第8話 ゴブリン 狩り班 参る!
第8話 ゴブリン 狩り班 参る!
『ぎゃ?』
屋内広場?小屋を出ようとする狩り班。
流れ作業のように、出るときに赤い布きれ(臭そう)と、手のひらサイズの石ナイフを渡された。ナイフといっても、石を砕いて鋭くなった程度のものだ。名前負けしている。
『狩りだ! 狩り!』
『いきなりか・・・武器はこれだけ?』
『いいから行け!後ろが閊える』
『へいへい・・・!』
『へへへ・・・俺偉い、はやくしろ』
外に出た。ふむ、出たから外なのは当たり前だけど、そういうことではなく、さっきとは明らかに違う外でした。あそこは洞窟ではないにしろ、囲まれてたからかな。
ここは空も見えて完全に開けている。川の匂いもする・・・。砂利も運んであるぞ。
先輩?角が長いからそうだろう、装備しているのもいるし、焚き火を囲って騒いでいるやつもいる。など、ふむふむと考察していたらお調子が良さそうな先輩ゴブリンが背中を刺しやがった・・・ナイフか。石ではなく、正真正銘のナイフだ。
人間赤ちゃんのとき会ったやつも持ってなかったのに・・ってことは教育できるくらいは強いってことだろう・・・。
ま、痛みはない。驚きはしたけど、ボアちゃんの牙に比べれば屁だな。蚊に刺された程度の認識だ。正直倒せそうだけどな。って倒せるとなっているからやれるな!はは!雑魚め!
『・・・・やる!殺る!』
『おお・・・張り切ってるねぇ。同じ組だし頑張ろうな』
『?・・・ぎゃ!ち!ふく!』
『大丈夫だ、これくらい・・・』
おう・・血が出てた緑の・・
『ぺろ』
『あうぅ!』
『これで、大丈夫・・・?』
『あ、ありがとうな・・・』
『・・・ぎぃーー』
にっこり笑いやがって・・・、チビ、なかなかいいところあるじゃないか、こほん。
『・・・ガンバばろう?・・・ぎゃ!』
『抱きつくな・・・』
ビッチが抱きついてくるが・・・まぁいいか!
『いくぞ!』
『『『ギィーーー!』』』
同じ穴の狢・・・ってちがうけど、パーティとなった限りは死なせたくない。たぶん、失敗してもこれも試練の一つだろうし保護者的なゴブリンはついてこないところをみると、死んでもいいから行ってこいってことだろうからな・・・。
はぁ・・・世知辛い。が、しかし!―――サポートヘルパー様、MAP使える?加護とかにありそうよね?
【表示します】
おお・・・って。なぜに森だけ!!
【住処だけを表示しました。他も入れると広大になります】
いいから全部御願い・・・あ、この森の種族、お隣は絶対。
【最大限で広げます】
って縮小機能あるじゃない・・・。こういうのもイメージしないといけないのか。漠然と頼むと感覚的過ぎて使いづらい。
【通常MAPなど知りえないことです、また現状いけないほどの距離です】
そういうのはやっぱりちょいちょいくるのね・・・はぁ。距離表示あるのかってひろおおお!
笑えるほど広い。ゴブリンの縄張りだけで半径がざっと50kはある・・・。
確かに広いわぁ・・。ここってお隣さんとお隣さんの境付近だけど前線的な?
【推定】
あとですね、何か理由があると思うのですが、これ、東西南北全て途中で切れていまして・・他の種族の範囲がわからないのですが・・。
【地図表示は100Kmが限界です。縮小機能は半径100m・1キロ・5キロ・あとは10キロから最大の100キロまでです。ただし、既知の場所は自動で繋がり、村や町、国などは別途ワールドマップで確認できます】
じゃあ、人間の赤ちゃんで生まれたところと現在地の関係をワールドマップで確認したいな。
【表示します】
ふふ・・・分かっていたけど、めっちゃ遠いな・・・。距離がどれくらいか分からないけど、大陸が何個も入りそうな空白にただの点とこの森・・・。場所がランダムとはいえ、この遠さは頭に入れておこう・・。古代の森かが現在地、赤ちゃんで生まれたところは始まりの森かぁ・・・。極端すぎるランダムだな。はぁ。
赤ちゃんの時の場所のMAPは見れるの?
【MAPは使用していないので不可能です。ワールドマップは常に記録されます】
・・・・・・・・・
さて、ない物ねだりはもう卒業!
北隣はオーク・・。東隣はボアちゃんとこか・・・。その周りは・・・コルドンベアーに囲まれてる・・・。危険度をバリバリ感じる名前。オークは横長に北を縄張りにして、東隣のボアちゃんも横長だな。というか、恐らく川沿いだ。ゴブリンの小屋、崖上の奥から川のにおいがするから、恐らくそうなんだろう。それより、その2種の回りは危険ゾーンと把握、ベアーってくらいだからな。・・・いや、縄張りからはぐれて荒らすとかありえるかな?
