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根源の魔術師  作者: 蓮華
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泣いている心

 心の底から誉めている。


「そう言うお前だって、ブランクを感じさせないぞ」


 火の玉、火の蛇、火の囲い。彼は火魔術を操る術を心得る。


「誉めてくれるのか。嬉しいな」


 小さな黄色の玉を十つくり出した。


「これは痺れ玉。当たると二四時間、体が痺れ続けます」


「ふざけんな。火魔術以外に使えるのか」


 すぐ対応できるように身構えた。もし当たれば二四時間も、苦しい思いを強いられる。


「うん、そうだよ。俺は至って真剣だ。陣が痺れてくれさえすれば、平和的に事が解決する」


「お断りだ」


「強情だな」


 黄色い玉が四方に散った。どこかの隙間に隠れてしまい見失う。


(ジェーン、気をつけろ)


(分かってる)


 相棒の声が脳裏で響き、心中で伝え返す。


 唐突に仕掛けるか、嫌な間を持たせるか。どちらにせよ気を抜いたら、キウラスに機会を与え利用される。


「ねえ、陣。前後左右、どれを選ぶ?」


 黙ったままでいる。


「乗りが悪いな」


 不服げにぼやいた。


 空気が張りつめ、そして仕掛けてくる。


「最初は優しく前から」


 二つ痺れ玉が読みにくい軌道で迫る。対象を難なく切った。


「次はどこからでしょう」


 彼の目線は此方に固定され、場所を探る事は難しい。


「左かな、右かな。それとも」


 三つ目、四つ目、五つ目が足元を狙う。均衡を崩させる作戦だ。


 位置が低い。空を裂くだけで痺れ玉を壊せない。


(肩と手に力が入りすぎている)


 フィネメズの指摘に力を抜き、避けつつ真っ二つにした。首を巡らし、どの方向から来てもいいように備える。


 昨日までは何も知らない法魔陣で嫌々、琴爽夜と遊んでいた。


 呼び名を変えずに呼び合っているが、今対面する二人はジェーン・ルウファスとキウラス・リンクだ。


「魔術界で生まれた事を隠していたのはお互い様だな。お前は俺の正体を知っていたけど」


 咎めた視線を送り物柔らかに笑う。


「どうして…そんな顔ができる。俺はお前に笑いかけて貰える資格を失った。いや、元々なかった」


 キウラスの胸の痛みが流れ込んでくる。心を閉ざしたにも拘わらず、揺らぐ思いは罪悪感と苦しみを伴う。


(後ろだ)


 人には死角がある。精霊は鋭敏な感覚で未然に知り、危険を防ぐ。


 ジェーンの死角をフィネメズが補ってくれる。身を捻って六つ目を振り向き様に切った。


 あと五つ。


 右から来たかと思えば今度は左から来る。擦れ擦れで躱して危うく当たる所だった。


 七つ目、八つ目、九つ目、最後を壊す。ちょこまかした動きに呼吸が乱れた。


「オウズ・ヨホノ・メラノメラト・エモア・ガレ」


 魔術が発動する。六芒星から炎の渦が生まれた。赤渦あかうずだ。


 属性魔術には火や水、風などがあり、五芒星を用いた魔術は初級、六芒星の場合は中級。八芒星の場合は上級、複雑紋様の場合は最上級だ。


 難易度が次第に上がっていく。


 全ての魔術発動時に形成される訳ではない。様々な魔術が存在しているからだ。


 レベルが初級でも使う魔術師の才能と腕前によっては、最上級に匹敵する力を出せる。


 狙いはジェーンではなく建物だ。炎の渦が燃え移り煙が上がる。当然騒ぎになった。


「爽夜、自分が何をしているか、分かってるのか」


「陣がいけないんだ。でも、これで気兼ねなく戦えるだろ。怒りがお前を突き動かすから」


 何故、あんな悲しげで押し潰されそうな顔なのだろう。表情を上手に消せていない。


(彼奴の心が泣いてるぞ)


 相棒の声が響き、はっとなる。


「もうやめよう」


「大人しく捕まってくれるならやめる」

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