表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冬の雨が上がる時  作者: 登夢
第1部 家出・同居編
8/49

アルバイトを始めたい!

今日はここへきて2回目の金曜日。おじさんは帰りが遅かった。9時過ぎにアパートに帰ってきた。私はすぐに玄関まで迎えに出る。


「おかえり」


「ただいま」


このごろ、帰ってきた時に玄関で私の顔を見るとおじさんの顔が緩むのに気がついた。


「夕飯は食ったのか?」


「食べた」


「俺は弁当を食べる。お湯を沸かしてくれないか?」


私はお湯を沸かしにキッチンへ戻った。おじさんは冷蔵庫を開けて缶ビールを取り出す。そして、テーブルに座って、レンジで温めた弁当を食べ始める。おじさんがお弁当を食べるのをそばで見ている。


「弁当はどれを食っても同じ味だ。いい加減に飽きる。未希は毎日弁当で飽きないか?」


「パンも買って食べている」


「そうか」


「おじさん、アルバイトをしてもいい?」


「アルバイト?」


「下のお店で」


「どうして?」


「お店のオジサンに人手が足りないから、時間があるのならアルバイトをしないかと言われた」


「どう答えた?」


「おじさんと相談してみると言っておいた」


「やりたいのか?」


「うん。前にしたことがあるから」


「俺の帰りは毎晩遅いから一人で居ても退屈だろう。寝る時に居ればいいから、あとの時間は自由にしたらいい」


「分かった」


「明日、オーナーのところへ一緒に行こう。時給などの条件を確認しておこう。その時、二人の関係を聞かれるだろうから、そうだな、俺の姪つまり俺の姉さんの娘ということにしないか? 事情があって預かっているということにする。いいね」


「言うとおりにする」


おじさんの帰りが遅かったので、もう10時近くになっている。おじさんは疲れているみたいで、すぐにお風呂に入った。


私の生理が終わっていることを知っているので、おじさんは久しぶりだと言って私を思いどおりにした。それからおじさんはすぐに眠ったしまった。疲れていたんだ。私も久しぶりにされたのでとても疲れた。


目が覚めるともう9時だった。今日は土曜日だから、おじさんはゆっくり寝ていた。朝、私を起こしてすることはなかった。おじさんもゆっくり寝たかったみたい。それとももう飽きた?


朝食を終えると二人で下のコンビニに行った。丁度オーナーがいたので、私のアルバイトについて、勤務条件に付いて相談してくれた。


そして、時給800円、一日5~8時間、週5日、シフト制、夜は8時まで、給与は毎月25日に銀行振込と言うことになった。これで1か月10万円以上は稼げる計算になる。前にアルバイトしていた時より条件がよかった。


部屋に帰ってくると、今まで何も聞いてこなかったのに、おじさんにいろいろ聞かれた。


「未希は銀行口座を持っているのか?」


「持ってない」


「そうかやっぱりないか、作らないといけないなあ。それじゃ聞くけど健康保険証は?」

「持ってない」



「健康保険に入っていないのか?」


「分からない。母とお医者さんへ行ったときに見せていたように思うけど」


「じゃあ、こっそり家へ行って持ってこられる?」


「ないと思う。母が死んでから見たことないから」


「おかあさんはいつ亡くなったんだ?」


「今年の4月、急に。それから、父がおかしくなって」


「それが家出の理由か?」


私は頷いた。


「それじゃあ聞くが、家に帰る気はないのか?」


「ここにいたい。父とはもう暮らしたくないから」


「俺にやりたい放題されてもか?」


私は頷く。


「分かった。このままじゃ、何かと差しさわりが出てくる。病気になったら健康保険証が必要だし、これからアルバイトをするにしても銀行口座は必要だろう。キャッシュカードもあったら便利だ。どうしたらいいか考えてみよう」


おじさんは私のためにいろいろ考えてくれているみたいだ。ネットで何やら調べている。そして随分長い間、考え事しているみたいだった。


「未希、お前の父親の携帯の番号を知らないか?」


「携帯は持っているけど知らない」


「未希の家はどこにあるんだ?」


「青物横丁」


「ええ、どこだ?」


「京浜急行の青物横丁です」


「そうか、ここから遠くないから、これから未希の親父さんに会いに行く」


「会ってどうするの?」


「同居を取り付けてくる。そして必要なものを貰ってくる」


「私も一緒に行くの? 父には会いたくありません」


「家の前まで連れて行ってくれればいい。親父さんとは俺が話を付ける。どこかで待っていればいい」


「父が家にいるか分からないけど」


「それでも行ってみるしかないだろう。携帯の番号も分からないし、連絡がとれないから、一緒にいくぞ」


「じゃあ、家の近くまでなら、私は近くで待っています」


「それでいいから」


おじさんはショルダーバッグに筆記用具、コピー用紙などを入れていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