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第六話 大切な役割

ヒャッハー、景気はどうだい野郎ども!

モチロン元気だ問題ない。


さて、情報は力。

今回よくよく思い知ったね。



俺が知る本能寺の変ってのは実父が光秀に討たれるやつだ。

そのあと秀吉が光秀を破って天下人になっていくっていう流れだったんだが。


現実には実父も実兄も生きてて、むしろ光秀の命が風前のトモシビ。

ついでに俺のも。



戦いは終わり、臨時の本陣が北畠主導で敷かれた。

捕縛された明智軍は後回しにして、まずは活躍した北畠軍が実父らと面会。


ここは無事でよかったねって喜ぶシーンのはずなんだけど。

ちょっと何かがおかしいと思わない?思うよね?

何で俺の命まで危険に晒されているんだ。

え、そっちじゃない?

じゃあどこだよ!


何故か緊迫のシリアスシーン。

対峙するのは実父と実兄。


三介が画策かと実父が問い、三介が器量であると実兄が答えた。


なんだこれ。

義冬、どういうこと?

そんな呆れた顔しないで教えろ下さい。


ほほう、俺が光秀と示し合わせて実父たちを強襲したんじゃないかという疑念が。

はあ、余りにもタイミングが良すぎたせいで?

何だよそれぇ!

あ、うん落ち着いて聞くよ。

続きドゾー。


そういや言ってたね、謀反に取られる可能性があるって。

だけど別に困らないって、うん確かに言った。

それで全て分かってると思ってたのか。


少し思ったのと違う。

いや、結局違ったからもう気にするな。


しかしそっかー、また危ない橋渡っちゃったんだねー。

こりゃ雪ちゃんにお説教されちゃうな。


そういや実父からも謀反がどうのって言われたね。

なるほど、そう繋がるのか。

ネタかと思ってスルーしちゃったよ、危ねえ。


ふう…あ、続けて続けて。


対して実兄は、俺の機転によって助かったんだから疑ってんじゃねえよボケ爺!

そこまでは言ってない、知ってる。

おっと目が皿のようになってるぞぉ、謝るから止めて。


決定的だったのは事前に密書を送ったことか。

胸熱忍者集団由来のソースを示したのが良かったらしい。


つまり実父は俺を疑って、実兄が俺を庇ったと言う訳だね!


流石は兄上、最も尊敬に値する人。

だって父上は疑ってたんでしょ?

そんならいや拗ねられても…ええい面倒な。


よし蒲生君、君に決めた!

父上を宥めるんだ。

ホントは孫が良いんだろうけど、居ないものはしょうがない。


何せ、明智軍との戦いでは蒲生君と具良が並んで無双してたんだもん。

お気に入りの子が奮闘したって大喜びしてたのは記憶に新しい。

具良のことも大いに褒めてたけど、やっぱり身内大好き人間なのがよく分かった。


俺は大将だから掃部の補佐を受けて指示を出してたよ。


大将の仕事は部下に手柄を立てさせること。

そして責任は取る。

これが優れた上司の在り方ってもんよ!


昔何かで読んだ本に書かれてた。

詳細は後で義冬とかに聞けば問題ないからね。

結構上手く機能してるんだぜ。


おっと実父の機嫌が上昇を確認。

流石は蒲生君、お気に入りは格が違う。

何故北畠軍に参加してたのとか、そんなのどうでもいいらしい。

ちょっと反応違くね?


そんな訳で、情報こそパワー。

俺が伊賀衆を抱え込んでることは皆知ってる。


当初はいい顔しなかった掃部も、今回の実績に結び付いたと知れば認めざるを得ない。

これが高じて後に雛田を養女に迎えることになるなどと、今は誰も思いもよらぬことだった。

ただの独り言だよ。

いや無事に終わって鳴戸衆のこと思い返したら雛田のことも思い出したんだ。

妾なんてとんでもない。

するなら側室、でもココで名門が邪魔をする。

だったら釣り合うようにすればいい。

口から駄々モレだったが気にするな、わざとだ。


詳しくは後で話すが実はな佐助、雛田のことなんだけど。

そう、捻子の従妹であの艶っぽさもありながら年相応の可愛らしさを内包した雛田をちょっと側室にしてみようかなと思ってみたりしてるんだ。

いや思い付きで手を付けようとか、そんな性根の腐った真似はしないよ!

