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冬の雨が上がる時  作者: 登夢
第1部 家出・同居編
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二人のお正月

おじさんの会社は12月28日で終わり、年末年始の休暇に入る。正月は1月5日から始まる。その間、おじさんはのんびりできるみたい。私はコンビニのアルバイトに精を出している。コンビニは年中無休だから働く側からは大変だけど、今が稼ぎ時だ。


私はシフトをこなしていて、しかも、アルバイトに穴が開くと私が替わってあげている。だから、オーナーも私を大事にしてくれる。同じアパートだから、何かと都合がいい。


年末年始はアルバイトの時給を100円上げてくれると言うので、私は30日から3日まで毎日8時間は働いた。さすがに疲れたので1月4日はアルバイトを入れなかった。


おじさんは私が4月から高校へ復学するために少しでもお金を貯めておきたいのが分かっているから何も言わなかった。おじさんは寝る時に私がいればそれで何も言うことがないようだ。後は私の自由にさせてくれている。


4日はアルバイトを入れなかったので、おじさんが遅いけど二人で初詣に行こうと誘ってくれた。おじさんは明治神宮や川崎大師みたいな有名なところへ行きたいみたいだったけど、私は疲れていたので近くがいいと言った。


公園の八幡神社へ行った。ここは二人でもう何度かお参りに来ている。私は長い時間手を合わせて「この生活が続きますように」とお祈りした。おじさんは何をお祈りしていたのだろう。その後、公園を散歩した。私は黙って歩いていた。身体が少しだるかった。


私は夜になって熱を出した。いつものように風呂に入って、おじさんが私を思い通りに可愛がってくれた。私はその間、身体がだるくてじっとしていただけだった。


終わってぐったりしていると「未希、熱があるんじゃないか」といっておじさんが体温の測ってくれた。


「未希、熱が38℃もある。こんなに熱があるのにすまなかったな。明日はアルバイトを休んで医者へ行った方がいい」


「大丈夫です。一晩寝れば治ります。いままでもそうしていましたから」


「無理をして身体を壊したらそれこそ学校へも行けなくなる。悪いことは言わない。医者へ行け。費用は俺が払ってやるから」


「分かった」


私は身体がだるくてすぐに眠ってしまった。


翌朝も熱は下がらなかった。眠っている間におじさんが測ってくれていた。おじさんに起こされるともう朝食の準備ができていた。


「熱が39℃もある。今日はアルバイトを休め、あとからオーナーに言ってやるから」


「そうする」


起きて朝食を食べるけど、身体がだるいし、食欲もない。7時になっておじさんがオーナーに「未希が熱を出したので今日はアルバイトを休ませてほしい」と言ってくれた。オーナーは随分心配してゆっくり休んでほしいといっていたそうだ。


おじさんは「必ず医者へ行くように」と言って出勤した。保険証があってよかった。9時になったので、近くの医院へ歩いていった。診断は風邪ということで、風邪薬をくれた。2~3日安静にしていれば治ると言われた。


帰りにコンビニへ寄ってオーナーに風邪を引いたことを改めて言った。オーナーは心配してくれて、買おうとしていたサンドイッチとプリンとジュースをお見舞いだと言って只にしてくれた。


おじさんが帰ってきた。私は昼食を食べてからずっと眠っていた。玄関ドアの開く音で目を覚まして、時計を見ると7時前だった。いつもよりずいぶん早い。


「医者へは行ったのか?」


「朝、近くの医院へ行って診てもらった」


「なんて言われた?」


「風邪だと言われた。薬を貰って来た」


「咳が出ているけど、熱は?」


「さっき測ったら38℃あった」


「食事は?」


「お昼にサンドイッチを食べた。夕食は食べてない。食欲がないから」


「下へ行って、俺の弁当を買ってくるが、ケーキでも買って来てやろう」


おじさんは下のコンビニへ行った。すぐに弁当とケーキを買って戻ってきた。


「ほら、ケーキだ。何か食べないと風邪も治らない。オーナーに会ったので熱が下がらないので明日も休ませてもらうように言っておいた」


「ありがとう」


「オーナーが心配していた。お見舞いだと言ってケーキを只にしてくれた」


「お腹が空いたのでケーキをいただきます」


私はケーキを食べた。おいしい。今日はお風呂に入らないことにした。おじさんは私をゆっくり休ませてくれた。


おじさんが夜に何もしなかったのはこれが初めてだったかもしれない。ただ、おじさんは横にいる私を後ろから抱くようにして寝ている。背中が温かくて安心して眠れる。


翌朝、体温を測ったら37℃だった。おじさんは「やはりもう1日アルバイトを休んで休養した方がいい」と言い残して出勤した。もう1日アルバイトを休んだ。昼は36℃に下がっていたけど、夜、体温を計ったら37℃あった。次の日も私は大事を取ってアルバイトを休んだ。そして風邪はようやく治った。


私は元気になったが、週末に今度はおじさんが熱を出した。私の風邪が移ったに違いない。おじさんは土曜の朝に医者へ行ってからずっと寝ていたけど、日曜の晩にはもう回復していた。私はアルバイトの途中に何度かおじさんを見に来たけど静かに眠っていた。


私が熱を出している間と回復してからもしばらく、おじさんは私に何もしなかった。そのうちにおじさんが熱を出したのでおじさんは何もできなかった。


1週間も私と何もしなかった。私をただ抱いて眠るだけでいいみたいだった。いままでとは少しおじさんが変わってきたみたい。私を以前よりもずっと大切にしてくれて優しくなった。私を見る目もギラギラしたところがなくなってきた。


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