グングニル必死の攻防
場の空気は凍っていた。温度的な意味ではバスルームのドアを開けた瞬間に湯気が蔓延する為、どちらかと言えば脱衣所の温度は熱いくらいだった。
だがこの状況、裸の男女二人が棒立ちしていて男の方に至ってはまさに“棒勃ち”している状況で場の空気が固まらない訳はなく真太郎は声を出せずにいた。
「それって…そういう事……ですよね。」
ラルファは真太郎の心境を伺いながら声をかける。が今の真太郎はラルファの裸を目に焼き付ける事で精一杯な為ラルファの声は真太郎の耳に届かない
「もし私で良ければ……」
ここで真太郎は我に返る。
(「もし私で良ければ」だと?どういう事だ。一体今何が起きているのか全く理解出来ない)
そもそもこの場合、対面した瞬間に女は奇声を発し風呂桶を投げてくるのが自然だと思っていた真太郎。ToLOVEる的展開ではなくただのエロゲー的展開に困惑するが真太郎の正直な迄に立派な棒は次の展開に期待していた
「真太郎になら…救ってくれた貴方になら…私はその、いい…ですよ」
OKサインが出た。真太郎は本能のままラルファに近づきとても綺麗な瞳を間近で見つめる。その瞬間、まるで雷に打たれたかの様に突然身体中に電気が走り真太郎は元の意識を取り戻す
(ふざけんな…俺様は一体何をしようとしているんだ。この子のお陰で助かったんだぞ、それを今…恩を仇で返すように。屑が…人間の屑が!)
この数秒間、下半身に脳を乗っ取られていた自分に嫌気が差し深く失望する。
「ラルファ…ごめん」
一度脱ぎ捨てた服をもう一度着て逃げる様にその場から走り出す。拠点を出た真太郎はとにかく走った。拠点から遠ざかりたいという一心で。
もうラルファに合わせる顔がない。あの天使に劣情を抱いてしまった事が思いの外ダメージがでかく、ずっと高い建物を眺めてしまう
「あそこから飛び降りたらさっき見た光景全部頭からぶっ飛びそうだな…はは」
ラルファの裸を一生涯分目に焼き付けておいて今更忘れたいと自分に都合のいい事ばかり思ってしまう。
あれだけ見てしまうと忘れようにも忘れられない、これから一人でする分には困りそうに無い。……真太郎はまた死にたくなった
そんな事を思って歩いていると看板にOPENと書かれた酒場を発見する
「なんで昼間っから酒場が空いているんだ…」
ここで時系列を整理しておくと、真太郎が異世界へ来たのは朝方でそこから人攫いと一悶着あり街に着いたのは昼頃。そして今は昼過ぎ
「さっさとピエロを見つけてこの異世界とおさらばしてやる」
ピエロことピエロの仮面を被ったスーツの男“ジャック”を見つける事がこの異世界での最大目的でありゴールである。その男を見つけさえすれば真太郎は元の現実世界に戻れる為、その男の情報を集めるべく真太郎は目の前の昼から開いている酒場に入る。
途中から賢者の心で書きました