【不明。ですが、常識的にありえることです、狩りはほぼ全ての生き物がします。またそれは縄張りではなく住処です。縄張り意識があるかないかの違いですがご注意を】
なるほど・・・。そういえばここの名前とかも、巣ってしかないね。必ずしも敵対はしないのかな?
【不明。ですが、完全に縄張りや国、村などの場合は点線で区切るのではなく、実線で区切って表示されます】
おお。いい勉強になったなぁ。
でもまぁ、北側のオークのエリアもボアちゃんとこも止めておこう。さしあたり接していない南西のゴブリンの縄張り、けふん、住処なら大丈夫だろう・・・。たぶん・・・。
ってやばいな。普通に北側につられていっている。
木の実がたくさん落ちていたし、いいにおいがするから、他のゴブリンたちと同様に流れ出来てしまった。
敵対してるかは不明だけど、狩る獲物によって違うなら、ゴブリンにとっては強敵となる場合なんて容易に想像できる。
巣の柵をでて崖上を回るように登っている自分たち。
特に北側は川が近いのも分かる。
『こっちにいこうっておい!こっちだって!』
『もどるのか??』
『食べ物・・・いいにおい、あっちのほうがたくさん、ここにも』
『なくなる!』
『こっちは危ない、強いやつの・・・においする』
って適当に言ったけど、くんくんしたら本とに匂うぞ。
【嗅わけを取得しました】
なんか違う匂いがする・・・強いというより肉食の獣?のような危険な感覚がある。
『・・・・分からない』
口の周りを落ちていた木の実で汚している三馬鹿。
『一個だけ・・・もうない』
『ふむ・・なかなかうまい』
グラニの実というらしい。グラニュー糖か?というくらい甘いがさっぱりしている。ポカリ食べてる感じがする。
『『『あっちいこう・・・』』』
って、ダメだってば・・・。確かにこれのにおいがする。だけど、あっちは確実に強い獣がいる。
『ダメだ・・・奥に行くと巣も見えなくなる。森が深くなって、逃げるにしても間に合わないかもしれないし』
『がんばる!はしる!』いやいや、無理だからチビ・・。君が一番危ないよね。
『たべたい!!』うん、涎ふきなさいビッチ。
『・・・なくなる、はやく!』アホは落ち着け、子供か!って子供だけど。地団駄やめろ。
確かにうまかったのは分かる。―だから
『いいか、落ちているのはないけど、高いところにはあるだろ?ある程度落としてやるから、拾ったらすぐ引き返して南にいくぞ』
ほとんどのゴブリンにつられた自分も悪いしうまいからな。
さくっと採って安全圏に移動すればいいだろう。
蔦がたくさんあるし、目利きでどの蔦がどの用途に向いているのかが分かる。
まず見た目から使えそうな、蔦を探し目利きをする。2種類の有用な蔦を発見。
シダ蔦
シダに巻きつき寄生している。
シダ植物近辺で網状に成長する。
枯らし蔦
成木の上部に寄生。
地面に伸びた棒状の蔦は水を蓄えている。
この二つは使えそうだ。シダ蔦は網に使えるし、草というより柔らかい枝くらいの強さがある。もうひとつは言うまでもなく水筒だな!かなり高いところから伸びているし、細い枝にぶら下がっているから弓矢で打ち落とせばなんとかなる。それにラッキーなことに、グラ実の木に寄生しているものがある。
シダ蔦で枝に引っ掛けておってしまえば、どっちも手に入りそうだ。
手ごろなシダ蔦を引っ張って、投げやすいように余計な葉や枝分かれを石ナイフで切落とす。石を巻いてっと・・・はい、できあがり!
【小道具作成を取得しました】
おお、いいですねぇ・・・っと三馬鹿はその作業を全く見ていない。
落ちているグラ実を草の根分けて探していた。
『おーい、やるぞぉ』
『ふたつ、でも食いかけ・・臭い』
『食うなよ・・それ。あきらかに腐ってる』
『まぁまぁ』
『食ったのかよ・・・』
『だいじょうぶ!』
『っておまえもか!』
『落ちてこない!!』
チビとビッチは落ちているものを食っていた。まぁ腐ってるだろうけど、ゴブリンだから大丈夫なような気がする・・・けど、俺は遠慮したい。
アホはグラ実の木へ登って蹴っているがびくともしない。
枝くらい揺れても良さそうだけど、あの体制じゃ無理だろうな。ちょっと笑える格好だ。
三馬鹿を集めて、作った仮名、枝折君をびゅんびゅん回す!
『あ、あぶない』チビがしゃがむ。
『それ・・・ほしい』アホが危ないのに近づいて観察している。
『石ぶつける? 食べれない!』ビッチは頭がいいのか悪いのか分からん子だな。
『そーれ!』
もちろん石をぶつけるのではない。細くて枯らし蔦がたれさがっているグラ実の枝に巻きつけているのだ。
ばきばきっに、どさどさ・・・余裕だ!