見損なうんじゃない。

うむ、可愛い妹分で熱くなるのは仕方ないさ大丈夫だ以後気をつけるように。

そもそも熱くなるのは瓦井の仕事だろ。

頼むよホント。


さて、実父と実兄の話し合いも終わったようだ。

光秀やらの処遇も決まったのか、早いなあ。

ちょっと聞いてなかったとは言えない、こっそり教えろ下さい。

すまない義冬、後でちゃんと褒美出すから。



* * *



緩く生きる俺と違い、世間の動きはとても速い。

全くついていけないぜ。


明智軍を討伐した軍勢を率いて中国遠征、一体何を言ってるのか分からない。

蒲生君も一緒に。

無双姿に心奪われたのか、すっかり具雅が懐いてしまった。


どう思う具良。

義弟を取られて別に拗ねてない。

そうじゃなくて遠征の方だよ。

義冬は実父の方に行って不在、掃部は京の都で実兄の補佐。

残りはお前しかいないだろ。


うん、まあそうなんだけどね。

中国遠征の大将は実父で実兄は畿内の抑えに残った。

代わりに動ける大軍を持つ俺が行く。

分かるんだけど、でも実父率いる織田軍の中心が北畠軍なのはどうかと思う。


信頼の証。

疑いを掛けたことが心苦しかったのか。

マメだなホント。


まあいいや。

ちゃちゃっと行って、サッサとこなして早く帰ろう。

雪ちゃん成分が足りない。

だから遠征は嫌なんだ。


今回の目的地は備後、岡山県あたり?

最終的には安芸か長門あたりまで、山口県まで行く可能性もあるのか。

マジかー。


これで戻ったら三松丸が歩いてたとかだと俺は泣くぞ。

ん?父上がお呼び?

分かったすぐ行く。

はあ、めんどくさい。



父上、お呼びと聞き参上堅苦しい言葉はなしに承知しました。

何の用ですか、早く帰りたい。

褒美?何の。

ああ都の乱…、今なん?それって今なん?

取り急ぎ思い付いた事を言いたいだけでしょハイハイどうぞ。


うん?

来れなかった実兄の代理として遠征軍の大将を?

嫌だよ面倒くさい。

信孝は大将に抜擢され、喜び勇んで四国に旅立ったけど俺は違う。


そもそも大将は父上でしょう。

お飾り?

誰も思わないよそんなこと。


大将を息子に任せたいなら秀吉の養子になった秀勝に任せりゃいいじゃん。

いやホント、俺は早く伊勢に帰りたい。

名誉も大事だけど、もっと大切なものがあるんだよ。

それは雪ちゃんと子供たち。


三介如きが生意気だあ?ふーん、ならもう俺の子たちは父上には会わせないもんねー。

へへんっ

そんな泣きそうな顔されても、何だ義冬はどっちの味方なんだ。

蒲生君まで、ああ分かった分かった孫には会わすから泣くな!


有耶無耶になった。



なんだかんだ名目上の大将として毛利を降し、中国地方を平定。

九州方面の大将には秀勝を推しておいた。


秀勝なら俺の弟だけど、まだ若いから実質的な大将は秀吉。

養子に入ってる羽柴軍の大将だから何も問題ない。

って義冬が言ってた。

見た感じ、実父も満更でもなさそう。



あ、どうも羽柴さん、対毛利戦お疲れさまでした。

今回は兄上に代わり、未熟ながら大将を務めさせて頂きましたがどうでしたか?

そうですか、お世辞でも嬉しいです。

まだ九州攻めもありますし、お身体大切に頑張って下さい。



実父が誰だコイツって目で見て来る。

今更そんな気はないんだけど、信雄が秀吉と戦った知識の記憶があるからさ。

つい硬くなっちゃうんだよね。

まあ現実の秀吉さん凄くいい人だから大丈夫なんだけど。


秀吉の弟さんも真面目で優秀で、いや~羨ましいわ。

おっと具雅、そこで拗ねる必要はないぞー。

誰かと比べてる訳じゃなくて、強いて言うなら実兄に対しての自分を見てるからな。

いやホント。


ともかく終わった、とっとと伊勢に帰るぞ。

そろそろ雪ちゃん成分が欠乏してヤバい。

津田ちゃんと雪ちゃんは違うだろいい加減にしろ!


ああ父上、論功行賞とかは後でヨロシク。

別に無くてもいいから、早く帰らせてっ



* * *



天下平定まであと少し。

時々遠征に出てるけど、基本は伊勢で優雅に過ごしてる。


我が名は織田三介信雄。


名前が変わってるぅー!?

