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年上執事の受難<序章>

ブックマークや評価をしてくださり、ありがとうございます。


 木漏れ日が差し込む街道を、鼻歌交じりに前を歩いていく背中を見つめる。

 ゆらゆらと揺れる髪が眩しい。

 くるりと振り返って笑いかけてきた時、ちゃんと笑い返せていただろうか。

 思わず目を細めたのはきっと、日の光が眩しいからだ。

 そうじゃないと、そうじゃないと全部台無しにしてしまう。

 俺たちの5年間を―――――………










 

 

 セラフィーネはアノンに来ていた。正確に言うとその外れの牧場なのだが。

 今日はルカが友人に会いに行くということで、前回同様ついてきたのだ。ただ今回はアルトも一緒だ。


 「わー!牛さんですわ!いつも美味しい牛乳やチーズをありがとう」


 家畜をこれほど近くで見るのは前世を合わせてもあまりないのでセラフィーネは興奮していた。一頭一頭傍により頭を撫でる。喋りかけるとそのつぶらな瞳を合わせてくれたり、モーとないてくれるので気分を良くしていた。


 「柵から身を乗りだしすぎないでよ。牧場の人たちがハラハラして見守ってるじゃん」


 まるで子供を相手にするようなルカの話し方に―――いや実際そうなのだが―――頬を膨らませる。


 「わかってますわよ。でもいつもお世話になっていると思ったら愛おしく思いますの。どうせルカみたいな冷徹男には分からないかもしれませんが」

 「僕がいつ冷徹男になったのかな?そりゃ可愛いけどさ、一頭ずつ相手にしてたら日が暮れるよ?」

 「お嬢様。お坊ちゃまがおっしゃる通りです。行きましょう」


 ルカにアルトまで加勢する状況が面白くなく、またセラフィーネは頬を膨らませた。


 「不細工だよ」

 「五月蠅いです!それとアルト!」

 

 急に名指しされたアルトは驚いたように首を傾げた。


 「はい?どうかなさいましたか?」

 「なんか堅苦しいですわ!もう一週間近く一緒にいるというのに、名前で呼んでくれないじゃない!」


 これはずっと思っていたことなのだがなかなかいう機会がなかったのだ。

 セラフィーネのなかで執事といえば、主人と一番信頼関係があり、時には軽口をたたきあうような存在だ。時には『お嬢様の目は節穴ですか?』なんて言ってくれてもいいのだ。


 だがセラフィーネの注文にルカは困った様子で、


 「ですが主人に馴れ馴れしい態度で接するなど………」

 「いいのです!せめて名前で呼んでくださいまし!」


 呼んでくれないと動かないーーー!と駄々こね始めた主人に心底困ったようで、アルトはルカに救いの目を向けた。ルカはそれに首を横に振って返す。


 「ごめんね。セラはちょっとおかしいから。でもできたら名前で呼んであげてよ」


 アルトはその大きな瞳をあっちこっちに彷徨わせ、若干うつむき気味に声を絞り出す。


 「せ、セラフィーネお嬢様………」


 呼ばれた瞬間、花が咲いたような笑顔を顔中に浮かべたセラフィーネに、アルトは恥ずかしくなってそっぽ向く。しかしその耳が真っ赤に染まっているのは2人にはお見通しだ。


 「聞きました?ルカ!やっぱりこっちの方がいいですわよ!さあさあ次はルカの番ですわよ」

 「え!?お坊ちゃまもですか!?」


 鳩に豆鉄砲。と言わんばかりの表情でセラフィーネに向かうルカ。許容範囲を超えて顔がゆでだこになり始めたアルトを見て、セラフィーネは心の中でにんまりと笑う。


 (この調子でどんどん仲良くなればいいんですわ!一週間2人を見守っていましたが、どこかよそよそしいったらありゃしない!むずむずしすぎて蕁麻疹になったかと思いましたわ)


 「えー、あ、えーと………ルカお坊ちゃま………」

 

 セラフィーネの時よりも恥ずかしがっているアルト。その隣にはにやけ顔が抑えきれていないルカがいて、セラフィーネは笑い出す。


 「あららら!ルカも嬉しいんじゃないですか!良かったですわ!」

 「五月蠅いよセラ。………でも嬉しいのは本当だから。ありがとうアルト」


 これからもよろしく、と手を差し出したルカに、アルトは遠慮がちだが握手に応じる。


 「でもルカお坊ちゃまは長いでしょ?ルカ様でいいよ」

 「え、あ、そんな!私ごときが………」

 「いいですわね!さすがは私の弟ですわ!でしたら私もセラフィーネ様、もしくは愛称で呼んでくださって構わないのよ?」


 主人2人にさあさあと迫られて、かわいそうなアルトは困惑の限りである。結局パニックになりかけながら、


 「ルカ様にセラフィーネ様!これでよいでしょうか!?」


 もうやけくそ状態で叫んだのであった。そしてその叫びは正午の牧場に響き渡ったのである。

 可愛い執事に2人はにんまりと笑って、


 「「よくできました!!」」


 それからはお互いの頭をこねくり回したり牧場の草を掛け合ったりと、年相応のじゃれあいを繰り広げる彼らで、その表情は幼さがにじみ出ていた。そしてそんな彼らを見守る町人たちもまた、幸せそうであった。


 彼ら3人組の絆がぐっと深まったのだった。




なんかほのぼのしました。私も牧場でのんびり過ごしてみたい。アイスクリームとか作りたい。

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