最後に描いた儚い世界
早めに更新します。
「この俺様が今!まさに!帰って来たぞッ!!」
意気揚々と家のドアを開ける。
「はいおかえり。今日は学校終わるの早かったね。」
「七日後に生きるか死ぬかの俺様の運命を分ける契約書を書かねばならん。だからこの七日間俺様はあの様な施設に昼以降も収まる器じゃない。」
「テスト期間だから学校昼までなのね。これから家で勉強するの?」
「いいや母上、俺様はこれから華蓮と総司と組織で会議を行わなければならい。」
「また総司君の家にお邪魔になるの!?いつも悪いわねぇ。そうだこのケーキ持って行きなさい。」
高そうな箱に入ったケーキを渡される。
「では、さらばだ!」
ケーキ片手に意気揚々と家のドアを開ける。
「遊んでばっかりじゃなくて勉強もしなさいよ〜」
扉が閉まる。
「まったくあの子ったら…さて勉強頑張るあの子の為に今日はご馳走作らなきゃ!」
ー総司の家に向かう途中ー
「さて、今日の会議は何の議題を出そうか…。何から手をつけてもいいが……よし!今日は華蓮の苦手な数学を克服する会議にしよう。っと」
考えながら歩いてると前の公園からボールを追いかけて小さい子供が飛び出してきた。
「まったく、このぐらいの年のガキは契約書や会議を気にせずに気楽で羨ましいものだ。」
前から凄いスピードで車が走ってくる。
「っておいおいおいおい、俺様やガキが見えないのか!?ってあの野郎スマホいじってやがる…。」
ブレーキを押す気配もなく、どんどんスピードを上げて向かってくる車。
「仕方がない、スマホいじって運転してる方が悪い。その高そうな車、廃車にしてやるよ」
子供を道路の端へ突き飛ばし、右手を天にかざした後向かってくる車へ振り下ろすーー
目を覚ますと、道路で横たわってる自分とそれを泣きながらお兄ちゃんお兄ちゃんと俺様の事を呼んでくるさっきの子供。
「お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!!あっ、目が開いた!」
どうやらさっきの車は見当たらない。相打ちという訳か。
「男がそんなメソメソ泣くんじゃない。ほらこんなに美味そうなケーキがあるんだ。一つやるから泣き止め。」
そう言って吹っ飛んでめちゃくちゃになったケーキを子供に渡す。それでも子供は泣き止まない。
「わかった、それ三つとも食べていいから…がはっ」
声がほとんど出ていないのは言っている自分でもよくわかる。そして視界が暗くなっていく
(総司…華蓮…母上…父上…また何処かで会おう)
そして目を覚ますと俺様は一人の男の前に立っていた。
「目が覚めたかい?おはよう」
その男はリクルートスーツを着てピエロの様な仮面を被っている。
「おっ…おはよう…」
自分の声が出た事に不思議と少しだけ驚きと喜びがあった。
「僕は君の様にぶっ飛んでいてそして正義感のある人間は好きだ。だから君はすぐに生き返らせるよ安心してくれ。」
生き返らせる…?そもそもここはどこだ…?さっきまで持っていたケーキはどこにいった…?
「言いたい事が一杯ありそうな顔をしているね。そうか死ぬ前の記憶が少し飛んでるのか。よし」
その男が指パッチンをした瞬間、死ぬ前の記憶が脳裏に蘇る。
「あっ…あぁあぁぁ…」
そうだ、俺様は死んでしまったんだ。何も力を発揮出来ずにそのまま車に轢かれて。
「君は生まれる世界を間違えたんだ。君の様な正義感溢れた男にはこっちの世界がお似合いだろう」
そう言うとその男は胸ポケットから地図を広げ俺様に見せてきた。
「ここなんてどうだろう?ここの世界はまさに今戦争が起きそうなくらい緊迫した状況にある。そこで生まれ変わって平和にする事も君ならできる。」
「おい、勝手に話を進めるな。俺様が生まれる世界を間違えただと?ふざけるな。俺様が生まれた世界を、皆を愚弄するな。黙って元の世界へ生き返らせろ。」
少し考えるピエロ。
「それは出来ないルールになっている…が!僕は君が好きだ。君がそれを強く望むならルールを変更して君を元の世界へ生き返らせる事もできる。」
「話がわかる様で助かーー」
「ただし条件がある!」
地図にある大陸を指差して言う
「この世界に存在する僕と同じ格好をした分身を見つける事が出来ればその時点で君を元の世界へ生き返らせてあげよう。」
「何故そうなる…。」
「いいかい?僕の分身を見つければ君の勝ち。晴れて元の世界で生き返る事が出来る。だがこの世界で死んでしまうと君の負けだ。二度と元の世界には生き返らない。ここで永遠と僕と暮らしてもらう」
「生き地獄だな…いいやもう死んでいるか」
ピエロは地図を胸ポケットにしまい、俺様の頭を触り何かを唱えている。
「君の性格にお似合いの能力を授けよう。これは相当なハンデだ。上手く使えば死ぬ事はないだろう。」
「いいだろう。俺様が勝ったら約束は守って貰う!え、えっと…ピエロ!」
「僕の名前はジャックだ、この世界でもその名の分身がいると思うから手がかりに使うといい。よし!それじゃあ生まれ変わって貰うよ!」
自分の身体がどんどん薄くなっていく。
「そういえば、君の名を聞いてなかったね。」
俺様は身体が消える直前に意気揚々と言った。
「真太郎……、佐々木真太郎だ!覚えてろ!」