そうなんだよ聞いてくれよ。

諸々面倒事が終わってやっと我が家に帰り、雪ちゃん成分を存分に補充してた時の事。


おっとその前に雪ちゃんのことを少々。

帰宅した俺の前に立ったのは、いつぞやを彷彿とさせる極上の笑みを湛えた雪ちゃん。

これは実にヤバい。

ヤバいシグナルなのは分かってたけど、雪ちゃん成分の欠乏症はもっとヤバかった。

よって問答無用でギュッとして、存分に補充したのである。

いやあ、その時の雪ちゃんったらもうホント可愛くて。


このまま全て語り尽くしたいけど構いませんねっ

お気に入りの美しい髪は変わらずサラサラで上気した頬の色づきも最高で、朱が強調されたその唇に思わず吸い込まれボディががら空きだぜ!


失礼、取り乱した。

取り乱すと言えば雪ちゃんの乱れぶりも中々おっとこれ以上はイケナイ、ナンデモナイヨー。


それで、何だっけ。

ああ名前が変わった事ね。


雪ちゃん成分を補充し、子供たちと戯れてた時に使いが来たんだ。

早く安土に来いやボケェ!

実父と実兄からそれぞれほぼ同時にほぼ同じ内容。

マジ切れ警報が発令されました。


遠征後は我が家に直帰した俺。

直後から代理を頼んだ掃部経由で幾分かオブラートに包まれて言われてた。

でも遂に待ちきれなくなって直接言ってきたみたいだね。

しゃーない、行くとするか。



そして着いたら問答無用。

蒲生君に拘束されて連れて行かれた先には実父と実兄。


臨席するのは掃部だけか。

え、頭下げてちょっとどこ行くの?

腰を浮かして縋り付ハイ座ります。

同席するのは蒲生君だけ。

家臣たちは少し離れて、つまり密談ね。


それで何でしょう。

今回はご苦労だった、ホントご苦労でしたよ。

特に中国遠征が。


論功行賞は後で大々的に行うけど先に褒美を貰えるんだ。

そんなのもあるんだね。

いわゆる内示ってやつか。

聞きましょう。


え、何だって?


織田姓を名乗れ?それは前に断った筈だけど。

今回はマジ。

だが断る。

断らせないとかそんなのありか!


なんだリア充兄貴、弟の役割?

信包叔父上みたいな存在になれってことか。

理解は出来るけど、じゃあ北畠家はどうなるのさ。

雪ちゃんの婿として家は守らないと…ああ、義弟なり次男なりに継がせばいいと。

うぅ~ん…え、悩むのは自由だけど決定事項だ?

な、なんだってーっ


うぇ~、次はなんですか父上。

新しい名をやる?

明智の乱や中国遠征で大将としての働きぶり、実に雄々しく見事であった。

そっくりそのまま蒲生君の評価だと思うけど。

よってその名を遍く広めるために、いや聞けよ。


以後は信雄のぶかつと名乗るように、ですか。


織田信雄、ここでそうきたか。

ついでに従四位下左近衛権中将になった。

官位は難しい。

公式にはともかく、周りには三介と呼んで貰おう。


不服か、いや不服はないですよ。

驚いただけで。


あらら、めっちゃホッとした顔してるな。

断らせないと言いつつホントに嫌がったら引っ込めたかも知れないね。

やっぱ実父は息子に甘い。

実兄も弟に甘い。

俺もそんな家族が大好きだ。


それと領地?

名前だけじゃなかったんだ。

こっちが内示か。

ふむふむ、伊勢と伊賀の二ヶ国。

ほほう、中々の大盤振る舞いだけど信孝や信包叔父さんはどうするの。

信孝は四国に新領地か、信包叔父さんの領地は除く。

なんだ、丸々二ヶ国じゃないのか。

不満はないけど一瞬期待しちゃったからさ。

うん、問題ないよ。


用事はこれだけ?

もう一個、なんでしょう。

カライリ。

なにそれ、ああ朝鮮出兵。

天下統一してないのに気が早いですね。


賛否?なんで俺に、まあいいけど。

個人的には反対。

だって面倒…ハイハイ真面目にね、まずは乱世を終わらせてから国を富ませないと。

尾張や伊勢は穏やかだけど、全国的にはそうでもないんでしょう?

だったら、いや言われるまでもないなら言わないけど。

うん、大体そんな感じ。

目指せ!みんなでゆるーくハッピーライフ!


