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ある男の話

作者: 無垢
掲載日:2013/07/15

 自分が誰なのかわからなくなったのはいつごろからだろうか。もう随分、昔のことのように思えてくる。人の顔色を伺ってその場の体裁を取り繕う生き方がごく自然のようになってしまった。

 気にしているうちはまだよかったと思う。それが徐々に自分自身を失っていき、今ではどれが本当の自分かわからなくなってしまった。

 世間体を気にすることによって、友達も多いし頼られる機会も多い。俗に言う世渡り上手というやつだ。いつも本心を隠して生活するのは思った以上にストレスがたまるものだ。いつものように1日の愚痴をSNSに書き込んで眠りに就く。SNSだけは本当の自分でいられる気がした。自然とSNSへの依存度が高まるのは当然のことだった。

 いつも1人だけ話を聞いてくれる人がいた。僕がどんな書き込みをしても彼女は親身に相談に乗ってくれた。実際に女性なのかどうかもわからない、どこに住んでるのかや年齢もわからない。しかしそんな彼女とのやりとりが僕が唯一本当の自分でいられる場所だった。この関係が僕にとって非常に心地よかった。こんな感覚になったのは久しぶりかもしれない。まだ会ったこともないどんな人かもわからない人に抱く感情ではないかもしれない。だけど今の僕には彼女の存在が非常に大きなものだった。

 今まで彼女は人並みにはいた。その中に何人本気で好きになった人がいただろうか。結局は寂しさを紛らわすためとか、ステータスとしてのものでしかなかったと思う。本当の自分でいられる相手なんて誰一人としていなかった。そんな中で彼女に惹かれるのは当然のように思えた。

 僕はだんだん彼女のことをもっと知りたいと思った。思い切って連絡してみようと思った。今のSNSは非常に便利だと思う。相手のIDさえ知っていれば個別にメールを送ることだって可能なわけだから。しかし不安はあった、はたして彼女は返信をしてくれるのだろうか。素性がわからないネットだからこそ親身に話を聞いてくれたのではないか。それを踏み越える僕に彼女は少なからず嫌悪感を抱くだろう。それでも僕は彼女のことを考えると余計にその思いは募った。

 ある日の夜、いつものようにSNSに書きこむと彼女がまた相談に乗ってくれた。僕は今だと思って彼女にメールを送ってみた。驚くことに彼女からはすんなりと返信が返ってきた。しかも、彼女も前々から僕と個人的に連絡を取ってみたかったがその勇気がでなかったと、だから僕からメールが来たときはとても嬉しかったと返事のメールには綴られていた。その返事をみて僕はもう何年も感じたことないような喜びを感じた。

 









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