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冬の雨が上がる時  作者: 登夢
第2部 再会・自立編
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パン屋さんになった!

今日は4月1日、山内さんは早めに退社できたみたいで、いつもよりも早くメールが入った。すぐに[了解]の返事を入れる。


帰宅のメールが入るといつも張り切って夕食の準備をする。でも今日はもう夕食の準備はできていた。


「ただいま」と私の部屋をノックする。


すぐに「お帰り」とドアを開けて抱きつく。


山内さんは嬉しそうに抱き締めてくれる。いい感じ。


テーブルの上のお皿にいろいろな種類のパンを並べてある。


「どうしたの? パンが並んでいるけど」


「今日からパン屋さんになりました!」


「ええー、エイプリルフールか?」


「本当にパン屋さんになったんです。社員食堂のパン屋さんに」


「そうか、驚いた」


「私が焼きました。食べてみてください。今日の夕食は申し訳ありませんが、これだけです。諦めて食べてもらえませんか?」


「もちろん、未希の作ったパンは初めてだから食べてみたい」


食べたいパンを聞いて10秒ほど電子レンジでチンする。


山内さんはまずチーズを入れて焼いたパンを食べてみてくれた。私はコーヒーを入れてあげる。


「おいしい。ホテルで朝食に出てくる焼き立てパンと同じ味がする」


「よかった。パン作りはホテルで習いましたが、こんなところで役に立つとは思いませんでした」


私は事情を説明した。3月に入ってから、運営会社からパンを作ってみないかと言われた。社員食堂でパンを売ってほしいとの要望があったからだった。


以前、パンを焼いて売っていたが、担当者が結婚して辞めてしまったので、しばらくパンの販売を休止していたそうだ。


私がホテルに勤めていた時に習っていて焼けるというので、白羽の矢が立った。パンを焼くオーブンなどの設備があり、特段の問題もないので引き受けた。


1週間ほどの準備期間を経て今日開店した。


「今日が初日だったけど、販売した分はすべて売り切れました。パン屋さんの出だしが上々でほっとしました」


「すべて売り切れたのなら、このパンは?」


「各1個ずつ、後の検討のためにとっておいたから」


「そうなんだ」


「食堂で働いている人は売れ残りなどを2割引きで買えるので買ってきたけど、今度売れ残ったら買ってきて夕食にしてもいいですか?」


「毎日はどうかと思うけどたまにならいいかな」


「そうします」


「パン屋さんが気に入っている?」


「ひょっとするとパン屋さんに向いているかもしれないと思っています」


「パン屋さんを開店することができるように勉強しておくといい。設備投資は俺がする」


「そうなったらお願いします。パン屋さんになれたのも山内さんが調理師を勧めてくれたお陰です」


「いろいろやってみないと向いた仕事なんか見つからないから、よかったね」


1週間ほどたって、また夕食をパンにした。私がいろいろ工夫して作っているパンが好評で、売り上げは以前の時よりも3割ほど多くなった。今日は調理パンを買って帰った。


食堂の昼食の献立を挟んだもので、これも好評で完売した。私にはこういう才能があったみたいだ。本当に何事もやってみないと分からないものだ。


私が楽しそうに働いているので山内さんも安心している。私は心のゆとりができて穏やかな気持ちでいられるし、山内さんもそれが嬉しいみたいだ。


我ながら自分に合ったいい職場を選んだと思う。


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