それに世界を見て回りたいなら、何も戦を伴わなくてもいいと思うんだ。

ええっ、何その目から鱗みたいな顔。


ハーイ、じゃあ俺はこれで!

蒲生君はもうちょっと居るのね、分かったまた後でね。



はあー、何か疲れた。

とりあえず論功行賞があるみたいだし、それ出ないと帰れないのか。

てことで掃部、屋敷に戻るぞー。

そういや津田ちゃんに会うのも久々だな。



* * *



ろんこーこーしょー。

論功行賞。

頑張った人へのご褒美発表会。


伊賀攻め以来あまり縁の無かったイベントだ。

ちまちましたのはあったんだけどね。


さて、会場はざわついてる。

今回の目玉は俺と信孝、あと秀吉の伸長で間違いない。


上座に実父と実兄が座り、イベント開始。


戦の推移がどーたらこーたら、勲功がどうのと詳細は聞き流す。

秀吉は予想通りだったし、他の一門重臣も適当に。


とりあえず信孝が阿波と讃岐で二ヶ国の太守になって、官位も正五位上左近衛少将。

三好讃岐少将信孝って名乗りになったことは覚えた。

信房も関東でかなり頑張ったみたい。


あと蒲生君が丹波の国主に抜擢。

俺と同行して活躍したことが評価されたんだって。


さて、遂に北畠信具が織田信雄になる時がやってまいりました!


前口上は省略。

内示で言われたことを仰々しく言ってるだけだし。

実父が直々に名を与えるって辺りで信孝が驚いた目をした。

でも案外、憎々しい感じじゃないね。

大将としての遠征が成功して気持ちも落ち着いたのかな。


ともかく織田信雄が誕生した。

はぁー、何やら感慨深い。


続いて領地の事。

こっちは大したことないね。

信包叔父さん以外の伊勢を貰えるってだけだし。

いや、それでも結構なもんだけどさ。


おっと姿勢を正してちゃんと聞こう。

領地の話は実兄から。

ふむ、本領南伊勢と伊賀の他、北伊勢と尾張を加増、と。

んん?

なお、織田信包は北伊勢の代わりに大和に領地をって何か聞いた内容と違うんだけど!?


思い切り実兄の顔をガン見。

口の端歪めてニヤリと嗤う悪い顔。

だ、騙したなてめええぇぇぇっ!


急いで周囲を確認。

実父も実兄と同じく悪い顔、蒲生君はニコニコ、信孝ほか一門重臣は何やら頷いて納得顔。

ええー…。

いやっ、不服なんてありませんよっ

ただ驚いただけで。


前も言ったなこれ。

くそう、とんだサプライズだ。


織田中将信雄。

以後も連枝筆頭として励めってか、承知しましたよぉ。



* * *



北畠三介が織田姓になったことでちょっと揉めた。

具体的には雪ちゃんが切れた。

北畠を捨てるつもりかと泣き叫ぶ雪ちゃんに、凄い勢いで庇護欲が湧いたね。


何だかんだで愛着がある名を捨てるのは難しい。

とりあえず具雅はそのまま北畠姓で。

あと三松丸に北畠の正統を継いで貰うことで落着。

三法師は嫡男だから、自動的に織田姓になるからね。


泣き喚いた過去を恥じる雪ちゃんが可愛くて愛おしくて。

これでまた十年は戦えると決意を新たにした。

言葉のあやだから戦場に引っ張り出そうとすんな。


そのまま時は進み、織田家による天下統一がなる。

ちょこちょこ遠征は入ったけど、これと言って問題もなくまあ緩く生きてる。


どうやら天下はちゃんと落ち着いた。

実父は隠居して実兄に全てを譲ったが、大海原へ船出することを夢見てるらしい。

本気で落ち着いて欲しいとは実兄の嘆き。


そういや徳川と組んで秀吉と対決するなんて事はなかったけど、織田信雄という大名がちゃんと残ったな。

実父が非業の死を遂げなかったんだから多少の誤差はしょうがない。

でも大体は歴史通りに進んだと見て良いだろう。


うん、当初の目標通りに上手く流されて順当に生き残れた。

沢山の奥さんに囲まれて、子や孫にも恵まれちゃってさ。

もしかして、実は結構な勝ち組だったり!?


さて、あとは後世の評価がどうなるのか。

流石に暗愚とかはないと思うんだけど、まあそれは考えてもしゃーないな。



やったね三介君、目標達成だよ!

ね、簡単でしょ?

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