『よっしゃ!』
『ぎぃ!』
『すごい・・やつ』
『ぎーん!ひろう!』
『ぎぃぎゃぎゃ!』
『まぁな、うまくいくかちょっと不安だったけど、どうだ?かんた・・っておい!』
『『『うまい!もぎゃ?』』』
『待て待て!全部食うなって!拾ったそばから食いやがって!遠慮しろ!んでちぎるな!枝ごと持っていく予定だったのに!』
『なにする!』
『一人ダメ!』
『わ、わたし!さ、さわる?』
『・・・ちがう!こうするの!って聞け、うざいわ!ビッチが触ってんじゃねぇ!!ってあほ!喧嘩売ってるのか!』
俺が次ぎの枝を捜しつつ自慢してたのに、振り向いたらもう食い始めてた!
それに取り上げたのを奪い取ろうとしてくる。
『がぁ・・・お前・・強い・・・』
『・・・一個だけ、ちょうだい』
『・・・まったく・・・あとでやる。全部食べるわけないだろ。なにより!俺が取ったようなもんだろが・・』
『ボスの真似?』
『あっちもっとあるかも・・・おれ、てつだう、それやる』
『いこう・・・がんば、ろう?』
って俺が悪者じゃないか・・・それにあっちに行かないためにやってるのを忘れてないか?はぁ・・。
『あっちはだめだからこれなの。今ので折れたのを拾ってくれ、あと垂れてきたのはちぎれそうだろ?って、おい、何してるわけ?』
アホは蔦を奪ってぶんぶん回し始め、しかも奥へ進み始めた。
『おで、がんばる、たくさんとるぞぉ!』
『『いこう!』』
『ダメだってば!』
多数決なんてこの場合、死に直結しそうだ!
『ぎゃ!』『はなす!』『・・えさ取れない、だめなやつ』
ギャーぎゃーとアホは体をずんずん進めようとするし、メス二匹も両手で引っ張るが行く気まんまん。かといって振り払わないのは、少し遊んでいるようだが・・・。
アホの体格は馬鹿にならない。
アホをメスでサンドイッチにして正面から踏ん張って止めているが、ずりずりと進んでいく。
『飽きた! おで、いくぞ』
『『わたしも』』
って遊んでやがった・・・なら俺も・・・遊んでやるか? この力・・・なめんなよ。
『ぎぃいいいいいいいいいいあああ!』
『『『ぎ!』』』
見事に止まった三馬鹿。
なんていいタイミングだ。同期だろうか?行こうとしていた森の奥からゴブリンの叫び声が響き渡った。
『ほらな・・・死ぬぞ?拾っていく?OK?』
ぽさ・・・っと縄もどきの蔦を落とすアホゴブリン。
こくこく・・・と頷くメス二人。
急いでもてるだけのグラ実を抱える三馬鹿、ちゃんとわかっているのか、指差した方向に戻りつつ拾っている。環境適応、いや生存本能だな。
でもダメだ、抱えられて5個くらいだろう。拾っては落としつつ進んで・・・せっかく落としたんだから頭使って拾っていけよな。
先が思いやられる・・・わざと先頭まで何も持たずに走りぬき、見てろといって手ごろな葉っぱにくるくるとまいていく。これなら15個は片手でもてる。
『こうだぞ? ってあれ??』
見てないぞ!ってか走ってないか?!
振り返るけど別に何もいない・・・。
一人が走り出すとみんなが走り出すの心理か!
くそが!・・・・・『待て!』・・・一人じゃ心細いだろうが!てかまだ採れるのいっぱいあるのに!
『拾っていけよぉ!』
『ぎええええええ!』
『『『ぎぃーー!』』』
ぞくっ・・・またどこかで死んだか・・・。ってなんてタイミングの悪い!
とかいいつつ、ちょっと気になる後ろ。
一応振り返るけどなにもいない。あるのは落ちたグラ実と垂れ下がっている枝と実。
ごくり・・・。採りたいけども・・・。
どんどん離れていく三馬鹿。
シダ植物生い茂る、古大樹を思わせる大木、実をつける木々も背たかくおいしげ、蔦が巻き、植生もめちゃくちゃなこの感じ・・・。まさに異世界ですべてに何々の様なというが必要、ここは冷静に!
『ぎぃああああ!』
ひぃ! またかよ!
『『『ぎゃああ!逃げろ!』』』
『待てってば!御願い待って!』
冷静になっても怖いものは怖い!
くそぉ。俺も巻いた十数個一束と水筒がわりの枯らし蔦を引っつかんで走る!
途中で三馬鹿を抜いた我がチートは偉大なり!
【逃げ足を取得しました。逃走を取得し上位互換しました。フォレストウォークを取得、フォレストランへ上位互換しました】
ステータスが更新されていく!
『『『まってぇええ!』』』
『知るか!ばーか!裏切り者は許さーーん!』
『『『おゆるしをぎょぉおお!』』』
どこで覚えた!って叫んでるだけだな!たぶん!
とりあえず、巣が見開ける場所まで無視したる!
お読みいただきありがとうございます。
明日より投稿時間を変えてみます。
あんまり人気がないようですwまぁ書き手が楽しいだけかなっと思ってたので予想通りですがw