じめから数えて[次の日](ツギの日)
翌朝は酷くどん雲りだった
まるで私たちの人生のようだ
誰もが暗闇にしか目を向けず
そして誰もその暗闇を改善しようとはしない
私はそれがいやだ
嫌だ
いやだ・いやだ
そんなことを思いながらあさめが覚めた
最近夜が早い
というかよく眠れる
・・・・・・
昨日キーマカリーを食した後
あいつはなんとかきに当たったのだ
・・・馬鹿な奴だ
普通なら哀れみを思わせる様子を醸し出すのだろうが
島に一人だけ居た美熟女看護婦にデレデレなのである
しかしそれとは正反対にいなくなるとその苦しみようが
どうも私の笑いの壷を押さえることから
別段私は白くはないらしい
しかし白という世間一般の物差しは何もはからず
ただ悪を突き飛ばす悪に過ぎない平気だ
・・・・どっちにしろ私はその夜実に気持ちよく眠ることに成功した
もしこれでもし彼奴が少しでも幸福だったら笑えないだろう
なぜなら自分より苦しんでいる人間を見ることはこの世の極楽である
しかし極楽は楽しみや苦しみが無いというのだから極楽ではないのだろう
どちらにしても楽しいことは良いことだ
特に何とも間抜けなのがいい
世の中シビヤ過ぎて嫌だ
何でもかんでもがんばれば
がんばって失敗してつらくても
がんばれば
がんばれがんばれがんばれ
全く持って
人生は人それぞれ
そして人は恐ろしく物が違う
外見はもちろん心まで
全く持って別の生き物が何十億と居ると考えた方が良い
それも己の物差しで見るなと誰かにいたい
本当は一人でいたい
これ至極極上
私は意気込みながら一人山道を歩いていた
この山には毒蛇もそれに類する物がいないという
何でも三十年前に放たれた犬猫という種類の蛇がそれらをすべて絶滅まで追い込んだという
「・・・いぬねこ・・・」
あいにくパソコンは通じない電話はどこが軒が倒れたとかで繋がらない
なんにも繋がらないのにここのネットワークはすさまじいと思う
・・・・・・なぜ私が引きこもりだと分かったのだろう
とにかくなぜかしまの人間が私のことを妙に心配する
どこから仕入れてきたのかネットが繋がらないと発狂すると思っているらしい
・・・・しかし犬猫って何だよ
私は一人思い思いに思いながら
一人重装備で小さな山を登っている
標高千メートル以下
直径五キロ以内
その小さすぎる地上のでっぱりに私はヘトヘトになりながら登っていた
「おいきみ1人かい」
それはいきなりのことで私は危うく泣きそうになった
・・・・まさか・・レ
「ここらへんは熊猫がいるから気をつけた方が良い」
「・・・・パンダじゃないよね」
「・・・・なんだそれ、熊猫は熊猫だ」
「それはどんな形なんですか」
「ミニャーと鳴く」
「いや鳴き声ではなくて・・・・」
「いやみνという感じの・・やつだ」
「・・・・・なにしているのですか」
「君こそこんな暗闇でまさか」
「なんですか」
「レ・・・」
「しませんよレイプなんて」
「死体を隠そうとレンコン畑に」
「レ関係ないじゃないですか・・まさかレンコンの」
「冗談はないがしかし、もしかして君かい東京から来る海洋学者っていうのは」
実際私の実家は東京ではなく埼玉だ
そして私は少なくともあんな変人ではない
なにが変人かはいわない
それほどなのかいうに及ばないか無いのか
どっちにしろ言わない
・・・知らない
「いえ違いますがしかしその代理です」
「代理ですか・・」
「何か」
「いえ、なんと言いますか背が小さかったもので」
「ホットケーーキ」
「ぐほ」
「いやー何ともお力が強いですな」
「・・・・」
「まさかあんな食べ物の名前とそしてダジャレさらにはその奥からキックを・・・いやなかなか東京の恐ろしさを」
「やめて下さい・・恥ずかしいです」
