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冬の雨が上がる時  作者: 登夢
第1部 家出・同居編
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私を抱けなくなった!

あの散骨の日からおじさんは夜、私に何もしなくなった。ときどき私を抱き締めてくれるけど、それ以上のことはしなかった。何日もそういう日が続いたので私はおじさんに聞いてみた。


「おじさん、どうしたの? 私に何もしなくなったけど、私がいやになった?」


「いや、そういうことじゃない。できなくなった」


「そんな訳ないと思うけど」


私は触ってみたけど、まるで反応がない。口でも試みるがやっぱり反応がない。本当にそうなんだ。こんなことってあるのかしら、このおじさんに!


「ありがとう。でもだめなんだ。あの散骨の日から」


「このままだと私は身体で返せません」


「できなくても、腕の中でおとなしくしていろ!」


おじさんのきつい言葉は初めてだった。なんかイライラしている。


「いいんだ。しばらくはこうして抱かれていてくれていればいいから」


「分かった。それでいいなら」


私はおじさんに抱き締められて眠った。始めのころとは違って、このごろは終わった後に私を優しく抱き締めて寝てくれるようになっていた。始めのころは終わるとぐったりしている私を放り出して、すぐにいびきをかいて寝ていた。


私もこのごろ、終わった後、おじさんに優しく抱かれて眠ると、安心してぐっすり寝られるようになっていた。このごろおじさんが優しくなってきたと思っていたところだった。


でもあの日からおじさんは人が違ったように変わってしまった。おじさんは私をただ抱いて眠るだけになってしまった。私はこれでも十分満足だけど。


おじさんはできなくなったことで男の自信と言うか何かを失ったようで私に対しても強い口調はなくなってきた。私を大事にしてくれているようでありがたい。


ある晩おじさんは私に聞いて来た。


「未希はどうして俺にやりたい放題されても同居していたんだ?」


「おじさんは約束を守ってくれるから」


「約束?」


「私を自由にする代わりに同居させてくれている」


「それは当たり前だ。約束は守る」


「食事代もきちんとくれたし、残ったお金も私にくれた。着るものも買ってくれた。学校まで行かせてくれた」


「そんなの当然だ、同居させるとは面倒も見るということだ」


「だから安心して一緒に住める。私にはもうどこへも行くところがないから」


「俺は未希の弱みに付け込んで未希をおもちゃにした」


「それは約束だから」


「もっといい条件を出すと言う男がいたら、その男と同居するか?」


「分からない」


「このままここにいるのか?」


「身体でお金を返さなければならないから」


「こうして俺に抱かれて眠ることも身体で返していると思っていい」


「それなら気が楽です」


「借りを返し終えたら、ここをでていくのか?」


「分かりません」


私はこのままずっとここにいたいと言いたかったが、おじさんに迷惑になるかもしれないからと、分からないと答えた。そういうとおじさんは私を強く抱きしめてくれた。ずっといてほしいというように。私もこのままでいたい。おじさんに抱きついた。おじさんが弱気になっているのが心配だった。


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