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冬の雨が上がる時  作者: 登夢
第1部 家出・同居編
32/49

お嫁さんにしてほしい!

12月1日、今日は私がここへ来て丁度2年目だ。おじさんの帰りが遅れて9時になっていた。玄関のドアが開く音で玄関に飛んでいく。今日、おじさんに聞いてみたいことがあった。これまでずっと考えていたことだ。


「おかえりなさい」


「ごめん、遅くなった。未希は夕ご飯食べたか?」


メールで帰りが遅くなるから先に食べてくれと言われていた。


「まだ。待っていた」


「そうか、ありがとう、一緒に食べようか」


おじさんがテーブルに着くと、私は夕食を給仕する。今日の献立は白身魚のムニエルにした。


「今日は何の日か覚えている?」


「ああ、未希がここへ来た日だ、丁度2年前」


「あれから、2年もお世話になっています。早いものです」


「高校の1年間も早かったが、調理師専門学校の1年間も早そうだね、もうあと4か月で卒業だ」


「おじさん、私のことをどう思っているんですか?」


「どう思っているって?」


「はっきり聞いておきたいんです。好きかどうかを?」


「好きにきまっているじゃないか。だから一緒に暮らしているし、未希を抱き締めて眠っている」


「じゃあ、調理師学校を卒業して自立したら、お嫁さんにしてくれますか?」


突然聞いたので、おじさんは驚いて、すぐには答えてくれなかった。話してくれるまでしばらくの間があいた。


「未希はまだ19歳だ。結婚を考えるのはまだ早いのではないか?」


「でも、すぐに20歳になります。はっきりしておかないと、先のことが考えられないんです」


「未希は俺が好きか?」


「好きです」


「俺はここへ未希が来た時に、未希にとてもひどいことをしたと思っている。それでも好きか?」


「おじさんは私との約束を守っただけで、私もおじさんとの約束を守っただけです」


「未希に使ったお金を身体で返せと言った。それでも好きか?」


「おじさんは私にお金を出してくれて、それを身体で返しただけです」


「じゃあ、好きは余分のことだと思うけど」


「おじさんも私に約束以上のことをしてくれました。学校に復学させてくれて、勉強を教えてくれて、調理師学校への進学もさせてくれました」


「それは、未希にここに長くいてほしいと思ったからだ」


「じゃあ、卒業してもここにおいてください」


「しばらく考えさせてほしい。今、俺は未希が抱けない。治るかどうかも分からない。このまま、ここに居させておいて、未希を幸せにしてやる自信がない。未希は抱き締められて眠るだけでいいのか?」


「それでもいいから、ずっとここに居させてください」


「未希の気持ちは分かった。考えてみよう」


「いいよ」というのを期待していたが、おじさんはそう言ってはくれなかった。おじさんが私を好いてくれているのは分かっている。毎晩抱き締めて寝てくれるし、大切に扱ってくれる。


私は気持ちを素直に打ち明けた。おじさんは何を悩んだり迷ったりすることがあるのだろう。身体が元に戻っていないから? でもそれはそのうちに治ると思うし。私は気にしていない。私はこのままで十分に幸せだ。


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