「・・・・・・・・」
「どうしたんですか」
「いや今、林の中に何かいたような気がしまして」
「本当ですか」
「いやこれが田舎のジョー」
「ホットケーキミックスキー」
「それにしてものどかすぎて耳鳴りがしますね」
「・・・・・・・・」
「どうしたんですか」
「トウキョウノヒトコワイ」
「・・・・・冗談ですよ」
「・・・・・・・そうですか」
あいつが人と喋らなくなったのは何時頃からだろう
奴は昔から活発だった
どっちかと言えば四六時中動き回っていた
四六時中なんかを作っていた
そして奴はどこまでも夢のない現実主義者だった
ある時から人間をおそれだした
それは坂を転げるように
それは歯止めを利かず元の道を失う
しかし本来人間なんて物は本心に忠実に生きている
逆に言えばあいつはそれを割り切って生きてきた
それの付けが中学三年の終わり頃に爆発したのだろう
奴はすべてが嫌いだった
それはすべてが好きだともいえた
しかし本来奴には善悪はなかった
それこそ殺人は悪いことだとも思うし絶対やら無いのは
社会がだめだから
もしも良いのであれば奴はどうしていただろうか
「最初からならそうなるかも知れないけど今なら無理だ」
みたいなことを言うかも知れない
奴は無理して何かのまねをしてきた
必死に仮面をそれもボロボロの仮面をかぶり続けていた
がんばることが報われる
報われなくても結果的に報われる
それはどこまでも報われることのない物に思われた
それはどこまでも人格の否定だった
彼女に楽しい時間はない
いやあるだろう
しかし休憩は彼女にはないのだ
奴に休日はない
彼女は悩む
楽しいことが嫌い
いやそれは楽しい環境じゃないからだ
しかし楽しい環境とは
彼女は障害者が良い
彼女は子供の頃からそういう会に参加していた
そして始めは自分がここになぜいるのか分からず
それでもだからどうしたと思っていた
しかし今彼女はその現実的な考えから幾度もその問題に考えを寄せた
私は実は奴らより優位に立っていることに優越感を持っているのではないか
しかし彼らといると楽しいし落ち着く
それは苦しみ抜いている人間は
または何か自分が劣っている人間は相手を気遣う
または物にはを着せぬ本心を言え
それを受け入れる体制が出来ていると思っていた
しかし実際私は彼らと同等またはそれ以下に
私はその人間以外とはしゃべれなかった
本当にストレスしかない
上がる
数年後彼女はある言葉を聞く
「物事は全て人それそれ
それが悪いんじゃなくて
それは悪ではなく
それはその人」
それは何かに張り合うことで自分を支えていた彼女にとって
始めは良い感じなことを
とか思ってはいたが
しかし考えれば考えるほど
それが本心を見つけられる鍵なのではと思う
物事も決めることは出来ない
人の心はその人で良い
言葉を集めてもそれは伝わらない
しかし伝わらない上でそのにごった会話を人は楽しむ
と、彼女のポエムをこっそり見てしまった僕はそんな彼女の心境を今も良くは分からない
「ところであなたは誰なんですか」
「僕ですか・・・怒りません」
「・・私をなんだと」
「トウキョウノコワイ」
「もういいです、それでお名前は・・」
「浦賀島です」
「・・・・・その下」
「・・下と言いますと」
「・・・・ほらあるでしょ、私は穴夜 凛と言いますが・・」
「それはどうも」
「・・・その穴夜がみおじで凛が名前です」
「ああ、そういうことですか、わたし亀裂と申します」
「あなたが亀裂ですか」
「ええ、ただおやじと同じ名前なので」
「・・・・うそでしょ」
「うそですが」
「・・・ジョークって奴ですか」
「はあはあああ・・そうで・・」
「ホットキーック」
「・・・うぎゃ」
山道をどこかの探検隊のような重装備に身をくるんだ
