7.加護
ドヤ顔のミイラはとりあえず放置だ。
リクが言ってた通り、針金とレザーシート、ロープ、それと錐が入っていた。
針金もロープもかなりの長さがある。錐は持ち手の所、揉錐が20センチくらい、尖った錐体の所が4センチ位かな。
レザーシートもかなり大きいんじゃんないかな…? 畳まれているけどその状態で、ウチの手のひらくらいの厚さがあるし…。
表面はツルツルしてるから防水も期待できそう。
よーし、やりますか。
中樽の蓋から3センチくらいの所に両脇に錐でふたつ穴をあける。
そこから針金を通して内側で捻る。
針金を切るニッパーとかないので、切る所を一点に絞って何度もグネグネ曲げると、金属疲労をおこして無事に切る事が出来た。
両手鍋みたいにすれば、持ち上げる時に楽だもんね。これは全部の樽にやろう。
特に大樽は重いので、芯になる針金にコイル状にしっかり巻き付けてからやる。最後に捻るのは力を使うので、クロスさせたあと竹の枝を挟んで、もう一度クロスさせて、竹の枝ごと捻れば力のないウチでも大丈夫!
次は、大樽に取っ手を付けた所から、下側と真ん中の金属で締めてある所に、中に貫通しないように錐で縦に穴をあける。金属に沿って針金を輪っか状にして捻ってから、縦穴に下に向けて通してクロスさせてから、下に開けた穴に同じように金属に沿って輪っかを作って捻る。
針金版たすき掛けをイメージしてくれた方がわかりやすいかもしれない。
両端に長さの違う2本の針金を出し、桴の組んである竹や木の形に沿って、上下に交差させて途中で折り返し桴の端で捻って切る。
これで大樽の固定完了。動かしてみると少しぐらぐらするけど、風や波で落ちなきゃいいという事で。
中樽、小樽も大樽の両脇に固定する。
「あー、指痛い。あ、血豆出来てる」
針金切るのに力入れすぎたかな。それにしても…
「何、してるの?」
さっきからちらほらと視界に映るリクの行動が気になる。
[え?お手伝い?]
リクの側には2センチ間隔で割られた、乾いた竹2メートル程10数本、節を利用した竹筒、縦半割りにした竹、お箸に使えそうな竹、竿に加工された竹数本、針金を加工した釣り針数個があった。
どっから出したその竹。
なんで乾いた竹あんの!
人が血豆作ってまで格闘してた時に、サクっと色んなもん作ってるし。
どうやって竹切った。
なんでその竹、カーブしてんの? 曲げる所、熱さないと竹、曲がらないでしょ。
切った所、鑢かけたみたいに滑らかじゃん。箸まで!
[わあ、突っ込みで思考が大暴走中だね!]
………。(無言で威圧中)
[う、ごめんなさい]
たじろいで、一歩下がる豹柄ミイラ。
「で?」
[えーと、これ使ってください]
恭しくリクは自分が作ったものをうちに差し出した。
[これで、僕にご飯食べさせて?(ハート)]
………。
さて、続き続き…。
えーと、日差し強いから屋根張ろう。
熱中症予防大事だよね~。
[無視しないでぇ!]
涙目でウチの指をブンブン揺さぶる豹柄ミイラ。
「あんた、神様だからなんでも出来るでしょ? 」
[創造や創作は出来ても作る(造る)事は出来なかったの~]
つまり、1からつくるような新しいものや、今までなかったものはできるけど、応用みたいな製作は出来ないと。
じゃあ、さっきウチに渡してきたあれは何だ。
[だから、君に加護を付けて僕と一緒に…キャッ!(ハート)]
なんでそこで顔を赤らめるの?
[でももう、僕の加護付けちゃった(ハート)]
モジモジして頬を抑えてる。
〔創造神シトラリクエの加護(相関タイプ) ものづくりにおいて、全ての効果、性能、効率があがる。相関効果でシトラリクエと繋がる事で創造能力の意志疎通が可能になり…〕
突然現れた吹き出しを最後までみることなく、無言でリクを締める。
[ぐえ、ちなみに加護は君からパパセリをもらった時に与えました。ガク…]
〔……創造神側は相手が必要としているもの等、具現、製作が可能となります。※定期的に創造神に供物(食事)を捧げる事で加護レベルが上がります。※供物を捧げないと創造神は弱りレベルも下がります。現在加護レベルは1未満です。〕
気絶した豹柄ミイラをロープで巻いて大樽の中に放り投げる。
ぷきゅっと、音がしたけど気にしない。
それから、続きの吹き出しを見て、ため息をついた。
どうやらウチは豹柄ミイラを飼う事になってしまったようだ。
字で説明するの、難しい…。