もあまり見てない。どういうものかは友人知人から聞いて知ってはいるし、時々貸されて読んだ事はある。
でも、ウチ基本興味あるものしかやらないタイプだし、本に至ってはミステリー系とか、トリビア系を主にみてたし。
そのおかげでこんな、櫓擬き作れたんだけどね。
大概は忙しくてみれなかった、プレイできなかったと言って返却。友人達もウチのヘビー生活を知っていたから仕方ないね~で笑って許してくれた。
ウチは、中学を卒業したあと定時制学校に進学した。
昼は働いて夜は学校。学校を卒業したら貯めたお金で専門学校に入学した。
月に1日だけ、平日に体を休ませる休息日を入れ、土日や連休は稼ぎ時なので、1日にバイトの掛け持ちを2つ3つ入れて。
成人式を迎えたらお水商売のバイトもした。
働きながら調理師資格を得て、更に介護の資格も取った。
母は内職系の仕事をしてたが、体が弱く、出来高性の賃金なんてたかが知れている。
6歳違いの弟を高校に行かせる為、母の負担を軽くする為。ウチは頑張ってきたのに。
ギリっと唇をかんだ。
血の味がする。
過ぎた事は戻らない。前に進むしかない。
それでも、心のモヤモヤは晴れる事はない。
なら、せめて母が産んでくれたこの命、大切にしよう。
まずは生き延びなきゃ。