穴夜 凛
そしてどこにでも居るおじさん風の男
・・・
「そういえばお名前は」
「・・・・私ですか」
「・・ええ」
「言わなければなりませんか」
「いえ結構です」
「・・あっさりとしていますね」
「・・いえ、興味がないので」
「・・・聞いておいて酷いです」
「聞くのに仰らない方が」
「後三十分ほどです」
「逸らしましたか今話し」
「・・・私の名前は」
「・・・・」
「私の名前は」
「・・・・」
「わ」
「HYDE路キヤノン」
「わあーーーうぎゃ」
「・・・お名前は」
「人魚です」
「嘘でしょ」
僕はうなされていた
夜中冷蔵庫から麦茶を出そうとしたに向かうと
わずかな明かりが見えていた
何かと見ると
なぜか僕の家にあいつが居た
あのぼさっとしたおかっぱ頭
そしてだらしない服装に
小柄なネズミのような身長
しかしそれはわずかな明かり
そう冷蔵庫の中から何かをとりだして食していた
(・・・・・なに喰っているんだ)
僕は冷蔵庫のわずかな明かりに照らされる彼女を
眼鏡を直して良く見ることに専念した
「・・・それも冗談ですか」
「なら死んでみますか」
「・・・・人魚自体は不老不死なんですか」
「それは一体どういう」
「いや、人魚の肉を食した物は不老になると聞きます
しかし人魚自体は食べられたとき生きている物なのでしょうか」
「・・・・・・生きているでしょう」
「・・・なぜ」
「私がそう言っているのだから」
「・・あなたにお兄いさんは居ますか」
「居ませんが」
「そうですか」
「何でそんなことを聞いたんですか」
「いや、もし双子のような存在なら入れ替われると」
「・・・ギク」
「・・・・・・マジ」
「何のことでしょう」
「あんた双子」
「・・げほ」
僕はその明かりに目を凝らすとその女の口が赤く濡れている
チョコレートでも喰・・
そこで僕は目を疑う
奴の手に持っている物はどう考えても手であり
男の手である
しかしさらなる問題は
その手に着けているミサンガが僕の持っている物にうり二つなのだ
・・・・・
改めて僕は手を見るとミサンガはしっかりついて・・・・
手が透けている
どういうことだ
「あなたはなにを考えているんです」
「きみはここで死んで貰う」
「良いですよ」
「・・・・」
「・・・・どうしたんです」
「なぜしにたがる」
「私は誰も必要としないしだれも私を必要としない」
「・・・・」
「私はもう生きられない」
「・・・・そんなことは」
「・・・・・・・・」
「見るな」
「・・・・・・・・・」
「付いてくるな」
「・・・・・うげ・・・キックするな」
「あなたは美味しいわ」
カンバニズムは消え行くからだにかそれともその冷蔵庫の下に横たわる俺に言っているのか
どちらにしても俺という存在があったかどうか分からないほどに俺の意識は消えた
「大丈夫ですか」
「・・・・・凛」
私は目を覚ますと起きあがった
さすがにあれが夢だと夢の中では気が付いてはいたが
しかしうなされていたようで目のまで看護婦がしきりに心配していた
「大丈夫です」
「・・・本当に」
「・・ええ」
「そうですか、ではもう入院は終了です」
「どうしてですか」
「まだいたいですか」
「痛くありませんが」
「なら退院でしょう」
「・・・・」
「ではでは、ニャンチュープレス」
そう言って彼女はテントを壊すと僕を残してどこかにいってしまった
この島には病院がないため移動式らしい
さて行くか
驚くほどからだが元通りだ
・・・・・どのみちだったか
僕はものすごいスピードで道を見つけると走り出した
もしかすると世界新記録の早さそしてスピードだったのかも知れない
・・・もう一度言おう
俺は早い
「それで人魚はどこなんです」
「俺が人魚です」
