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冬の雨が上がる時  作者: 登夢
第1部 家出・同居編
21/49

心労で倒れた!

もう4月も終わりになって、連休が近づいて来た。4月末で部屋を明け渡さなければならない。私は毎日学校が終わると部屋に寄ってゴミ出しやら後片付けをしていた。もうほとんど片付けたので、気が緩んだのかもしれない。


午後の1時間目の体育の授業でランニング中にめまいがして倒れた。気が付くと病院のベッドにいた。大事をとって、救急車で病院に運ばれていた。看護婦さんから、大丈夫だから心配しないでと言われた。でも少し心細い。そこへおじさんが駆けつけてきた。


「どうした、心配したぞ」


「ごめんなさい。体育の授業中に急にめまいがして倒れたみたいです。気が付くとここにいました。もう大丈夫です」


「大丈夫じゃない。しばらく安静にしていないと」


おじさんは私の顔を見て安心したのか、椅子に座った。しばらく様子をみるためにここに居てくれるみたいで心強い。


少し時間が経ってから、主治医の女医さんが来てくれた。そして、二人にこれまでの経過を説明してくれた。これまでの診察の結果では悪いところが見つかっていないが、これから念のため、精密検査をするという。結果次第だが、何もなければ明日退院できるとのことだった。


一晩の入院が決まったので、おじさんは私の洗面用具と着替えなどをアパートに取りに帰ってくれた。私は看護婦さんに付き添われて、オシッコの検査や、レントゲン、心電図などをとった。


検査が終わって部屋に戻っていると、丁度、そこへ石田先生が見舞いに来てくれた。入院などの諸費用は学校で入っている保険で支払われるから安心しているように言ってくれた。それからお父さんが亡くなっていろいろあって疲れが出たからだと思うからゆっくり休養するようにと言って帰った。


石田先生が帰ってほどなく、おじさんが私の身の回りの物を持ってきてくれた。入院が長くなっても大丈夫なように下着も多めに持ってきてくれた。そして、病室のロッカーに私が分かりやすいようにしまってくれた。


看護婦さんがおじさんに明日の10時に検査の結果を知らせるから、ここへ来てほしいと言っていた。おじさんは来ると言っていた。


「おじさん、私、大丈夫かな?」


「顔色もいいようだから、少し休んだら元気になると思う、心配しないで」


「少し疲れが出たのかもしれません」


「おかあさんのこともあるから、大事をとって様子を見た方がいい、ここなら心配ないから」

「そうします」


「明日、10時にまた来るから、ゆっくり休んで」


おじさんは帰って行った。心細いけど、ゆっくり休もう。


◆ ◆ ◆

次の日の朝10時におじさんが来てくれた。一日休暇を取ってくれたみたい。私の精密検査の結果を聞くのに立ち会ってくれた。診断の結果、特に異常は見つからなかった。恐らく父が亡くなった心労によるのではないかと言われた。


それで退院しておじさんと一緒に帰ってきた。


「毎日、片付けに寄っていたのか?」


「うん、学校の帰りに寄って、7時ごろまでゴミ出しやら後片付けをしていました」


「いつから、あそこに暮らしていたんだ?」


「小学校の2年生の時からずっとです」


「だから、思い出があって、毎日行っていたんだな」


「両親との思い出の場所でした」


「そうか、それにしても、もう忘れないといけないな」

「はい」


「未希の母親は過労で急死した。未希も過労にならないように気を付けないといけない。倒れられると貸を身体で返してもらえなくなるからな」

「分かっている」


それでも私は4月末までアパートに通って後片付けを終えた。その間、おじさんは私を抱かなかった。私の身体に何かあったら大変と思ったようだ。ほっとしたけど、少し寂しかった。


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