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六話   拵え

居候生活が始まって二日目。

俺は武器選びのために倉庫にきていた。


「私が昔やんちゃしてた頃の盗品、もとい戦利品しかないけど、この中にお好みの武器はあるかしら」


盗品って、どんなやんちゃっぷりだったんだこのお方は。


「色々あるんだな、これなんか実用性あるのか?」


棒に棘のついた鉄球が鎖で繋がれているいかにもな武器や、剣なども刀身がうねっていたりひん曲がったりしているものまであって、どう使うのか皆目見当がつかない。


「そのどれも、目的があってつくられてるはずよ。 例えばこんな武器も」


そういってスティアが持ったのは大きな剣。

人の身長程あろうかというその大剣を持ち上げこちらにみせてくれる。

とりあえず片手で持ち上げているのは見てない事にしよう。


「これとかわかりやすいんじゃないかしら。 剣の切れ味もあるけれど、なによりその重量で相手の鎧の上から打撃を与える事が出来るわ」


いやそれだけ分厚くてでかかったら鎧が砕けそうなんだが。


「俺にはそんなにでかい武器は扱えないなあ」


「そう? 他にはどんなのがあったかしら」


スティアの選ぶ武器はどれも俺には扱えないと思うのでこちらも真面目に探してみる。


「お、なんだこれ」


シンプルでカッコいい。

ほとんど曲がりがなく直線的なTHE・剣がそこにはあった。

それにさっきのより小さい。


「なあ、これとかいいんじゃないか」


振り向くとそこにはまたもや超弩級の大きさのハンマーを携えた怪力お化けがいた。


「……だから、そんな大きいのは使えないんだってば」


「そう……」


かなり落ち込んでしまったようだ。

俺は何も悪くないと思うが、気をとりなおしてこちらの気になった武器をみせてみる。


「あら、結局そういうタイプの武器を選ぶのね」


「そういう武器?」


「この剣は、ファルシオンっていって、さっきの剣と同じように打撃を与える事を考慮して作られた剣ね」


そこまで大きくは見えないのにこれでも打撃系なのか。


「といっても、ここにある武器はほとんどそういうものばかりなのだけれど」


よくよく見回してみると、確かにほとんどはそこそこ重量のありそうな武器ばかりだった。


「ここまで用途がかぶるのはなんでなんだ?」


「うーん、やっぱり武器っていうと防具が出てくるでしょ? そして防具があるということはそれを斬るというのはなかなか難しいのよ」


「ああ、なるほど」


鉄製の鎧か何かを装備したりしていたら、日本刀のような装備では歯が立たないとかありえそうだ。


「でもそれでいいの? その剣、ファルシオンにしては小さめよ?」


「いいんだ。 この見た目が気に入ったんだ。 それにすこし小柄な方が扱いやすいだろうし」


これでも重いと感じるくらいだから他のものはもっと扱いづらいだろうしな。


「そ、わかったわ。 うん、これでひとまず休めるわね」


「すまないな、こんな事に付き合わせてしまって」


スティアは昨日から何もわからない俺のために動いてくれていた。


「いいのよ、その分後で頑張ってくれればいいんだから」


「それはそうだが」


「別に今すぐ働いてくれてもいいんだけれど?」


「狩りはまだ無理だぞ」


――――――


そんなこんなで、この世界に来てから不自由は何一つ無く過ごせていた。


三日目、四日目も過ぎ、五日目ともなると、住めば都というもので、この世界での暮らしに慣れ始めていた。


「スティアさん、獲物をとってきましたよ」


「お疲れ様、剣の扱いにはもう慣れたようね?」


「ええ、おかげさまで」


俺は昔から何事もすこしやれば中級者程度にはなれるような奴だったので、もとよりこの世界に来てから暇だった俺は剣の練習を常にやっていたおかげですぐに剣の扱いには慣れることができた。

その一方、


「でも魔法の方はからっきしダメなんだ」


あれから固有魔法の発現に向け、努力はしているものの、使いたい魔法がハッキリしないせいでイメージができずにいた。


「まあそんなにポンポン出来るものじゃ無いから、焦らずにやればいいんじゃないかしら」


「やっぱりそうなのか?」


「ええ、ましてや魔法にあまり詳しくなさそうな貴方なら尚更よ」


気休めくらいにしかならないかもしれないが、それでも励ましてくれたのだと思う。

俺は心の何処かで焦りを感じずにはいられない。

この世界には、俺はまだ完全には馴染めていないと思うから。


だけどそれすらも表面上の悩みであることにも薄々気づいている自分もいた。


果たして俺は、元の世界に戻れるのだろうか、と。

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