「・・・・食べちゃいますよ」
「不味いですから止めて下さい」
「嘘じゃん」
「・・・・・・」
僕が北風小僧よりも早く駆け回っていると
前方に気弱な男を襲おうとしている妖怪小豆女が姿を表した
「おいやめろ」
「ハイドロホットキーーック」
「うげ」
世の中には理不尽な物がある
「それであなたが人魚と」
「ええ」
「何か証拠は」
「今から私は死にますが生き返ります」
「変な薬でも使うんじゃないですか・・たとえば喜六とか」
「っう」
「本当なんですか」
「何ですその喜六って」
横からうるさい雀がわめきだしたので餌を渡す
「江戸時代には死人屋という職業があった」
「・・面白そう」
「それがまあ面白い
死んだフリをするのではなくて実際に心臓を止めて死ぬんだ」
「出来るんですか」
「ああ、一部の薬草の調合した歳にたまたまで来た物を
悪用した職業でな、主に借金から逃げるために使われた」
「出来るんですか」
「まあ物は使いようだ、死人から金は受け取れないから
借りるだけ借りてそのまま半ばドロンという寸法だ」
「・・・すごいですね」
「まあいまになっては創作だと言われているがしかしあれだけ伝承に残っている物が嘘だとは思えない」
「そうなんですか」
「さてなんのことやら」
「ところで人魚というのは浜に打ち上がったのではなく
あなたなんですね」
「まあフロウフシデスシ」
「・・・・では少し血をとらさしていただいても」
「無理です」
「何でですか」
「嘘なんだろ」
「隣でヤジを飛ばすなアノリン」
「・・・・・・・」
「どうしてなんですか」
「・・痛いのはちょっと」
「・・・・不死ですよね」
「不死です」
「一回死んだんですよね」
「・・・いやまだ」
「まだなんですか」
「まあ」
「・・・・・・なぜ不死と」
「いや最近ハワイに行きまして・・そこでジュゴンの肉なる物を大金だして食べたので」
「・・・・・あなたの目的は」
「この島の活性化です」
「なら別の物をした方が」
「・・・・・・」
「・・・どうでしょう、私がプロデュースして差し上げますが」
「いえ結構です」
「HYDE路・・」
「ところであなたは本当に死ぬ気だったんですか」
「当たり前の助です」
「ふざけてますよこの人」
「・・・・・・・いやめがほんとうだと言っている」
「本当ですか」
「・・・・・・・どうです」
「・・本当だ・・HYDE路・・」
「ところで嘘だということで良いのですか」
「ええ」
「こんな話を知っていますか」
「何です」
「いえやっぱり良いです」
「そう仰らずに」
「気を隠すために木を植える」
「森を隠すために葉っぱを作るでは」
「お二人とも・・それをいうなら葉っぱを隠すには森では」
「いえ私の考えで良いのです
あなたの島には本当にそれに類する何かがあり
それを隠すために怪しいそれを用意する」
「・・・・」
「本当はこの島になにかいるんでしょ」
「どうします今てんきは晴れです」
「・・・・」
「今なら船を出発できますがこれを逃すと一ヶ月ほど海荒れますよ」
「どうする」
「私はどちらでも」
「俺はそんな休養はない・・帰るぞ」
「逃げるんですか」
「逃げるのではない俺は仕事を首になるわけには行かない
そして俺の本領は深海魚だ、人魚なんかいう良く分からんほ乳類」
「あれほ乳類なんですか」
「・・っえ」
「いやだってウロコありますよね」
「・・・っえ」
「ですよね、亀裂さん」
「っえ・・おれ」
「あなた人魚なんですよね」
「俺は偽物ではない」
「いやだからそう言って」
「早く帰るぞ」
「逃げるな」
「みろくもが不味い」
「・・・・・」
遙か彼方の沖にしろいくもがぽっかりと群を無し始めていた
「帰るぞ」
「お気をつけて」
「HYDE路・・」