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根源の魔術師  作者: 蓮華
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冷たく凍った空気

 本当の事なので否定せず、「そうだな」と適当な応答をする。


 木の台に野菜や果物が山のようにある。どれも新鮮で熟し色鮮やかだ。


「ちょっとそこのお嬢さん達、真っ赤な林檎は欲しくないかい。安くしておくよ」


 行き成り青物屋の店主が話しかけてきた。精霊の人形は魔術師でなければ見破れない。


 それ程、精霊が変じる人形が人間と同じだからである。


 見分ける方法は気配か魔力の色。純粋な金色、乃至は純粋な銀色で稀に精霊と同様な色を生まれ持つ者がいる。


『欲しいぞ』


「ただなら貰ってあげる」


「黒髪のお嬢さんは?」


「いらない」


 眉がぴくっと動き、頬はひきつり、押し殺した声で答えた。


「何故、女顔というだけで性別を間違える」


 全く以て腹立たしい。


「間違えられて当然だろ。女顔でしかも華奢、背が低いなら尚更だ」


 余計な現実を突きつけてくる。


「むかつく」


 レンテを睨むと笑われた。馬鹿にしているがどこか楽しげで、不思議と親しみを覚える。


 彼に対してこんな感情を抱くとは、心底からの驚きだ。


「今日はお嬢さん達の為に特別サービス。ただであげよう」


 フィネメズとリノは林檎を貰い、ジェーンが断ってもくれた。


「お兄さんは幸せだな。こんな綺麗で、可愛くて、美しいお嬢さん達に囲まれて」


 にこやかな店主がレンテにも渡した。


「あの店主、私を可愛いだなんて中々見る目があるわ」


 一人悦に浸る。少女は階段へ腰を下ろして林檎にかじりつく。いい音が鳴った。


「結構美味しい。早くあんた達も食べなさいよ」


『確かに美味しいぞ』


 フィネメズは嫌いな物なく全部食べられる。


「本当だ」


 爽やかな味で甘みと程良い酸っぱさ。瑞々しい。


 皆、林檎を食べて、精霊はあれだけあったドーナツを胃に収めてしまった。


「現世界はどんな所なの」


 突然、少女が質問を投げかける。違う世界に興味があるらしい。


「科学が進歩した世界だ」


「か、がく?何それ」


 初めて聞く単語の説明を求める。


「科学、その語には多様な意味がある。広義だと体系された知識や経験の総称。自然科学、人文科学、社会科学の総称。狭義だと科学的方法に基づく学術的な知識や学問。とある対象や理論や実証により研究し、普遍的な真理を明白にする事が目的なんだ」


 難しい言葉の数々に顔が歪み、額を押さえるリノ。


「もっと簡単に説明して!」


 これでも分かりやすく説明したつもりなのだが。


「現世界では科学というものが進歩し、逆に魔術界では魔道が進歩した。科学は魔道よりまだ劣るけど、ずっと先の未来、科学が魔道を打ち負かす日が来るかもしれない」


「要は科学というものが進歩した世界なのね」


「要はな」


 彼女の頭はパンクしている。


「今の科学が魔道に劣るなら、魔術界が現世界へ戦いを挑めば楽々と勝利できるな」


「お前の思考が恐ろしい」


 魔道は使い方を誤れば文明をも滅ぼす。同様に科学が作る兵器も。だが、魔力の片鱗さえ持たぬ人間は魔術師には敵わない。


『現世界にはおいしい食べ物がたくさんあるのか』


「お前は食べ物の事ばかりだな」


『あるのか、ないのか。どっちだ』


「世界が異なっても食べ物は似たり寄ったりだ。美味しい物ならたくさんあるぞ」


 ジェーンは自然な笑みを作った。


 灰花と爽夜に接点がない話でも、思い出してしまう。


「楽しそうだな」


 後方からの声に空気が冷たく凍った気がする。確かめる為に顧みた。

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